第23話

夕飯の後、私は蜜柑園の中をぶらぶらと歩いていた。

夜空には黄色い満月が輝いていた。樹々にたわわに実った蜜柑が、まるで月のかけらみたいだな、と思った。

(進路…かぁ…)

樹々の間の細い小路を歩きながら、私は深い溜息をついた。

自分が『大人』になるなんて、遠い未来のことだと思っていた。でもそれは、すぐ目の前に迫ってきているのだ。それなのに私は、まだ自分が何をしたいのか、どこへ行きたいのか、何も考えていなかった。

(尚輝くんと一緒に、都会に行く…)

それはとても甘美な響きだった。大好きな尚輝と手を繋いで、華やかな街を歩く自分…。

(…ううん…なんか想像できん…)

だけど、『都会に行く』ということはすなわち『この島を出る』ことを意味していた。

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