第20話 エルフ奪還、決着
明くる朝、宿屋にヴァイガルの宰相がやって来た
「主人よ、ここにドヴェ、、いや、異国の格好をした青年は泊まっておるかな? 」
「へ? 泊まってますよ たしか部屋に居ると思いますけど」
宰相は、ホッと胸を撫で下ろした
「良かったここだったか では呼んで来て頂けるかな? 丁重にだぞ?」
「へ、へい」
「ふぅ、、(よし! 落ち着け、絶対にしくじっていけない 気持ち良く帰って頂くのだ! 待ってて下さい陛下!)」
宿屋の主人が大きな声で怒鳴る
「おいっ!! お前さんに客が来てるぞっ!! 降りて来なっ!!」
ヴァイガルの宰相が顔色を変え、慌てている
「ななな! なぜ怒鳴るのだ! 丁重にと申したはずだぞ! (ななな何をやっておるのだこの男は! しくじったではないか!)」
「へ? いやこれは、、」
「おやおや これはこれは 宰相の ここではなんです、外へ参りましょう」
私は、慌てる宰相を連れ、外へ出た
「いやいや この国は荒っぽいですなぁ 酷い目に会いました、、 これも我らが王に報告しときましょう」
「ひぇっ ああの、どどどうか穏便に (まずい、挽回せねば!)」
「それで、、何をしに来たのです? 宰相殿」
「いえ、その、、王が会いたがっておいでですので もし宜しければ、、その」
「なんと 王が私に? はて なんの用でしょうな」
「いえあの、、 どうか起こし下さいませ この通りでございます、、」
「そうですか まぁいい では行きましょう」
「はぁい! では馬車へお乗り下さい!」
高そうな馬車だ、この国の御料車のようなものか
私は、謁見の間ではなく、客間へ出向いた
「おお! これはこれは使者殿! お呼び立てして申し訳ない! 何か飲まれますかな? 花の蜜などは? あと干し肉と魚と小動物と、あと色んな鉱石など、、」
「では 強い酒を ドヴェルグでは 会談は酒の席と決まっておりますのでね」
「そそそ、そうですか、、これ!強い酒を持ってこい! (しまった! しくじったか! 全然違うではないか! まだ朝だというのに強い酒とな ん〜、、こんなにも文化が違うのか!!)」
「ところで陛下 私に何か?」
「いやその、、不平、、いやなんと言うかその、、あのね」
「まさか 『受け取った』 というのにそれを反故にしようなどとは考えてはおりますまいな」
「いえいえ! 滅相もない! いや、そうなんだがそうでなくてですな!」
「話が見えませぬなぁ 宰相殿 これはいったい」
私は宰相を見つめた
宰相が冷や汗をかきながら口を開く
「あ、あのですね、、今回の件は『ナイフを受け取る』という意味が双方で違っているのではないか、と思いまして、改めて今後のご相談をしたく、お呼び立てした次第です、はい、、」
「なるほど、、では『受け取った』というのは間違いないが、こちらと、そちらで違った意味だと仰っしゃるのですな?」
「そ、そうなんです! はぁい!」
「では、こちらの国では、どのようにソレを行うのですかな?」
ソレという言葉に宰相が戸惑う
念の為書いたであろう書類を出した
「ソレ、、あ! あ、はい、その こちらに書類を用意致しました、ご覧ください、、はい」
「なになに、、 不可侵条約、、領土の返還、、長期に渡る賠償の、、、なるほどねぇ」
「いかがでしょうか、、」
「我らが王に聞いてみないとわからぬ事、、しかし1つ、、」
私は難しい顔をして見せた
「な、何か不備でも、、」
「亜人の開放が記されておりませんなぁ」
私は、王と宰相を睨みつけた
宰相が慌てて答える
「えぇぇ!? これはこれは申し訳ありません! 書き忘れておりましたか! そうですか!失礼しました、今直ぐ書き直しますですはい!」
「それと、改めて国交を結び直すとなると、、そちらは誰を大使にするおつもりで?」
王と宰相は、そこまで考えてなかった様子だ
「へ? た、大使ですか? えっと、、」
宰相は王を見た、しかし王は見るなと目で訴えている
「まさか、、あのような長期に渡る野蛮な行為をしておいて、三下なんぞ寄こすわけでは無かろうな?」
王が慌ててこう言った
「いやいや! 大使はこの宰相が行きますゆえ!」
「へ、陛下!? 」
宰相は悲しい顔をした
こちらからは私の式神・夜鷹を差し出す予定だ
「それは結構 では、こちらからは ヨタカさんを出しますね とても優秀で、とても強い女性です 私と同族の者ですが」
「ふむ! それは結構ですな! 丁重にお預かり致しますぞ!」
宰相が条約書を書き直した
それと同時に、今後の予定を記した書類を手渡され、話はまとまった
「では、私はドヴェルグに戻り、この事を我が王に報告致します きっと気に入るでしょう」
「おお! それは良かった! 」
「うぅ、、、」
王は喜び、宰相は悲しそうにしている
その後、私は式神・夜鷹を使い、書類をドヴェルグに送った
それから数日して、ドヴェルグ王国領内で
ドヴェルグ王とヴァイガル王が、共に条約に署名をし
それらは締結された
そして、エルフ達は開放され、ドヴェルグ王国で静養をした後、妖精の花園で暮らす事となった
大使となった宰相は、オニがあれこれして
ドワーフ達と一緒にルーン文字の研究をしている
始めは戸惑っていたものの
今ではドワーフ達と楽しくやっているそうだ
ヴァイガルの王と違って
ドワーフ達とは話が合うのだとか
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