学園祭 4
「そういえば乃蒼ちゃん、」
『はい?』
急に一ノ瀬先輩が話しかけてきた。
「クイズ大会の時のあれは何だったのかな?」
『あれ……??』
なんかしたっけ?全然思い当たることがないんだけど…。
「今日、一緒に帰るんだよね?」
…あ。先輩にいじわるしちゃったやつだ。
『そ、そうでしたっけ?覚えてないなぁ。』
「そっか。」
先輩も案外、諦めが早くてよかった。
そう思ってると、
「まぁ、一緒に帰ろ。ね、蓮?どうせ今日は俺と一緒に帰らないだろ?」
「お、おう。」
『え、そうなの?』
「うん。今日は違う人と一緒に帰る。」
『そっか。お幸せにねー。』
「…うん?なんで乃蒼知ってんだ?」
やばっ、言っちゃった…。
『あ、呼ばれてるから行かなきゃ。じゃーね!』
「おい乃蒼!」
そのまま逃走に成功し、サッカーを見て沸いている楓と雪ちゃんの2人と合流した。
みんながサッカーの試合に出ていた秋元先輩で目を潤した後、次の競技が始まった。
『誰が出るんだろ?』
楓がつぶやく。
『鈴木先輩とか出るんじゃないかな?』
雪ちゃんがそう言った。
『…一ノ瀬先輩出ないのかな?』
え?楓、今なんて…?
『顔に出てるよ乃蒼。』
『わ、私?いや、そんなこと思ってないってー。』
誤魔化してみたが隠しきれてなかったらしい。
『乃蒼はほんとにわかりやすいんだから。』
うーん、正直出てても出てなくてもどっちでもいいなぁ。どうせ私には関係ないし。
パンッ
借り物競争のスタートを知らせるピストルの音が、グラウンドに響き渡った。
誰が出てるんだろ…。
気になったので走っている人を見てみても、みんな一緒に見えて誰が誰だか分からない。
『あ、鈴木先輩いる!』
楓がそう言って指を指す。
そっちを見ると、蓮が2年生の女子のいる席を抜けて、後ろに立っていた徳島先輩のところまで勢いよく走っていた。
お題、何だったんだろ?
すると、蓮は先輩の腕を掴んで一緒に走り始めた。
「「『『『えーーー!!!』』』」」
全校が突然のことにびっくりしたのか、歓声と悲鳴をあげている。
そっちに気を取られていると、誰かに肩を叩かれた。
「乃蒼ちゃん、ちょっといい?」
『どうしましたか?』
振り向くと、一ノ瀬先輩がいた。
気づくと私のハチマキほどかれて、先輩の手の中にあった。
そして頭を軽くポンポンとすると、
『借りてくね。』
と言って走り去っていった。
自分でも何が起こったかわからなかったけれど、周りの人もそれ以上に驚いた様子だった。
先輩がゴールした後、実況によってお題が明かされる。
「一ノ瀬蒼生選手!ゴールおめでとうございます。ちなみにお題は何でしたか?」
「ありがとうございます。えっとお題は、」
…どうしよう。無駄に緊張する。
「マネージャーのハチマキです。」
何かを期待していた隣の人たちは、一ノ瀬先輩がお題に対してめっちゃ素直だったことにびっくりしているようだった。
いや、そのままじゃん…。
全校がつまらないと思っていた時、青春映画のワンシーンのような展開を見せたのは
…蓮だった。
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