きっと、ずっと、世界は美しい

東雲梓乃

プロローグ


エメラルドに輝くオーロラ、辺り一面真っ白な雪原。

緑豊かな森林に囲まれた大きな湖、何層にも重なるオレンジのキャニオン。


春の訪れを感じさせる、桜色の梅の蕾。

秋の訪れを感じさせる、緋色の紅葉もみじ


この世には、自然があらゆる場所に存在している。

人は、それらを”美しい”と感じる。



しかしある少年、宮田翔みやたしょうは、美しいと思ったことが無い。


そもそも何をもって景色を美しいと感じるのか、見当もつかなかった。


そんな彼にも少なからず美しいと感じるモノはある。


それは、何年も一緒にいる一人の少女、瀬川佳奈せがわかなであった―――。





僕はいつも暗い、暗い、海の底にいる。壁のない暗がりで、僕はぷかぷかと体を浮かせている。まるでロープに体を縛られているように、思うように体を動かすことが出来ずにいる。


いつまでも世界の不条理に、僕は縛られている。


僕は可哀想な子だ。


母さんはよくそう言って僕の額に口づけを落とした。

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