ジョブなし魔力なし男は生贄にされ、正義の邪神になってざまぁする。クズな敵はもれなく地獄行きだ。
喰寝丸太
第1章 覚醒編
第1話 異世界転生
俺はダーク、異世界転生者。
日本で暮らしていて病気で死んだ。
なぜか異世界に転生。
生まれた家は普通の平民。
貴族もいるような階級社会だが、平民も悪くはない。
気が楽だし跡目争いもないからな。
実は悩みがある。
「【情報】」
ステータスを出してみる。
――――――――――――――――――――――――
名前:ダーク
職業:なし レベル:0
魔力:0
技能:
なし
――――――――――――――――――――――――
ごらんの通り異世界では誰もが持っている魔力を俺は持ってない。
この世界、覚醒という現象がある。
大体10歳ぐらいに、職業が芽生えて、スキルである技能を授かるのだ。
技能は日本の一般人ではおよそ不可能な奇跡のようなことができる。
技能の有用性は多岐にわたる。
戦闘や医療、製造まで。
異世界の文明レベルは日本に負けてない。
ただその根幹が魔力なのだ。
魔道具や技能を使うのも、魔力が要る。
魔力を持ってない俺はハンデを背負っているという感じだ。
そして10歳前後で覚醒するはずが、15歳になった今でも覚醒の兆しがない。
原因は恐らく異世界転生者だからだろう。
魂の部分で魔力を受け付けないに違いない。
魔力がないせいで、たぶん覚醒もない。
俺にできるのは勉強だけだ。
転生者として子供の頃から大人の頭脳だからな。
まあ天才には敵わないが秀才ぐらいにはなれる。
エリート校と言われている出世間違いなしの聖技能学園の試験にトップで合格した。
入学試験の科目に技能の実技がなくて良かった。
学園を卒業して家庭教師になるのが今の夢。
実家である田舎町を出て、学園がある王都にやってきた。
入学試験で一回来ているから驚きはない。
それに学校は前世と同じような雰囲気だ。
「ダーク、あなたも合格したのね。おめでとう」
話し掛けてきたのは俺と同い年のセンティアだ。
故郷の町で同じ塾だった。
彼女は塾一番の美人だった。
いいや町一番だったかもな。
美人の同郷の女の子がいて嬉しい。
「センティアもおめでとう」
「じゃあまたね。美味しい店とか見つけたら教えて」
「ああ、友達ができたらみんなで行こう」
「ええ」
さあ、事務局に行こう。
敷地が広いから迷いそうだが、案内板が至る所にあるのでなんとか辿り着けた。
「今年から入学するダークです」
「ダーク君ね。書類に記入お願い」
書類に名前と受験番号を書く。
職業と技能の欄がある。
未覚醒と記入。
身分は平民と。
「できました」
「あら、この歳で未覚醒は珍しいわね」
「よく言われます」
「平民だと、二人部屋になるけど良い?」
「ええ構いません」
魔道具の腕輪を貰って、寮の建物の名前と部屋番号を教えて貰った。
柊の203号室ね。
あった、ここだ。
203号室の扉をノックする。
「開いてるよ」
扉を開けて中に入ると、少しぽっちゃりした角刈りの男がいた。
「はじめまして、同室になるダークだ。よろしく」
「チャビーだよ。よろしく。優しそうな奴で良かったよ。嫌な奴だったらこれから地獄だ」
「そうだよな。俺もほっとしたよ」
「2段ベッドの上を使うけど良い」
「俺は構わない」
チャビーは上を使いたいなんてお子様だな。
俺は別にどちらでも良い。
「俺の職業は魔道具師だけど、ダークは何?」
「未覚醒なんだ」
「そうなの。大物になる予感。普通と違うのはだいたい英雄になるんだぜ。あとで色紙にサインをくれよ」
「サインぐらいならいつでもしてやるさ」
チャビーは優しい奴だな。
未覚醒なのを憐れみや蔑んだ目で見てない。
大物になれるかどうかは分からないが、頑張るつもりだ。
荷物を整理してから、説明会に出る。
ここで、授業の説明と色々な学園について説明してくれる。
説明会はまだ始まってない。
もっとも授業開始までの1週間の間に何回もやってくれるから、時間の都合のいい日に出れば良い。
適当な位置にチャビーと座ると、センティアが見えた。
センティアもこちらに気づいたようだ。
友達を連れてこっちにやってくる。
そして俺の隣の席に座った。
チャビーが脇腹を突く。
何だよ。
「隣、物凄くゴージャスエンジェル可愛いな。声掛けろよ」
小声でチャビーが言った。
ゴージャスエンジェル可愛いって誉め言葉なんだろうな。
「声掛けるも何も同郷の知り合いだ」
「お前、やっぱり英雄だな。後で紹介してくれよ。絶対だぞ」
「ああ」
そして、何となくこいつ嫌だなと思われるニヤついた奴が取り巻きわぞろぞろ連れてこっちに来る。
「綺麗なお嬢さんお名前は?」
ニヤついた奴がセンティアの前に立って聞く。
「名前を聞くなら名乗るのが礼儀でしょ」
「これは失礼を。ブルタス公爵家のクーエルです。そんな奴らと一緒にいないで俺と来いよ」
そう言うとクーエルはセンティアの手を掴んだ。
「やめて!」
「嫌がっているじゃないかやめろ」
俺は口を出して、クーエルの腕を掴んだ。
「そうだ、そうだ」
チャビーも行動を非難した。
「そうよ」
センティアの友達も同様だ。
「平民が粋がるなよ。お前、誰だ?」
「ダークだ」
「こいつ入試トップの奴ですぜ」
取り巻きが囁く。
「ああ、こいつが。使えない最低職よりさらに悪い無職か。無職のくせにトップを取りやがって」
こいつは職業差別主義者だ。
虫酸が走る。
いいじゃないかどんな職業だってと俺は思う。
社会を支えてる一員には違いないのだから、そこに貴賤はないと思う。
クーエルは俺の腕を払い、セインティアの手を離すと俺の胸倉を掴んだ。
「何する?!」
「腕を掴みやがって、お仕置きだ」
そう言うとクーエルは俺を殴り始めた。
胸倉の手を解きたいが万力のように固定されている。
たぶん身体強化の技能を使っている。
卑怯だぞ。
「ぐっ! ぐがっ!」
殴られて意識が遠ざかる。
そして持ち上げられ床に叩きつけられた。
おぼろげにポーチを探られる感覚がある。
「お前らこの金を好きに使え」
「よっ、クーエルさん太っ腹」
セインティアに介抱されて気がついた。
「いてて! ……ない! これからの生活費がない!」
ポーチを探ったら財布がない。
床を見ると空の財布が落ちていた。
くそっカツアゲしやがって貴族のくせに。
金なら一杯持っているだろうが。
貧乏人から巻き上げやがって。
「少しだけなら貸してあげる」
「俺も出すよ」
「ありがとう、すぐに返す」
クーエルのことを学校側に訴えたい。
――――――――――――――――――――――――
あとがき
この作品は地球サイドと並行してます。
地球サイドはかなり趣向を変えているので、よろしければどうぞ。
では、地球サイドでお会いしましょう。
地球サイドのリンク
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