正式決定
そして、金曜日の放課後になった。
私は言われた通り部活に行き、高宮さんが仕事をやっているのを見ていた。
徳島先輩は、試合の事などを先生と話すために職員室に行っていた。
高宮さんは頑張って仕事をしていたが、分からないことが多かったのか困っていた。なので結局一緒にやることになった。
『高宮さん、一緒にやってもいい?』
そう声をかけると高宮さんは泣きそうな顔で私を見てきた。
『ごめんなさい、お願いします。』
『うん。初めてだし、わからないこと多くて大変だよね…』
そう言って二人で仕事をこなす。
高宮さんはひどく落ち込んでいて、私に謝ってきた。
『ごめんなさい、わがまま言って巻き込んじゃって…。先輩が言ってた通り、結局1人じゃ何もできなかった…。』
『大丈夫だよ?高宮さんはマネージャーに本気でなりたかったんでしょ?私もただ“経験者”ってだけで決められるよりも、ちゃんと実力で決めて欲しかったの。』
今まで思っていたことを素直に言う。
『だから高宮さんがそう言ってくれて嬉しかったの。だから気にしないで?』
『鈴木さん、優しいね。そう言ってくれて嬉しいよ…。』
『そういえば、どうしてマネージャーなりたかったのか、聞いてもいい?』
『うん。実は…。』
高宮さんには去年、この学校を卒業したお兄さんがいて、バレー部に所属していたらしい。
彼女は何回も試合を見に行ってるうちに、選手を支えるマネージャーになりたいと思ったそうだ。
『そうだったんだ…。』
『うん。でもね、今日の鈴木さんの働きぶりには敵わなかったよ。』
高宮さんが微笑んでくる。
さっきとは違ってなんだかスッキリした顔をしている。
『いやいや、そんな…。』
私は褒められて照れてしまう。なんだか嬉しいな。
『今日はありがとう。マネージャー体験できてよかった。先輩には辞退するって言っとくね。じゃあマネージャーがんばってね!』
そう言って高宮さんは帰っていった。
『お疲れ様、今日も任せっきりになっちゃってごめんね』
そう言いながら徳島先輩が近づいてくる。
『先輩もお疲れ様です。こっちは大丈夫でしたよ。』
『あの体験の子、動き悪くはなかったけど、やっぱり鈴木さんには負けるわね。』
突然褒められたので、思わず目を見張る。
『な、なんで知ってるんですか?あ、まさかずっと見てました?』
『あははは、いや、1回様子を見に来ただけだよ。そしたらなんだか仲良くやってたからさ、よかったなぁって思って。』
わ、見られてたのか…。恥ずかしいなぁ。
『さて、あの子がマネージャー辞退したということで、正式にマネージャーだね!後でみんなの前で自己紹介してもらうからよろしくね。』
『は、はい!よろしくお願いします。』
掃除が終わった後に、みんなの前で自己紹介をすると温かい拍手で迎えてもらえた。
ここからマネージャーとしての新しい生活が始まった。
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