第4話
ようやく国際会議場の中に入ると、3人の若者が佐知に声をかけてきた。
「あ、ナーニャちゃん、こっちこっち~♪」
「なんとか間に合ったなぁ。心配したぞ、ナーニャ」
な、なーにゃあああ?
俺が目を白黒させていると、佐知はおかまいなしで彼らと談笑し始めた。
「トリアーデちゃん、剣之介くん、メイフェアさん、ごめんごめん~!だってぇ~、ゆりかもめ混み混みなんだもん。やっぱ日の出から船のほうがよかったのかな?」
「うん、でも船着場からどうせ混むから一緒だったかもね。あら?もしかして、そちらの方が…」
メイフェアと呼ばれた少女が俺のほうを向く。すると佐知は、俺を仲間のほうにずいと押しやった。
「そうなの♪うちのお父さん。ね、ね?似てるでしょ?」
佐知の仲間達は「あ、ども」と軽く顎で挨拶し、それからジロジロと俺を頭の先から足の先まで眺め回した。俺はなにがなにやらわからず、彼らの非礼を咎めることも忘れて、居心地悪く突っ立っているしかなかった。そして、やがて彼らは、
「きゃー!すっげ、クリソツ!」
「ゲオルグ大佐だよ、本物のゲオルグ大佐だー!」
「“お前も豆大福にしてやろうか"って言ってみてくださぁぁい!」
キャーキャーとはしゃぐ彼らを見ながら、俺はようやくカラカラに乾いた喉から声を出すことができた。
「…佐知、とりあえず状況を説明しろ」
相当の怒りを声に潜ませたつもりだったが、佐知はまるで意に介さない様子で、紙袋の中からゴソゴソと布切れの山を取り出していた。
「うん、後で説明するけど、とりあえず時間ないからこれに着替えてね♪」
そう言いながら俺のコートを勝手に脱がそうとする。
「おいっ、こらっ、何をする!って、な、なんだ、この革の胸当てみたいなのは!」
「んーっとね、それはゲオルグ大佐の鎧なの。そんでこっちが毛皮のズボンで、あれっ?狼の耳はどこにやったっけー?」
「あ、僕、着替え手伝いますよー!あ、股引は脱いでくださーい」
「剣之介くん、ありがと!それじゃ私達、女子更衣室のほうに行ってくるね~♪」
「ちょ、こら、お前、勝手に人の服を脱がすなって、おい!佐知!待て、とにかく説明しろ、説明ー!!!!」
***
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