珍品という言葉に弱い
剣と魔法のファンタジーであるこの世界には、変なものが多い。
ダンジョンで発見される、変な効果のエンチャントソード。
魔術師が、迷走に迷走を重ねて完成させた失敗魔導具。
錬金術師が、需要を無視して好き勝手錬金したポーション。
まぁ、何かと変なアイテムには事欠かない。
そして、そういうアイテムを収集する冒険者は少なくないのだ。
かく言う私もそうである。
「店主さん、何か面白いものない?」
「漠然としすぎていませんか? ……いらっしゃいフーシャさん、どうぞ見ていってください」
私は、馴染の武器防具屋の店主へ開口一番適当なことを言う。
ここは私がよく通っている店で、主に中位の冒険者が使う武器防具が揃っていた。
言うまでもなく、私が使うような武器はない。
私の装備は一張羅の風神のはごろもと、店売りの量産型長剣、それから切れ味のいいミスリルナイフが一本。
これだけだからだ。
どれも、中位の冒険者向けの店には置いてない。
「冷やかしになっちゃったらごめんね?」
「いえいえ、今は見ての通り閑古鳥がないてますから、冷やかしでも人がいてくれたほうが助かります」
じゃあ何がほしいのかって言うと、そういった冒険者向けの魔導具。
特に、使い捨ての呪符とかがあったら、買おうかと思っている。
魔導具と一言で言っても、さっき言った通り魔術が刻まれたエンチャントソードだったり、使い捨ての呪符だったりで様々だ。
そしてこういう店においてある魔導具は、ダンジョンで産出したものが多い。
「新しい珍品は増えてるかなぁ」
「珍品……ではないつもりなんですけどねぇ」
「ロマンに走りすぎだとは、思うけどね」
前にも話したが、ダンジョンは生物だ。
そんなダンジョンが生み出すアイテムには、二種類ある。
一つは死んだ冒険者の遺品。
ダンジョンは冒険者の死体を喰らう。
同時に装備も喰ってしまうわけだけど、その際に食べた装備はアイテムとして宝箱に入れられる。
もう一つはダンジョンが魔力で生成したもの。
ダンジョン内に出現する魔物のように、魔力でアイテムを再現するのだ。
不思議なもので、この魔力で再現したアイテム、実際に効果がある。
ポーションなら回復に使えるし、量産型長剣なら、その強度と切れ味は他の量産型とどっこいだ。
「これには様々な説がありますが、私はこの世界は魔力でできていて、それを最も自在に操れるのがダンジョンという説を推していますよ!」
「その話、何回目だったかな」
「それがダンジョンのロマンというものですよ! たとえ、出てきたものがろくでもない珍品だったとしても!」
自分で「ろくでもない珍品」と豪語していくのか……
まぁ、実際概ねそのとおりだ。
ダンジョンは、そうしたアイテムを生成できる。
だけどその出来はまちまちで、中にはとんでもないゲテモノも生まれてしまう。
いわゆるハクスラゲーで、ダンジョンからドロップしたアイテムに付与効果がついてたりすることがあるじゃん?
アレがもっとフリーダムになった感じ。
具体例を提示したほうがいいな。
「そういうフーシャさんだって、珍品を探しに来たんでしょう?」
「まぁ、そう言われるとそうなんだけどさ……」
かく言う私も、この店にやってきた理由はゲテモノ探し。
変な装備って、使ってて楽しいんだよ。
こう……トライピオを改造して遊び倒す感じ?
して。
「実はそんなフーシャさんに、おすすめしたい商品があるんです」
「ほほう、聞こうじゃないの」
店主の言葉に、私の目がキラリと輝く。
いやだって、気になるんだもの。
珍品を求めて、ここまでやってきたんだもの!
「今回ご紹介したいのはこれ、鑑定魔術によると、名前は風車剣です」
異世界特有の鑑定魔術は便利だな。
魔術という特性上、使い方がわかって適性が偏ってなければ誰でも使えるのもミソだ。
ちなみに土属性。
私には……無理!
それはそれとして、見た目はなんというか……回転する部分が刃になった風車だ。
名前そのまんますぎる。
「剣を振るうと、ふるった際の風により剣先が回転。相手の身体をズタボロにする……らしいですね」
「ほほお、私にピッタリな剣だ」
なにせ、私の名前はフーシャだからして。
二つ名にしたって、白迅の「迅」は風で相手を切り裂くようなニュアンスの言葉だ。
これはもう、私の得物を風車剣にするしかないね!
「軽く振ってみても?」
「どうぞどうぞ」
この店は武器を扱っているので、店の一角に素振りをするコーナーがある。
そこまで歩いていって、剣を構える。
なんとなくかっこいいポーズ!
「そら!」
そのまま、ひとふり。
するととたんに、身体から微小の魔力が抜き取られるのを感じる。
直後、振り下ろされた風車剣がいい感じにくるくる回った。
なんとなく、相手をみじん切りに出来そうな気がする。
「……買った!」
「毎度あり!」
かくして、私のコレクションに新たな一品が追加された。
+
「え、えっと。魔法使いさんは何をしてるんですか?」
「剣の素振り。私、ちょっと剣術に目覚めちゃって」
「……え、これ、剣なんですか!?」
後日、ギルドにある修練場で、私は風車剣を振り回していた。
ぶんぶんと、振るう度にいい感じの回転が風車剣にかかる。
そんな剣をみて、何やらプリンセスが困惑気味だ。
「これは風車剣と言ってね? 風車の先が刃になってて……」
「そ、そうだったんですね……! す、凄いです!」
説明すると、プリンセスはすぐに納得してくれたようだ。
隣でシェナイトさんが、顔を引き攣らせているのは御愛嬌。
「プリンセス、騙されないで。フーシャが買ったダンジョン産の魔導具が、今まで役に立った例はある?」
「え? あ、い、いわれてみると無いような……」
「今回はうまくいくから! というか、別に全部が全部ハズレだったわけじゃないって!」
そんな私の眼の前には、ギルドから借りてきた練習用の木人形。
錬金によって作られ、決まった動きを繰り返す新人用の練習人形だ。
今からこれを相手に、剣の練習をしようというわけ。
「まぁ、見ててよ。見事あの木人形を切り刻んでみせるから」
「き、切り刻んじゃうんですか!?」
「……それやったら、弁償じゃない」
まぁ、物は言いようってことで。
私は迫りくる、木剣を構えた木人形に対して剣を振るう。
正直、剣の心得なんて皆無な上に、そもそもこの風車剣、剣の形状してないから扱いにくいんだけど。
そこは何とか身体強化で誤魔化して――
「やあ!」
掛け声とともに振るわれた剣は――
猛烈な風を生み出して、木人形をふっとばした。
「ああ、木人形さん!」
慌てて、プリンセスが駆け出す。
いや木人形は別に生きてないんだけど、というツッコミはさておいて。
「……実はこの剣、回転に魔力を使うんだよね」
「ふるった風の力で、剣先が回転するっていうのは何だったの?」
「鑑定魔術の誤作動だろうねぇ……」
鑑定魔術は、鑑定したアイテムの仕様まで説明してくれる。
だが、このときの仕様は開発者の想定に準ずるのだ。
想定通りに行かなかったので、ダンジョンくんが魔力で回転する機構を取り付けても、あくまで鑑定魔術の説明は想定しか教えてくれない。
「風鳴りの私が使ったら、そりゃあ風で相手をぶっ飛ばす風車の形をしたうちわになるよね」
「……とりあえず、貸してもらえる?」
「ん? はいどうぞ」
そこで、何やら思いついたらしいシェナイトさん。
シェナイトさんの合図でプリンセスが木人形を起き上がらせて、再びこっちに突っ込ませてきた。
対するシェナイトさんは風車剣を構え――
「ハッ!」
その剣で――木人形の木剣を絡め取った。
同時に、魔力によって風車剣が回転。
その勢いに負けて木人形はつんのめり、剣はその手から離れた。
「おおー」
「……まぁ、こんなものね」
「すごいです、ナイトさん!」
持っている剣が風車の形をしていなければ、凄くかっこいい!
とか思っていたら、睨まれた。
ナンデ解ったんだろう。
いや、ごめんなさい。
「剣と剣の間に相手の剣を挟んで、回転させてそれを巻き取る曲芸みたいな武器としては使えそうね」
「お、おお! つまりこの剣は当たり……!」
「そんなことしなくても、普通に使ったほうが速いわ」
「ぐおっ」
バッサリ。
シェナイトさんは一刀両断した。
「そ、それに……魔法使いさんは魔法使いさんだから……そういう技術が必要な動き、できそうですか?」
「ぬぐっ!」
プリンセスに追撃された!
くそう、どっちも剣を使う前衛め……!
かくして、今回掘り出した珍品は、使えないこともないけど使わないほうが強いという微妙な結果に終わった。
風車って名前に親近感が湧いたから、どっかで使ってみたかったんだけどなぁ!
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