第四章 銃弾と合気道

侠和会と敵対組織の抗争は激化の一途を辿っていた。桐人は、侠和会の幹部たちと共に、敵の動きを探っていた。敵は、最新の武器を密輸し、組織力を増強しているという情報が入ってきた。


ある夜、桐人と研斗は、敵の武器取引現場を突き止めるため、港の倉庫街に潜入していた。辺りは暗く、潮の香りと機械の油の匂いが混ざり合っていた。


「桐人、敵が来たぞ」


研斗が小声で言った。前方から、黒塗りのバンが数台、倉庫に近づいてくるのが見えた。中から、武装した男たちが降りてきた。彼らは、手に自動小銃や拳銃を握っていた。


「研斗、ここは一旦引く。敵は銃を持っている。無理に戦うのは危険だ」


桐人は冷静に判断し、研斗と共に物陰に身を隠した。しかし、敵はすぐに二人の存在に気づいた。


「見つけたぞ!撃て!」


銃声が夜の静寂を切り裂いた。銃弾が倉庫の壁や地面に命中し、火花が散った。桐人と研斗は、間一髪で銃弾を避けた。


「くそっ、囲まれたか!」


桐人は舌打ちをした。敵は四方から迫ってきており、逃げ場はなかった。しかし、桐人の目は冷静さを失っていなかった。彼は、研斗に目配せをし、同時に物陰から飛び出した。


「研斗、俺に続け!」


桐人は、敵に向かって走り出した。敵は、桐人に向かって銃を乱射した。しかし、桐人は驚異的な身のこなしで銃弾をかわしていく。彼は、合気道の体捌きを応用し、敵の攻撃を最小限に抑えながら、敵との距離を詰めていった。


敵の一人が、桐人に向かって拳銃を構えた。桐人は、相手の腕を掴み、合気道の四方投げの体勢に入った。彼は、相手の力を利用し、遠心力を使って相手を投げ飛ばした。敵は、勢いよく地面に叩きつけられ、意識を失った。


別の敵が、自動小銃を乱射しながら迫ってきた。桐人は、相手の攻撃を入身投げでかわし、相手の背後に回り込んだ。そして、相手の首を掴み、地面に押し倒した。そして首に手刀をうち気絶させた。


研斗も、桐人に教わった合気道を駆使して戦っていた。彼は、敵の攻撃を回転投げでかわし、相手を地面に転がした。また、小手返しで相手の手首を極め、武器を奪い取った。


敵は、桐人と研斗の合気道の前に、次々と倒れていった。銃を持っていながらも、近接戦闘では全く歯が立たなかった。


しかし、敵の数は多かった。桐人と研斗は、徐々に追い詰められていった。その時、援軍が駆けつけた。侠和会の組員たちが、倉庫に突入してきたのだ。


「組長!援護します!」


組員たちは、敵に向かって発砲し、桐人と研斗を援護した。形勢は逆転し、敵は撤退を始めた。


激しい銃撃戦の末、敵は完全に撤退した。桐人と研斗は、息を切らせながら、互いの無事を確認した。


「研斗、怪我はないか?」


「ああ、大丈夫だ。桐人こそ」


「俺も大丈夫だ」


二人は、互いに微笑み合った。今回の戦いで、合気道の有効性を改めて認識した。銃を持った相手にも、近接戦闘では十分に戦えることを証明したのだ。

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