第4話 富山雫の告白


「どこで油売っていたの。もー」

「すまん...ソースは買ってきたから」

「うん。...言っていた時間より遅くなったら心配するんだから」

「そうだな。...それは言える」


俺は反省の気持ちを抱きながら雫に買ってきてほしいと言われたソースを手渡す。

それから雫は俺を見てから「ありがと」と言う。

俺は室内に入る。

雫はリビングを通ってキッチンに向かった。


「今日の夕食は焼きそばだよ」

「ああ。それでソースが必要だったんだな」

「それもあるけどなんか別のも作ろうって思って」

「成程な」


それから俺はネクタイを外しながらリビングにある椅子に腰掛ける。

そして天井に向かって息を吐いた。

で。

先程の事を思い出して俺は赤面する。

く、クソ。喜連の奴。

外であんなの。


「お兄」

「ふぁ!?な、何だ」

「何って。シャツとか脱いで。洗濯する」

「お、おう。そうか」

「?...どうしたの?」

「な、何でもない」


俺は直ぐに上半身のシャツを脱いだり。

ハンカチを手渡したりする。

雫はそれを回収してからそのまま洗濯をしに行った。

俺は心臓をバクバク鳴らしながら「クソ」と呟く。


「...」


そう無言で考えているとスマホが鳴った。

それは...喜連だった。

俺はスマホに出る。

すると喜連が「こんにちは」と声を発してくる。

俺はその事にまだ収まってない感情を抱きながら...ギリギリで「何だ」と返事をしてみる。

喜連は「先程はありがとうございました」と言ってくる。

先程?


「...さっきのエッチな事の件、ですよ」

「おま!」

「でも考えて下さい。美少女が貴方を襲っています。これで何で逃げる必要性が?」

「...そういう問題じゃない。俺達がそれをするには早すぎるという話だ」

「結婚もしてないのにって話ですか?」

「そうだ。幾らなんでも」


「優さんは根性が無いですね」と嘲笑うかの様に言ってくる喜連。

俺は赤面しながら頬を掻く。

それから「揶揄うな」と話した。

すると喜連は「私は揶揄ってないです。可愛いって言っています」と表現した。


「...お前な...」

「えへへ。大好きですよ?優さん」

「...」


俺は額に手を添えてから溜息を吐く。

それから上着を着てから「とにかく」と言う。

そして「俺はお前の手には乗らない」と言葉を発した。

喜連は首を振るかの様に言葉を放つ。


「私は諦めません」

「諦めませんとかそういう次元の話じゃないぞ」

「私は貴方が好きですからね」

「話聞いてる?」


そう会話していると雫が戻って来た。

それから「?...誰と話しているの?」と聞いてくる。

俺は「ああ。喜連だ」と答えながら雫を見る。

雫は「ふーん」と言いながらキッチンに向かった。


「とにかく。雫が戻って来たから」

「えへへ」

「...えへへ、じゃない。切るぞ」


そして俺はスマホを切った。

それから盛大に溜息を吐いていると「ねえ。お兄」と雫が聞いてくる。

俺は「ああ。どうした。すまん」と顔を上げる。

雫は複雑な顔をしながら俺を見ている。


「どういう話だったの?」

「どういう話...ああ。まあテストの事とかな」

「そうなんだね」

「...ああ。テストも大変だから」

「そうだね。特にお兄は高校2年生だしね」

「来年は3年生。早いもんだ」

「...ねえ。そんなお兄に少し聞きたいんだけど」

「ああ。何だ?」

「私...がさ。もし...貴方に恋をしたらどうする?」


数秒間考えて俺はブハッと噴き出した。

何を言っているんだ。

そう思いながら「は?」と絶句する。

すると雫は「まあ半分冗談だけど」と言いながらケラケラ笑う。

いや冗談かよ。

って半分?


「なあ。半分っていうのは」

「私が全面的にお兄を否定してないって事」

「は?は?」

「私、お兄が好きなの。異性として」


そう言われた。

俺は「は!?」と凍り付く。

そして「ま、待て。どういう意味だ」と顔を上げる。

すると雫は「だけど私達は兄妹だから。...だからありえない感情だから。だから半分冗談なの」と言ってくる。


「...じゃあ残り半分は...」

「冗談じゃない。...だけど私はこの想いは叶わないって思っているから大丈夫だよ。...お兄も忙しいしね」

「...お前...」

「私...お兄が好きって事は言っておきたかったから先に言った」

「...それはアイツに。...つまり喜連に感化されたのか」

「そうだね。喜連さんがお兄が好きって思ったから」

「そうなのか」


俺は考え込んでいるとキッチンから雫がお茶を持ってきた。

それから俺の横にストンと腰掛ける。

そして俺に寄り添ってくる。

ゆっくり俺の手を握った。


「...何年も前からお兄が一番だった」

「そうだったんだ...な」

「そう。...このままお兄が喜連さんと付き合うのもなって思ったから」

「それで最初で最後の告白なのか?」

「そういう事。...お兄。もし何もかもで困ったら。私を頼ってね」


雫はお茶を飲む。

それから「でもさ。あくまで今の関係性は壊したくないから。これで良いの」と言いながらお茶菓子を食べ始めた。

衝撃的だ。

まさか雫まで俺が好きとは...。

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