第7話
アリス、エレナ、そしてグラムは、光の道を進み続けていた。彼らの
心には、先ほどの試練を乗り越えた安堵感が広がっていたが、同時に
新たな試練への不安も抱えていた。道の先に待ち受けるものが何であ
れ、彼らは共に立ち向かう覚悟を決めていた。
しばらく進むと、彼らの目の前に美しい湖が広がっていた。湖の水面
は、まるで鏡のように静かで、周囲の景色を完璧に映し出していた。
青い空、緑の木々、そして彼ら自身の姿が、湖面に映っていた。しか
し、その美しさの中には、どこか不穏な気配が漂っていた。
「この湖、何か特別な意味があるのかしら?」エレナが言った。彼女の
目は湖面に映る自分の姿を見つめていたが、その表情には不安が浮か
んでいた。
「多分、俺たちの過去を見せるためのものだろうな」とグラムが答え
た。彼の声には、少しの緊張感が混じっていた。
「過去の選択が、ここ
に映し出されるのかもしれない。」
アリスは湖の水面をじっと見つめた。すると、彼女の心の奥に秘めた
過去の記憶が浮かび上がってきた。仲間を守れなかったあの日のこ
と。彼女はその瞬間、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
「私…あの時、もっと強ければ…」アリスは呟いた。彼女の目には涙が
浮かんでいた。
「アリス、大丈夫だよ。今は仲間がいるんだから」とグラムが優しく言
った。彼は彼女の肩に手を置き、力強い眼差しを向けた。
「俺たちと一
緒にいることで、君はもう一人じゃない。」
エレナは、湖の水面に映る自分の姿を見つめながら、かつての敵国の
王女としての自分を思い出していた。
「私も、過去の選択に苦しんでい
る。裏切り者としての自分を受け入れられない…」彼女の声は震えていた。
「エレナ、あなたはもう過去の自分ではないわ。今のあなたは、私たち
の仲間で、共に戦っているのよ」とアリスが励ました。
その言葉に、エレナは少し微笑んだが、心の中の葛藤は消えなかっ
た。彼女は、仲間を信じることができるのか、自分自身を許すことが
できるのか、悩んでいた。
「過去は、私たちの一部である。しかし、それが私たちの未来を決める
わけではない」とザルバの声が響いた。彼は湖のほとりに現れ、彼ら
を見守っていた。
「湖の水は、あなたたちの心の鏡である。真実を受け
入れることで、次の試練に立ち向かう力を得ることができるのだ。」
「真実を受け入れる…それはどういうことだ?」グラムが尋ねた。
「それは、自分自身と向き合うことだ。過去の選択、失敗、恐れを直視
し、それを受け入れることで、あなたたちは新たな力を得ることがで
きる」とザルバは答えた。
アリスは湖の水面を再び見つめた。すると、彼女の目の前に、かつて
守れなかった仲間たちの姿が浮かび上がった。彼らの笑顔、そして
涙。彼女はその光景を見て、心の中に深い痛みが走った。
「ごめんなさい…私がもっと強ければ、あなたたちを守れたのに…」ア
リスは涙を流しながら呟いた。
「アリス、過去は変えられない。でも、今のあなたがいることで、未来
は変わるのよ」とエレナが言った。彼女はアリスの手を握り、力強く
見つめた。
「私たちは、今ここにいる。共にいることで、未来を切り開
くことができるの。」
その言葉に、アリスは少しずつ心の中の葛藤が和らいでいくのを感じ
た。彼女は仲間たちの存在を思い出し、彼らを守るために戦う決意を
新たにした。
一方、グラムは湖の水面に映る孤独な獅子の姿を見つめていた。彼は
その姿を見て、自分がどれほど孤独を感じていたのかを思い知らされ
た。
「俺は一人じゃない…仲間がいるんだ」と心の中で繰り返した。
「孤独を感じることは、決して悪いことではない。しかし、その孤独を
乗り越えるためには、仲間の力を信じることが必要だ」とザルバが言
った。
グラムは仲間たちの声を思い出した。彼らの笑い声、励ましの言葉。
彼はその思いを胸に、湖の水面に映る自分を見つめ直した。
「俺は、仲
間と共にいることで強くなれるんだ!」
「その通りだ、グラム。あなたの強さは、仲間との絆から生まれるの
だ」とザルバが微笑んだ。
エレナは、湖の水面に映る過去の自分を見つめ、心の中で葛藤してい
た。
「私は裏切り者ではない。今の私は、仲間と共にいる…」彼女はそ
の言葉を繰り返し、心の中の真実を受け入れようとした。
「過去の選択は、私たちの一部である。しかし、それが私たちの未来を
決めるわけではない。私たちは、今ここにいることで、未来を切り開
くことができるのだ」とエレナは自分に言い聞かせた。
湖の水面が揺れ、彼らの心の中の葛藤が映し出されていた。しかし、
その揺れは次第に静まり、彼らの心の中に新たな力が宿っていくのを
感じた。
「私たちは、真実を受け入れた。これからの試練に立ち向かう準備ができたわ」とアリスが言った。
「そうですね。私たちの絆が、どんな試練でも乗り越えさせてくれる」
とエレナが続けた。
「俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ!」グラムが力強く叫んだ。
彼らは互いに見つめ合い、心の中に温かい感情が広がった。湖の水面
は、彼らの決意を映し出し、次の試練に向けて進む力を与えてくれた。
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