KACのお題をAIに聞いてみた
無月兄(無月夢)
第1話
2025年3月3日。この日が何の日か、皆さんはご存知だろうか。
ひなまつりだって? 否! KAC開始の日だ!
KACが何たるかを知らずに本作を読んだ人のために説明すると、カクヨム公式が出したお題にあった小説を執筆、投稿するという企画。
だがその締め切りが極端に短く、最短だと、三日以内に小説を一本書かなくてはならない。
その過酷な内容から、狂喜の祭典だの、日常生活ブレイカーだの呼ぶ者もいるくらいだ。
そんな過酷な企画に、いったいなぜ参加するのかと疑問に思う者もいるかもしれない。
だがその理由はいたってシンプル。そこにKACがあるからだ。
かくいう私も、そんなKACの魅力に取り憑かれた者の一人だ。
特に目立った功績もない、しがないカクヨム作家の私だが、だからこそ、こんな企画にやりがいを感じるのだ。
「今年も全てのお題に対して小説を書いて、見事皆勤賞をゲットしようではないか!」
天高く拳を突き上げ、宣言する。
するとその時、部屋の戸が開いて、愛しの妻と小学生の娘が入ってきた。
「お父さん、うるさい!」
「あなた。少しは静かにして」
はい、すみません。KACに熱をあげるのはいいが、家族に迷惑をかけてはいけないな。反省反省。
だいいち、KACまではあと一週間もある。
お題は毎回当日の昼12時に発表されるから、それまでにお題に合った小説を書くことなんて、もちろんできない。
今から意気込んだところでどうすることもできないんだよな。
と思ったが、本当にそうだろうか。
もしも、もしもだ。KACのお題が何なのか事前にわかったら、予め書いておくことができるんじゃないだろうか。
もちろん、お題がなんなのか事前に知るなんて、普通はそんなこと不可能だ。
カクヨムを運営しているKADOKAWAのホームページにハッキングすればできるかもしれないが、そんなサイバー攻撃みたいなこと、絶対にするわけにはいかない。そんな技術もないしな。
なら、やはりお題を知ることは不可能?
いや、諦めるのはまだ早い。人間には、こんな文明の利器があるのだ。
私はスマホを開いて、あるアプリを起動させた。
そのアプリとは……
「じゃじゃーん! AIチャットボットのアプリーっ!」
AIチャットボットというのは、ユーザーの質問にAI(人工知能)が自動で返信するというシステムだ。
これでAIに、KACのお題が何なのか質問すればいい。
もちろん、AIがKACのお題を知っているかはわからない。だが、近年人工知能の発達は目覚ましい。
もしかしたら、もしかするかも。
「AIさん。いや、AI様。なにとぞ、KACのお題を教えてください」
頭を下げて質問すると、AIは早速答えてくれた。
この回答の速さ、さすがAIだ。
そして、その答えがこれだ。
【現在、2025年度のKACに関する情報はまだ公開されていません。ただし、過去のデータから予測することはできます】
おぉっ! やはり正確な答えは無理だが、推測ならしてくれるのか。
ワクワクしながら、続きを読む。
【以下の単語が、予測されるKACのお題です『アンラッキーセブン』『住宅の内見』『拡散する種子』】
それを見て、私は絶句した。これ、全部今までのKACで出たお題じゃないか!
いくら過去のデータからの予測といっても、そっくりそのまま同じお題が出るわけがない。
残念ながら、AIを持ってしてもKACの予測は不可能だったようだ。
「って言うか、『アンラッキーセブン』に『住宅の内見』に『拡散する種子』ってなんだよ。今までよくこんなトンチキなお題が出てきたな」
今回もまた、こんなとち狂ったようなお題が出るのだろうか。もしそうなら、それにあった小説など書けるだろうか。
私は戦々恐々としながら、運命の日である3月3日を待った。
そして、3月3日当日。発表後、すぐにお題を確認して書き始めるため、私はこの日仕事を休んで自分の部屋で待機していた。
時刻は午前11時50分。お題発表まで、あとわずかだ。
だがその時、部屋の戸が開いて、妻が入ってきた。
「あらあなた。雛人形の準備、まだしてないの?」
「えっ? 雛人形?」
「娘のために買った雛人形ですよ。今日はひなまつりだから、娘が学校から帰って来るまでに用意するって言ってたでしょ」
「あっ……」
しまった。すっかり忘れてた! 娘、楽しみにしてたんだよな。
こうしちゃいられない。KACも大事だが、家族はもっと大事なんだ!
というわけで、私は急遽、雛人形を用意し、並べ、飾り付けをすることになった。
もちろんそうしている間に12時はすぎ、KACのお題は発表されたのだが、私はお題が何なのか、未だ確認できていない。
今日がひなまつりであることをきれいさっぱり忘れていたせいで、まさかこんなことになってしまうとは。
KACのお題、いったいなんなんだーっ!
KACのお題をAIに聞いてみた 無月兄(無月夢) @tukuyomimutuki
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