第7話 蝶を追いかけ、転ぶ君
私は住処を変える事にした、王城のある街を出て
道を歩く、アスファルトでない道は足に優しい
草木も多く、空気もうまい
この世界でも、良い所を探せばあるものだね
旅の途中、雨が降れば、木の下で雨宿り
暗くなれば、木の上で丸くなる
そして、また歩き出し、道を行く
道の所々に、魔術の店で見た光る石が
柱の上に置かれている
たまに人間も見たが、皆、馬車や馬に乗っている
街から街までが、だいぶ遠いいのだろう
歩き続けると、道が二手に分かれていた
オニが『こっちに行こう』と言うので
私はその通りにした
道を歩き続けると
いつの間にか登り坂となっていた
坂道を歩き、蝶を見つけ、それを眺めた
蝶に手を伸ばし、遊んでいると
『俺にもやらせろ』とオニが言う
私達は身体を交代しながら楽しんだ
すると、いつぞやの妖精が、こちらへ飛んで来た
妖精は、私の前で止まり、身振り手振りで忙しない様子だ
《こいつ この前の妖精か?》
「恐らくね。 妖精は とても希少なもののようだから」
《何か伝えようとしているな》
「言葉が話せないのか もしくは我々には この者の発する言葉が 理解出来ないのだろうね」
《なんか、、付いて来いって感じだな》
「ふふっ 付いて行くかい?」
《まあ 行ってやらんでもないな》
「では 付いて行くとしようかね」
私は妖精の後を付いて行く事にした
妖精はチラチラと振り向き、私を気にしている
私は道なき道を進み、森の中へ迷い込んだ
妖精が動きを止め、何かを指さした
「あれは なんだろうね」
《なんか モヤモヤっとした場所だな》
森の中に、視界がぼやける場所がある
《あ? 妖精が 消えたぞ》
「あの場所へ進んで消えたね 結界か何かだろう とても弱く消えかかっている」
《結界か あんまり良い思い出はねえんだが》
「とりあえず 行ってみるかね」
私は妖精が消えた所まで進んだ
進んでみると、一面に花が咲いた場所へ出て来た
何やら、騒がしい
「ここは妖精の住処だろう この妖精が捕まった場所か」
《おいクロ あそこに居るのは人間か? 》
「なるほどね だから私をここへ連れて来たのだね」
花園には、多くの妖精と、10人ばかりの人間がいた
人間が、妖精達を捕まえようと暴れている
何人かが、手に魔術の本を持ち、光りを放っている
その光りから逃げるように、妖精が飛んでいた
「オニ、、 頼めるかい? 」
《ああ 得意分野だ 》
私はオニに身体を預けた
毛は逆立ち、激しく威嚇し、眼が赤く光る
「ふぅ、、実体があるってなぁ 不思議な気分だぜ」
次第に黒い霧が、一面を覆う
人間共が当たりをキョロキョロと不思議そうに見渡した
背後の違和感に気付いて振り返る
そこには、見上げるほど大きな黒い猫が
眼を光らせ見下ろしている
「わああ! な、なんだこの魔獣はあ!」
「おいっ! この魔獣を封じろ!」
「ええっと、、 封印魔法『
本を持った人間が、呪文を唱えると
他の人間が、光る石を投げて来た
石はオニの足下にばら撒かれた
その石の光が、複数の鎖となって
オニの身体を目掛け、ジャラジャラと飛んできた
だけども、オニの身体は黒い霧のようになり
鎖はするりと落ちていく
「な、、なぜだ! エルフでも縛る魔法だぞ!」
「昨日今日生まれた人間ごときが、この千年呪い続けた悪霊様を縛るって? 縛り方を教えてやらあ」
人間は、この現状に驚きを隠せないでいる
今度は俺の番だ、とオニが張り切る
「『
人間共の身体に無数の
人間共は皆苦しみながら、辺りを転げ回る
「そいつは
オニは自分の呪いの強さを見せつけて、自慢げな様子だ
のたうち回る人間に、オニは言う
「二度と来るなよ 次はこんなもんじゃ済まねえ」
そう言うと、オニは前足を大きく振り
人間共を吹き飛ばし、結界の外へと追い出した
「ふぅ、、クロ 実体ってのは疲れていけねえ」
《お疲れ様 後はゆっくりしておくれ》
オニは私に気を使ったのか、すぐに身体を返した
私は消えかかった結界を張り直す事にした
「さて 今度は私の番だね、、」
私は空を仰ぎ、口から白い霧を吹いた
その霧が、天から花園を覆っていく
「結界術、、『
沢山の日差しが差し込み、暖かくなってきた
この結界は、入り込んだ悪しき者を迷わせ
そのまま結界の外まで追い返すものだ
この状況を飲み込んだのか
妖精達が、私の元へ集まりお祭り騒ぎだ
何を言っているのか聴こえはしないが
随分と喜んでいる様子だ
「ふふっ お前達は静かでいいねぇ」
私はその場で丸くなり
日差しを浴び、小さく
清々と 猫がくつろぐ 傍らの
跳ねる妖精 花もほころぶ
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