バレー部見学
家に帰って夜ご飯を食べていると、あのイケメン?の蓮お兄さんが話しかけてきた。
「おい、明日、ちゃんと見に来いよ!感想聞くからな。」
『はいはい。みんなで行くから。』
ニヤニヤしながら見てくる蓮に軽く返事をした。なんなのこいつ、自分がイケメンって言われてるからって。
もうっ!なんかうざい。
次の日、みんなで体育館に向かうと入り口に人が溢れていた。しかもそれは、ほぼ女子生徒だった。
え、まさかこれみんなバレー部見に来た人なのかな……?いや入れないじゃん…。
ちがう方の扉から入るとサーブ練習をしている2年生と思われる人たちがいた。
うわ、結構人数いるんだな…。
そんな中でも一際目を引く人物が。
『あ、あの人だよ!あのミルクティーカラーの人!』
んんー、向こう向いてて顔がよくわからない…。
視線を感じてこっちを見ると、兄と目があった。そしてなぜかニヤニヤしている。
うわ、絶対なんか企んでるじゃん。マネージャーの人とはなんかこそこそ話してるし…。
「集合ー!次、スパイクの練習します。」
マネージャーの人が指示する。
部員が1列に並ぶ。
あらあら。うちの兄はちゃっかり1番前にいるようだ。あ、後ろにいるのは、確か…一ノ瀬?先輩だ。
先輩が不意にこちらを向く。
白い肌、くっきりとした二重、高い鼻、ふわっと揺れる髪。
うっっわ、すっごくかっこいい…。近くにこんな完璧すぎる人がいたなんて…。
そう思っているうちにアタック練習が始まる。
兄が、ボールを打つと女子たちの目がハートになる。
『キャーーー!』
…やはり兄の人気ぶりに関しては、いつになっても納得できないなぁ。
『やばい、鈴木先輩かっこいい!!』
…耳に響くなぁ。
てかさ、え??みんな、あれでいいの?精神年齢5才ですよ?
…でも前見たときよりも、レシーブもアタックもずっと上手くなってる。
フォームを変えた気がする。すごいうまい。
……うらやましいな。
『キャーーー!すごいぃ!』
隣で小木さんたちがキャーキャーさわいでいる。自分の兄があんなに騒がれてるなんて、なんとも複雑だな。
これは妹として喜んでもいいものだろうか…。
『次、一ノ瀬先輩だよ!』
もう1人のイケメンと呼ばれる人の方を見る。
さっきまでの談笑していた時の楽しそうな表情ではなく、ボールの軌道やチームメイトの動きに注意しながら、試合の時の真剣な表情になっている。
すごい…。集中力がちがう。
軽やかにステップを踏み、鳥のように高くジャンプする。
っ高い!
落ちてきたボールを完璧なフォームで反対側のコートに打つ。
バァァァンッ
『キャーーー!かっこいいぃぃ!』
『やばい、好き!』
『あー、確かにかっこいいわね。』
隣で雪ちゃんが冷静に言う。
『え。今の…。』
あの完璧なアタック、…見たことある。
『ねぇねぇ、どう?どう?かっこいいでしょ!?かっこいいよね!?』
興奮気味に渡辺さんが言ってくる。
私は『う、うん。』としか答えられなかった。
しばらく放心していた。
……なにあれ、もう一回みたい!
他の人たちも、もちろん上手かったが彼には及ばなかった。
彼が跳ぶ時、音が聞こえなくなる。
彼がアタックする瞬間、時が止まったみたいに、その姿が私の頭の中をループした。
彼がボールを打つ順番が来ると、自然と胸がドキドキする。
バレーを始めた頃みたいに…。
周りがキャーキャー言ってるのなんて全然気にならないぐらい、あの人に魅了させられていた。
こんなに感動したのは久しぶりだ。
『…やっぱ、私にはバレーしか無い…。』
30分ぐらい見てから体育館を出た。
そのあと他の部活を見に行ったが、全く情報が頭に入ってこなかった。
…いや、入る隙なんてどこにもなかったと言った方が適切かもしれない。
この日、ただただあの人のバレーをする時の光景だけが、ずっと脳内をループしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます