学園祭 9
ついに学園祭は3日目、最終日となった。
午前中は文化祭なのでどこに行こうか迷っていると、雪ちゃんが話しかけてきた。
『先輩のとこ行かないの?』
『…で、でも』
『何があったのかは知らないけど、今のままはよくない。私も暗い顔した乃蒼は見たくないよ?』
雪ちゃんは同い年とは思えないくらい大人っぽい。困ったことがあると助けてくれるし、ホントにかっこいいと思う。
一ノ瀬先輩を探し回った。気づけば11時を過ぎていた。
…どうしよう、全然見つからない。
そう思った次の瞬間、先輩らしき背中を見つけた。
『一ノ瀬先輩っ!』
「…乃蒼ちゃん、どうした?」
『先輩、避けないで…』
先輩のジャージの袖を掴みながら泣きそうになる。
「え?何のこと?あぁ、泣かないでー。」
慌てる先輩。
『昨日、話しかけてくれなかったじゃないですか…。』
「…今時間大丈夫?もし良かったら部室で話さない?」
周りには蓮もいたので私たちは部室に行くことにした。
部室に着くと、先輩が口を開いた。
「ごめんね、俺避けたつもり全然なかったんだ…。」
そう言って泣きそうな私を抱きしめてくれた。
『じゃあ、なんで…。』
「乃蒼ちゃんが男の子と話してて…」
『?』
「…嫉妬したみたい。」
耳を真っ赤にしてそう言う先輩。こっちまで恥ずかしくなって顔が赤くなる。
『そうだったんですね、なんかすみません…。』
「いや、俺が悪い。本当にごめん。」
お詫びに、先輩と一緒に残りの文化祭を回ることになった。
少しの間だったが、先輩といろんな場所に行くことができた。
「乃蒼ちゃん、喉乾かない?」
『そうですね。あ、先輩っ!タピオカ飲みません?』
「いいね、そうしよ。」
ということでタピオカが売ってる露店に向かう。
「何にする?」
『そうですね、いちごミルクにします!先輩は?』
「んー、決まんないなぁ。乃蒼ちゃんだったらどっち?」
『うーん、私だったらココナッツミルクですかね。』
「じゃあ、いちごミルクとココナッツミルクでお願いします。」
「2つで800円になりまーす。1000円お預かりしまーす。200円のおつりでーす。」
ん?今、一瞬にしてお会計が終わった気がする…。
『先輩、もしかしてお金…』
「ん?何?」
先輩が分かりやすくとぼけるので、お金を払わせてしまったことに気づく。
『先輩っ、ダメです!』
「いいから。俺に出させてよ。」
『いや…』
「大丈夫だよ。」
『でも…』
「俺、泣くよ?」
『…すみません、ご馳走様です。』
そう言って先輩はタピオカを奢ってくれた。
しばらく露店を回っていると、急に雨が降り出した。私と先輩は屋根のあるところまで避難した。
「結構降ってるねー。」
『そうですね…。』
ぶるっ。
寒い…。雨で服が濡れてしまったおかげで、風が当たると冷たく感じる。
すると、バサっという音と共にシトラスの香りに包まれる。
「寒いんでしょ?これ着て。」
…先輩のジャージだ。
『あ、ありがとうございます…。』
最後に先輩が上着を貸してくれたところで、文化祭は終わってしまった。
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