第22話
「それより、しょうりの えんかいを ひらこう。フローラ、そなたは このくにを すくった かみとして えいえんに たみに すうはいされるよう、すいしょうの やしろを あたえよう。ハンス、そなたには、さいしょに やくそくしたとおり、わしの ひとりむすめの クリアひめの むことして むかえる。そなたは しょうらいの セイオーンおうとなる」
クリアひめは ちちおうの よこに あらわれた。
その しろい ほほは あからみ、ハンスを うっとりと みつめている。
「ハンスさま、これからは わたくしとともに この せかいを まもりましょう」
「クリアひめ…」
うつくしい クリアひめの ほほえみに、ハンスのあしは とまった。
しかし、ハンスは つよい いしをもって そのさそいを ことわった。
「おうさま、クリアひめ、わたしは もうここには いられません。このせかいの ほんとうの しあわせを みつけにいかなくては なりませんから」
「なんと!ハンスよ!せっかくの きかいを むにすると いうのか!おろかな!」
おうは めをむいて わめきたてた。
すると、フローラも にっこりと わらって ハンスの てをとった。
「あたしも いくわ、おうさま。やしろにいて たみの いのりを きく まいにちなんて つまらないもの。それよりも ハンスと いっしょに いきたいの」
「フローラ…」
「ハンス、あたし、あなたのこと ほんとうに きにいったわ。あなたは しんの きゅうせいしゅに なれるかもしれない」
「ふたりとも たちされ!もう かおも みたくない!」
セイオーンおうは おこって、ふたりを しろのそとに おいやった。
しかし、ふたりは はれやかな かおを していた。
「さあ、いこう、フローラ」
「ええ、ハンス。あっ…」
そのとき、フローラの むねから おちたのは ちいさな くろいもの。
「これは なに?」
ハンスは それらを ひろった。
「ああ、それは ひかりの はなの たねよ。しかも ふたつも あるわ」
「ふたつの たね…」
ハンスは てのひらにのせた ふたつの くろい てんを みつめた。
「このせかいに かけているもの、か…」
ハンスとフローラの みちのりは なおも とおく、はてしない――。
(おわり)
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