第4話

「ははっ、悪ィ。でもさ、あの頃マジで皆の言葉が判んなかったんだぜ俺。半年経ったから多少は聞き取れるようになったけどさ」

「そがぁに大袈裟に言わんでも…うち、あんまり方言しゃべっとらんじゃろう?」

「…丸出しじゃん」

尚輝はプッと噴き出した。尚輝の笑い声が、石造りの建物の中で響きわたった。

この古めかしい建物は、渡船乗り場とJRの駅の共用待合室だ。明治から昭和中期にかけて、この町は造船業と海運業で栄えていた。当時、この待合室は陸運と海運の中継地点としてとても賑わっていたらしい。

でも今では、1時間に2本の列車と1本の渡船の発着を待つだけの寂しい場所だ。

渡船で島に帰る私と、隣町へ列車で帰る尚輝とは、下校途中にここで喋るのが習慣になっていた。お喋りに夢中になって、乗る予定の列車や渡船を見送ったことも、何度かある。

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