天使と悪魔がささやきかける、決めるぜ、俺の脳内職業選択!

執筆のゴシ

 異世界来たけど、何しようか

 俺の名前はシエロ・ギュンター。

 旧姓は江口軍太えぐちぐんた

 地球で生活してた15歳の俺は、事故で一度死んでしまって、今はウレールっていう異世界に来ている。

 いわゆる転生ってやつだ。


 死の間際で俺の前に現れた女神、アリス。

 アリスは、このまま江口軍太として死ぬか、ウレールの魔王を倒す勇者シエロ・ギュンターに転生するかという、究極の2択を俺に提案してきたんだ。

 死の間際の選択、そんな2択は1つしか考えられない。

 そう、俺は勇者になって魔王と戦うしかないはずなんだよ。


 でもアリスがが用意した、新しい転生キャラが……めちゃくちゃYOEEE!

 転生者特別ボーナスも特にない。1番高いステータスが魅力。覚えてるスキルも意味がわからない。技の会得がガチャ運ってなんだよ。

 そんなYOEEE勇者が今から魔王を倒しに行くってどうなのよ?


 それでもやるしかないと思っていた俺はウレールの王様や軍隊長に会って、一緒に戦おうとしたんだが……俺よりあいつらの方がTUEEE。

 俺要らないよね、って思うぐらい会ったヤツらがやばい。

 魔物や魔族、王族貴族にエトセトラ。何でもかかって来やがれ、って精神で転生したのはいいけど、俺は勇者として先が見えないよ。


「マスター、俺どうしたらいい?」


 酒場で飲んだくれる俺は、酒場のマスターに人生相談を持ちかける。

 マスターはめんどくさいヤツと思ったが、客として対応することに。

「修行して強くなればいいんじゃないかな?」

「今から?無理無理。俺が強くなるより先に、魔王がくたばっちゃうもん。おじいちゃんらしいし」

「じゃあ勇者は諦めて、前世の記憶を使って商売をするっていうのはどうかな?」

「前世の記憶〜?俺15歳。なんも知りませーん」

 真面目に答えたマスターだったが、シエロの心には響かず、シエロは酒を浴び続けるのであった。

 下品な飲み方をする俺に対して、マスターは

「今日は帰りなよ。そうだ、お前さんたしか『天使と悪魔のささやき』って技を会得したんだろ?それ使ってみなよ。何か見えてくるかもしれないぜ」

と言って、俺を店から追い出しやがった。


「ひでーよ、マスター。ひぃく、あぁもう。第2の人生、何がなんでも生き抜いてやるからー」

 俺は酔いすぎてか、ヤケクソになって、大空に叫んでみる。

「悲しいだけだな……帰ろ」

 当然、何かが起こるわけもなく、俺は悲しくなって、トボトボ家に帰るのだった。


◇◇◇◇◇


 家に帰り着いた俺は、ベッドの上で今後どうウレールで立ち回るべきかを考えてみる。

 勇者として魔王討伐に行かされるのは避けられないが、せっかくもらった第2の人生を魔王にやられて終わるだけにしたくない。

 でも、どうするかなー?


 いろいろ考えてはみたが、俺1人の頭では考えられる選択肢に限りがある。

 そこで俺はマスターに言われた新技『天使と悪魔のささやき』を使ってみることにする。

 異世界特有の、ゲームみたいなステータスプレートを表示して、俺はその技を使ってみることにする。

 

「はじめまして、シエロ」

「ぐへへ、来てやったぜ〜、シエロ」

 俺が技を発動すると、俺の脳内で、喋る天使と悪魔が姿を現した。

 ってこれ、ただの妄想だよな?

「妄想じゃねーぜ。俺たちはちゃんと自分の意思があるのさ」

 えっ?喋って無いのに会話できてる。スゴいや。

 じゃあさ、じゃあさ。俺が今後どうするべきとかって分かるかな?


 俺は頭の中の天使と悪魔に人生相談することにした。

「そうですね。何事も愛情が一番だと思いますよ」

「は?ちげーよ。金だ金。金があればなんでもできるだろーよ」

 やっぱりか。天使と悪魔の意見は綺麗に別れた。


 天使に質問。愛情って大事だと思うけど、俺に恋愛しろってことでいいのかな?

「そうですね。もちろんそれも愛を感じる1つの手段ですね」

 確かに。恋愛ってのは人の原動力だ。

 現に俺はウレールの姫様に恋してるから、まだ勇者やってるってのもあるし。

 んー、でもなー。恋したから俺の人生よくなるってのは、ちょっと曖昧あいまいだな。

 結局姫様に好かれるには勇者やんなきゃ無理だろうし。


 悪魔、お前はどう思うよ?

「愛があっても、こいつはザコ。恋焦がれて、ただ死ぬだけだぜ!」

 うんうん、っておい!

 ひどい言い方するヤツだな……でも言ってることも分かるか。

 俺が姫様と付き合えるってなるのは、魔王を倒してからになるだろう。

 つまり、俺はこのままだと恋するYOEEE勇者として魔王に倒されて人生終わってしまう。


 じゃあ悪魔、お前はどうしたらいいと思う?

「ん、俺か?そうだな。お前勇者なんだからさ、いろんな国行って魔王倒すからって言って金かき集めてこいよ。そんで集めきったら飛んじゃえばいいんだよ」

 詐欺じゃねーか、それ!

 金は大事かも知れんが、犯罪はダメだろ。

 却下だ、却下!


 愛情も大事、金も大事。

 どっちも大事なんだけど、両極端すぎるんだよな〜。

 愛情……愛……好き。うーん。

 金……金?そういえばウレールのお金って単位はなんだ?円、ウォン……ドル?

 あれ、なんか俺、今いいこと言ったかも知れない。

「あ?なんか言ってたか?ただ愛情と金を言い換えてただけじゃねーか」

「そんなことないですよ。私は分かっちゃいましたよ。愛情もお金も得られるシエロの未来が」

 今の会話でか?なんだよ、教えてくれよ。


 俺は天使に教えて欲しいと頼んだが、素直には教えてくれず、俺が言い換えた言葉を繋げてみてはどうかと言ってくる。

 俺と悪魔は天使の言う通りに、愛情と金の言い換えた言葉を繋げてみる。

 愛情、愛、好き。そして金、円、ウォン、ドル。

 この単語を並び替え、繋げてみる。すると意味の分かる言葉が、たった1つだけ見つかった。

「「アイドル!」」

「グッド!」

 俺と悪魔が口を揃えて言い放つ言葉に天使も納得した。

 

 アイドル……そうか、アイドルか!

 人に愛情を感じさせ、お金も得られる職業。

 勇者じゃない……アイドルなんだ!


 アイドルか。魅力の高い俺ならいけるぜ。ありがとよ2人共!やってやるぜーーー!

 こうして俺YOEEE勇者シエロはアイドルを目指すことになる。


 しかし、この時のシエロはまだ知らない。

 そもそもテレビも雑誌も無いこのウレールの世界で、アイドルをするにはまず、アイドルを応援するという概念を皆に植え付けなければならないのだ。

 それにアイドルをするにしても、事務所などがあるわけでは無い世界で、シエロがアイドル活動するには自分で稼いで、ステージなどをまず作るところから始めなければならない。

 アイドルを目指した後に、シエロは大空に向かって叫ぶことになる。


「アイドルグループ作るの大変過ぎー!とぅんくさんも春本さんもTUEEE!」


 やってみて、意外と甘く無い業界だというのを知るのであった。


 END




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