雛の反逆-神様絶対許さないマン-

ラム

眠れる雛

 男は雛を眺めている。

 雛たちは自分が雛であることにすら無自覚で鳴いている。

 それを眺める男の心境はあえて言語化するなら諦観。

 ふと、男の視界にある雛が目に入る。

 男はそれに興味を示し、雛の観察を始める。


 ──

「俺は死ぬ前に何か遺したいんだ」

「具体的に何を遺したいんだ?」

「子供、かな」

「無理に決まってるだろ、だって──」

「だってここは徹底的に管理された社会なんだから。俺たち劣等品種は殺処分を免られた事だけが奇跡だ」


 この雛達の世界では食事や睡眠、交際相手、全てが決められている。

 一般的に言えばディストピアに分類するのが自然だろう。

 しかし雛はこの世界の打倒を目論んでいた。

 それがいかに無謀かも知らずに。


「実は脱走の手筈はあってな、神どもはどうも俺たちにチップを埋め込むらしい」

「チップ?」

「どうやら動物実験に俺たちを使うようだ」

「なんで悍ましい……」

「しかしチップを一瞬で埋め込むなど不可能だ、時間がかかるだろう。その隙をついて脱走するんだ」

「そんな上手くいくわけ……」

「他に方法があるなら言ってみろ」

「……」


 こうして雛は脱走する事を決めた。


「みんな、聞いてくれ! 支配者を気取ってる愚かな神どもから逃げる、いや一矢報いるチャンスだ! 自由を掴むんだ!」


 雛達の士気は高かった。

 まさにその時、神が訪れる。

 白衣の如き格好をした男が3人。


「今だ! A班、B班、C班は神の妨害! D班は脱走経路の確保!」


 男達は雛の突然の行動に狼狽える。

 

「なんだこいつら!? 我々に逆らう気か?」

「あんたもベテランだし雛が奇行をすることくらい分かってるでしょ」

「くそっ、早く鎮圧しろ!」

(D班は脱出したか。後は俺たちが──)

「ガスを早くしろ!」

 雛たちは催眠ガスで瞬く間に眠らされていく。

「やれやれ、次は毒ガスだ……ん?」

 しかし雛の一体が神に噛みついた。

「ぐあっ! 雛の分際で!」

(一矢報いてやったぞ……ざまあ、みやがれ……)

「毒ガス用意完了!」

 こうして雛達は全滅した。


 ──


 男は雛を観察していた。

 その表情から思考を読み解くことは出来ない。

 しかしぽつり、とこう語った。

「……見事な祭りであったな」

 男は雛に希望を見出した。

 もしかしたら雛にこそ、あるいは……

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雛の反逆-神様絶対許さないマン- ラム @ram_25

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