『創造』の旅立ち
私は『創造』の『秩序』を守る神である。『神』のやることはいたって簡単だ、それは生きること。
生きていれば秩序は保たれる。そう、私自身が秩序を内包している『器』といったほうが正しいか。
ならば生きるためには何が必要か? 人類みたいに食べること? 呼吸という生命活動をして体の組織と酸素を結合させること?
否、どれも必要ない、『神』はそこに存在していさえすればいい。
生命体からの信仰又は、遍く世界に存在する万物がある一つの事象や現象として確立していればいい。
私は『創造』、この『世界』において確固たる現象として確立している神だ。『世界』のすべてが虚無に還るまで私は存在しているだろう。当然、下位神と違って人類如きが殺す事は叶わない。
よって私は悠久の時を生きる。問題点があると言えばただ暇。そう、暇なのだ。
『創造』である私はすべての存在の『原初』に位置する。私はこの『世界』の情報をいつでも引き出すことができる。
人間の『想起』から産まれた『神』は産まれることにより、『秩序』から自我が芽生える。迷惑なものだ、壊せない【物】は何者にとっても邪魔でしかない。それはその【物】である私だってそうだ。
……
「よう、『創造』」
「……何か用かしら? 『破壊』」
この生命の存在のない世界の外で私に話しかけるこの子は『破壊』、文字通りの破壊神だ。神同士は『秩序』の名前で呼ぶのが一般的だ。
「いや、どうせまた退屈してるんだろーなーって思ってさ」
「……確かに退屈ね、どうも人類は『創造』よりあなたの『破壊』による破滅のほうが好きなようだし」
「いやいや~、それは人類をちゃんと見てなさすぎだっての、世界巡りでもしてみたら?」
この子は世界を数万年見に行ってから随分と変わった、昔はこんなにヘラヘラしてはいなかったというのに……
「まぁ、貴方も私と同じ『世界』が虚無に還るまで生き続けるものね、私も人類を見るのもいいかもしれないわ」
「いい世界でも紹介してやろうか?」
「必要ないわ、自分のやることくらいは自分で決めるわ」
「そっけないな~」
「貴方は確かに変わったわ、昔に比べたら」
「昔の話を出さないでくれるかな~、恥ずかしくなるから」
「ま、貴方の話だと退屈しなそうだし、行ってくるわ」
……私は『破壊』が羨ましかったのだろう、退屈しのぎを見つけたあの子に真似をしたなんて思われたくなかったプライドが邪魔をしていたが提案をされたなら別だ。
「そうだね~、いってらっしゃい♪」
「貴方は随分と気楽になったわね……なら私は……」
「なんか言ったか?」
「戯言よ」
「きっぱり言うね~」
……そう、私も新しい何かを見つける事ができるかもしれない。『世界』の全てを知ることのできる存在だというのに……ね……
世界に降りれば『創造』は何かを生み出す、それは『秩序』、自らの力で知らぬ物を作り上げても良いかもしれない……
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