好きな人の好きな人を好きな人と好きな人から好きな人にされそうです
Terran.31
三人目の恋
ぼくには好きな人がいる。
でも、どうしても気持ちを伝えられない理由がある。
――――――――――
高校一年の修了式が終わって、さあ遊ぶぞといつもの四人を誘ったけれど、少し用事があるからと言われたので一度下校してから後で落ち合うことになった。
筈だった。
(あれは、
修了式の日は食堂が閉まっていることを知らなかったぼくは、閉ざされた食堂から校舎裏の近道をして校門へ向かおうとした所で二人を見つけた。
ぼくと違って大柄で肩幅が広くて運動神経の良い
せっかくだから一緒に帰ろうと声をかけるために息を吸って。
「伏せろ」
植え込みから伸ばされた長い手に捕まって簡単に引きずり込まれてしまった。
「
「しーっ」
そこには170超えの長身と長い手足を折りたたみ、片目を閉じて口元に指を当てているスタイル抜群の美女、いや美少女が居た。
短く切り揃えられた艷やかな黒髪とキリリと整った顔が今日もイケメンオーラを漂わせている。
「僕としても
彼女、いや彼は植え込みの中から二人の様子を窺いながら小声で注意をうながし、見つからないようにとぼくの肩に手を回して引き寄せる。
ふわりとした香りがぼくの鼻腔から本能を刺激して動悸が跳ねた。見た目は美少女だけど中身は男子。頭では分かっていても不意を突かれるとどうしても意識してしまう。
「えっ。あれって
「そんな馬鹿な話があるか。お父さんは認めないからな」
「そうですよ。それはいけません」
「うわ、
振り返ると長い黒髪のいかにもお嬢様といった雰囲気の大和撫子が居た。
ぼくと
「理由は、お二人と同じですよ」
「え、え?」
「静かに、気づかれたらまずい」
奇しくも五人が揃っているのだけど、用事ってまさかこれのこと?
「おのれ
もし告白だとして、それを
「
知ってる。けれど、ぼくだって
「そして
うん?
ぼくと
「あの二人、ホッとした顔をして楽しそうにっ」
「駄目よ。
いや待って、
取られるのは
「そうだ
「いやいやいや」
ちょっと何言ってるのかよく分からない。
「
「そんな事は無いよ」
「
「うん」
「でも今の
「う、うん」
「ほらね」
告白の場面なんて見たらドキドキするよ。
「て、手を繋いでるぞ
そう言って
「そんな……」「あらまあ」「何ということだ!」
ぼくでも分かる。告白は成功したんだ。
本来なら友達として祝福しなきゃいけないんだろうけど、今はショックの方が大きかった。
「緊急会議をするから
「ええ、こんな結末は誰も望んでいないわ」
「今から来るの?」
「どうした。エロ本でも出しっぱなしなのか?」
「そんなの無いから!」
「駄目よ不健全だわ。私が何冊か貸してあげる」
「
――――――――――
ぼくには好きな人がいる。
でも、どうしても気持ちを伝えられない理由がある。
一人目は幼馴染の美少女。でも心は男の子だから恋仲にはなれない。
二人目は幼馴染のお嬢様。でも男性同士の恋愛にしか興味が無い。
もし告白しても断られるだろう。それで今までの関係性が壊れてしまうのはとても怖い。
だから三人目を好きになるしか無かった。
でも彼女は親友の恋人になった。
五人の中でぼくだけが中途半端だ。カミングアウトしている
だから、ぼくはこれから四人目を好きになる努力をしないといけないんだ。
ぼくにはもう、好きな人がいるのに……。
好きな人の好きな人を好きな人と好きな人から好きな人にされそうです Terran.31 @Terran
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