第十六章 人を超えし力、合気の極み

風を操る力を手に入れた桐人。その力は絶大だったが、彼は常に更なる高みを目指していた。風を操る力は外的な力、すなわち環境を利用する力である。桐人は、自身の内なる力、すなわち肉体そのものの潜在能力を最大限に引き出すことを模索し始めた。


彼は再び、合気道の奥義に立ち返った。合気道は、相手の力を利用し、最小限の力で最大限の効果を発揮する武術。桐人は、この合気道の原理を応用し、自身の潜在能力、特に筋力と身体能力を極限まで引き出す方法を研究し始めた。


彼は、古の武術書を読み解き、人体に存在する経絡やツボ、気の流れについて深く学んだ。そして、瞑想と呼吸法を組み合わせることで、体内の気をコントロールし、肉体の潜在能力を解放する方法を編み出した。


ある日、桐人は侠和会の訓練場で、豪田と手合わせをしていた。豪田は、桐人の強さを知っていたが、それでも全力で挑んできた。


豪田が、渾身の力を込めて桐人に組み付いた。通常であれば、桐人は風の力を使って豪田を吹き飛ばすところだが、今回は違った。彼は、深く呼吸をし、体内の気を意識した。


すると、桐人の体に、今まで感じたことのない力がみなぎってきた。筋肉が膨張し、血管が浮き上がり、体全体が熱を帯びていく。それは、まるで体の中に巨大なエンジンが搭載されたかのような感覚だった。


豪田は、桐人の変化に驚愕した。桐人の体から発せられる圧倒的な圧力に、息苦しさすら感じた。


桐人は、組み付いてきた豪田の腕を掴んだ。そして、合気道の技を繰り出した。しかし、今回は、豪田の力を利用するのではなく、自身の増幅された力で豪田を投げ飛ばした。


豪田は、まるで子供のように軽々と投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた。彼は、何が起こったのか理解できず、呆然と立ち尽くしていた。


「桐人…一体何をしたんだ…?」


豪田は、驚きを隠せない様子で尋ねた。


「合気道の応用です。体内の気をコントロールし、肉体の潜在能力を引き出しました」


桐人は、静かに答えた。


その後、桐人は、自身の力をコントロールするための訓練を続けた。彼は、気を集中させることで、必要な時に必要なだけの力を発揮できるようになっていった。


ある日、桐人と研斗は、街で不良グループに絡まれている女性を見かけた。不良たちは、女性を囲み、金銭を要求していた。


桐人は、女性を助けるため、不良たちの前に進み出た。


「その女性から手を引け」


桐人は、低い声で言った。


不良たちは、桐人を睨みつけ、嘲笑を浮かべた。


「なんだ、お前。邪魔をするなら、ただじゃおかねえぞ」


不良の一人が、鉄パイプを振り上げながら言った。


不良たちは、一斉に桐人に襲いかかってきた。桐人は、深く呼吸をし、体内の気を集中させた。すると、彼の体に、再びあの力がみなぎってきた。


不良たちが振り下ろす鉄パイプを、桐人は素手で受け止めた。通常であれば、骨が砕けてもおかしくない衝撃だが、桐人の手は、びくともしなかった。


そして、桐人は、受け止めた鉄パイプを握りしめ、力を込めた。すると、鉄パイプは、まるで紙のようにぐにゃりと曲がってしまった。そのしてその鉄パイプを桐人は捻ることによって引きちぎった。


不良たちは、信じられない光景に、言葉を失った。彼らは、恐怖に慄き、逃げ出そうとした。


桐人は、逃げようとする不良たちを、指一本触れることなく、風圧だけで吹き飛ばした。そして、最後に残ったリーダー格の不良を掴み上げ、壁に押し付けた。


リーダーは、恐怖で顔面蒼白になっていた。桐人の握力はとても強く手を首がら外そうとしたがびくともせず、したがいに骨が軋む音がし、男は息が苦しくなってきた。


「二度と、この女性に近づくな」


桐人は、冷たい声で言い放った。


リーダーは、必死に頷いた。


桐人は、リーダーを解放し、その場を後にした。


この一件を通して、桐人は、合気道によって自身の力を増幅させ、怪力を持つことができるようになったことを確信した。彼は、内なる力と外的な力を組み合わせることで、更なる高みへと到達したのだ。


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