追放された狩人、お節介焼いてたら愛が重たい美少女たちに囲まれて大変なことになった。

「それじゃあ皆さん、お気を付けて!」

「採取依頼だからって油断しないように」

「もちろんです、レオさん!」


 一年後、俺は未だに開拓村に居た。

 というか、アルフォンスの命令で俺が開拓村の村長をしている。いや、開拓村ではなかった。今はモンベイルと名付けられた村の村長になったのだ。


 どうしてこんなことになってしまったのか。

 理由は多々ある。

 春になって臨時で村長を務めていたレイモンとソフィが、魔物狩りに勤しむあまり村長を辞めたいと言い出したり、村の冒険者が十分育ったからロンブリエールに帰ろうとしたら、村総出で出て行かないでくれと懇願されてしまったり。

 ……まあ色々あったのだ。


 村は随分と様変わりした。

 新しく建てられた教会に、やけに俺のことを崇拝するシスターが派遣されてきて、危うく新興宗教が誕生しそうになったり、初めて葡萄を収穫したりと、村としてイベントと続きな一年だった。


「あら、レオが村長? 良いじゃない、私は良いと思うわよ?」

「はいはいはーい、私も良いと思いまーす!」


 そんな中、気が付けばアルフォンスの任命書が俺の手に握られていたのだ。村長になるつもりなどなかった俺は任命書を突き返そうとしたのだが、あの爽やかイケメンはあろうことかアデライトとリディアを抱き込んでいた。


 信じられるか?

 四六時中、俺とパーティーを組んで開拓村周辺の魔物を討伐していたアデライトとリディアが……アルフォンスと取引していたなんて。


 後から問い詰めたら、二人ともすんなりと白状した。

 アデライトは安心して暮らせる土地と俺との関係の後押しを、リディアは毎年セリエール子爵家から定期的な金銭を受け取ることを条件に、俺の外堀を埋めてきたのだ。


 一年三人でパーティーを組んで、それこそ気の置けない良い関係を築きつつあった隙を突いた実に鮮やかな犯行だった。


「ねえ、レオ?」

「なんだよ、急にオシャレなんかして。今日はあの馬鹿子爵も来ないのに……」

「~~~~、フンッ!」


 レイモンたちを見送った俺の後ろから声をかけてきたのは、一応婚約者的な関係になったアデライトだった。村長に就任した半年後だっただろうか。俺はアデライトと将来を見据えたお付き合いをすることとなった。ついでにリディアともお付き合いすることになったのだが、これは今でも意味が分からない。


「痛っっ! おい、躊躇ちゆうちよなく人を蹴るな!」

「レオさんが悪いと、私は思いますよ~? ね、クロエちゃん?」

「は、はい……今のは師匠が酷いですよ!」


 ば、馬鹿な……俺の味方は何処へ。

 何とも言えない顔で俺を遠巻きに見るロベールやエリク、エミリアンへ助けを求めても、スッと目を逸らされてしまった。


「なん…………だと!?」

「自業自得、だよな。ミリシアン?」

「う、うん。僕たちはああなりたくはないねリーダー……」

「そうだぜ坊主ども。羨ましいように見えても、実は夜が――」


 うるさいうるさい。

 そんな事実はない! 『クロー』の男性陣に妙なことを吹き込もうとするロベールを睨みつけて、俺は旅装束を整えたクロエたちに向き直った。


「気を付けて。王都は本当に色々な人間がいるからな」

「「はいっ!」」


 ――というのも、今日は『クロー』が開拓村を離れる日なのだ。

 この一年、『クロー』は開拓村とロンブリエールを往復するような形で生活を続けていたのだが、夏に行われた昇格試験に挑戦して合格。晴れてCランク冒険者パーティーとなったのだ。


「俺たち、絶対にレオさんを超える冒険者になって帰ってきます!」

「ふっ、言ったな? そんな大口を叩いたからには、このモンベイルまで名が轟くほどの冒険者になると期待してるぞ。なに、四人なら大丈夫だ。何があっても、支え合っていけるさ」

「はい――はいっ! それじゃあ、行ってきます!!」


 そうしてエリクたちが乗った馬車が、ガラガラと動きだす。

 遠ざかるエリクたちに手を振っていると、何故か馬車からクロエが降りて村の方に走って来た。


「師匠ーっ!」

「クロエ?」

「一つ、言い忘れたことがありまして……!」


 何だ?

 クロエが耳打ちするように口に手を当てたので、顔を近付けると……目の前に真っ赤に染まったクロエの顔が広がっていた。


「――――!?」

「師匠、私、絶対師匠に相応しい女性になって帰って来ますから、それまでお嫁さんの枠を一つ空けておいてくださいね?」

「…………!?」


 クロエは蠱惑こわく的にぺろりと唇を舐めると、そのまま身をひるがえして走り去って行った。

 ……今、キスされた???


 頭の中を疑問符が埋め尽くす。

 後ろでロベールがやんややんやとはやし立ているが、そんなことが気にならないくらいの衝撃が俺を襲う。


「レオ、いつまでボーっとしてるのよ」

「そうですよ、クロエちゃんが帰ってきた時にガッカリさせないよう、村をもっと大きくしないとですよ~」


 しばらく放心状態で固まっていると、後ろから声をかけられた。

 少し不満げな顔をしたアデライトと実に愉快といった表情のリディアだ。

 俺とクロエがキスしていた場面も、ばっちりと目撃されてしまっていることから、殴られることも覚悟していたのだがいつまで経っても怒られる気配はない。


「怒らないのか……?」

「何よ、怒って欲しいの?」

「いやいやいや! そういう訳じゃない!」


 ぶんぶんと首を振ると、アデライトは腕を組んで呆れたように言う。


「フンっ! 私たちより先にレオのことが好きだったあの子のことは、さすがに起これないわよ」

「えっ……」

「レオ……アンタもしかして知らなかったの!?」


 は、初耳だ。

 クロエが俺のことを好きだった……? 俺の表情から色々と察するものがあったのか、アデライトは深々とため息を吐くとギロリと俺をにらみつけてきた。


「あんな露骨にアピールしてきてたのに気付かないとか。はぁ……どうしてやろうかしら、この男。これじゃあ、あのシスターのことも気付いてなさそうよ?」

「うーん。魔物の討伐が終わった後、じっくりと体に教えてあげれば良いと思います!」

「うげっ……勘弁してくれよ」


 まあそんなこんなで、王都を追放された狩人は、お節介を焼いてたら愛が重い美少女たちに囲まれて大変なことになりましたとさ。


〈完〉


~~~~~~~~~~~~~~

 あとがき


 ここまで本作をお読みいただき、ありがとうございました!

 スローライフは終わりどころが難しい……ということで、クロエたちの旅立ちを機に、一旦物語を完結とさせていただこうと思います。


 この後は『クロー』が王都で大立ち回りをしたり、モンベイルでレオの現代知識がさく裂したり、色々と考えることはありますがそれはそれ。


 よければ作者のフォロー、作品の☆や♡、応援コメントなどで応援していただけると幸いです。

 これからもコツコツと小説を書きますので、よければ次作にもご期待ください。一か月と少々、お付き合いいただきましてありがとうございました!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追放された狩人、お節介焼いてたら愛が重たい美少女たちに囲まれて大変なことになった。 さこここ @sakokoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画