気づいてよ
裏窓秋
第1話
「彼女に振られた」
「……そんなことで呼び出した訳?」
「……ごめん、でも来てくれてありがとよ。やっぱお前っていいやつだよな」
「そりゃあ、幼馴染から『死にたい』なんて送られてきたらこれくらいするわよ」
「……ほんと、お前って優しいやつだよな」
「あんたが優しくないだけよ。──それで?一体何をしたのよ」
「それがよく分かんないんだよ。家に帰ってラインを見たら、『もう別れたい』って送られてきててさ」
「……彼女と一緒に帰ったりはしなかったの?」
「いや、一回もしたことないけど? だってあいつと俺の家遠いし、お互い疲れるだけじゃん」
「……まじで言ってるならあんた、もう他の子と付き合わない方がいいよ」
「え⁉ なんで?」
「乙女心が分かってないのね。それじゃ振られるのも納得だわ。いい?女の子は好きな男と一緒に帰りたいものなのよ」
「えーなにそれ、めんどくさいなぁ」
「その調子だとまだあなたに欠点がありそうね。今まで彼女と行ったデートスポット、10個言ってみて」
「えーと、近所の公園、イオン、動物園、あと夢の国かな? そもそも10個も行ってないよ」
「お話にすらならないわ。場所選びのセンスがないだけじゃなくデートにもロクに行かないなんて。むしろそれで良く2年も続いたわね。よっぽど彼女に愛されていたのね」
「なんでだよ! 大体、高校生のデートなんて普通学校の近所だろ。寧ろ夢の国に行っただけまだましじゃないのか⁉」
「ほんっとに分かってないわねぇ。大体公園なんて行って何すんのよ。暇でしょそんなの」
「そりゃあお前、こうやってブランコに並んで座って、月が明るくなるくらいまで話し合うんだよ」
「──あなたにしては、いいセンスしてるじゃない」
「だろー! そう言って貰えてうれしいぜ」
「──なあ」
「何よ」
「こんな日だけどさ、今日も月がきれいだよな」
「今なら手が届くかもしれないわよ」
「なんだそれ、お前って案外ロマンチストだよなー」
「うるさいわね」
「──ねえ」
「なんだよ」
「いつまでここにいるつもりなのよ」
「──ああ、もうこんな時間か。お前といると時間があっという間に過ぎちゃうな」
「案外あっちの相性も良かったりしてね」
「おいおい、女子がそんなこと言うんじゃねえよ」
「──良かった。まだ私のこと、女の子だと思ってるのね」
「──なんだよ急に、お前今日おかしいぞ」
「なんでもないわよ。さあ、もうそろそろご飯なんじゃない?」
「だから、一緒に、帰りましょ」
気づいてよ 裏窓秋 @BanSoTan
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