マネージャー初日? 1
後ろから高宮さんが言った。真剣な目をしてまっすぐ先輩のことを見ている。
すると先輩はため息をついて
『…わかった。でも判断するのは部員がやる。異論はないね?』と言った。
『はい、ありがとうございます!』
高宮さんは潔く礼をする。そして私を見た。
『乃蒼ちゃんもそれでいい?急になっちゃったけど…。』
『は、はい。大丈夫です…。』
驚いたけど承諾した。正直、私も公平に決めてほしかったしね。
『じゃあ、今日は乃蒼ちゃんが仕事やるからどんなことやってるか見ててくれる?で、高宮さんには明日仕事教えるから、金曜日に来てやってみて。』
『わかりました。』
先輩がこっちを向いて『じゃあ、今日のメニューは…。』と説明してくれる。
うんうん、前やってた通りにやれば問題ないよね。
それから90分間ずっと働きっぱなしだった。確かにこれは教えている時間なんて無いわ…。
「マネージャー、ドリンクは?」
『か、かごに準備してあります!』
「マネージャー、突き指したー。」
『じゃあこっちに来てください。』
「マネージャー!」
おおおお、結構頼られるもんなんだな。
前はこんなに頼られなかったから、なんだかやりがいがあるなぁ。
マネージャーの仕事は大変だったけど、中学の頃に比べればこれくらいどうってこと無かった。
そのあとも順調に仕事をこなしていた。
「マネージャーさんっ。」
『は、はい。どうしましたか?』
後ろから声をかけられたので振り向くと、思ったよりもすぐ目の前に、ミルクティーカラーの髪の毛ときれいな顔があった。
あぁ、一ノ瀬先輩だ。
話しやすいように、わざわざかがんでくれている。
…本人は気づいてないかもだけど、ち、近いっ!
『ええええっと、あの…。』
緊張して舌を噛んでしまった。痛い…。
笑いながらかがんだ姿勢から、もとの体制に戻す先輩。
結構背高いな…。蓮より大きい?かも。
『は、はい。これです!』
「ありがと。」
練習メニューが書いてある紙を渡す。
…そういうの確認する人もいるんだ。まめな人なんだなぁ。
「……そろそろタイマー準備するといいよ。」
上の方からボソッと声が聞こえた。
『え?』
見上げると先輩と目が合う。
「……あ、気にしないで。ただの独り言だから。」
そう言い残したあとは、何もなかったかのように練習に戻っていく。
…確かにそろそろ準備してもいいタイミングだ。
もしかして、教えてくれたのかな…?
『これ、先に動かさないとだよね…。よいっしょっ。うわぁ、重い。』
タイマーの前にある卓球台をどかそうとする。全然動かない…。
すると、卓球台に引っ掛かっていたひもが引っ張られて、棚の上にあったバドミントンのネットが入っている箱が落ちてきた。
やばい、間に合わない…!
とっさに顔の前に腕を出して、ぎゅっと目をつむった。
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