第33話

口腔を蹂躙されるようなキスの後、ようやく離れた唇の間を、一筋の光が流れました。

先生の顔が、間近にありました。

先生の目は殺意さえ感じさせるほど鋭く、肉食獣のような低く荒い吐息が、静まりかえった診察室の壁に反響していました。

それは、私の知らない、雄(オス)でした。

これが…あの草馬先生なのでしょうか。

優しくて、上品で、少し頼りなくて、はにかんで笑う、あの草馬先生はどこへ行ってしまったのでしょうか?

(――いいえ、これも、草馬先生なのだわ)

誰も知らない草馬先生の一面。それを知っているのは、私だけ…。

(いいえ、おそらくは彼女も――)

優越感と嫉妬が、私の心を激しく掻き乱しました。こんな恥ずかしい姿を先生に見られているという羞恥心もあいまって、私の身体は燃えるように熱くなりました。

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