紙切れひとつを桜とともに

蒼天庭球

 ポニーテールとゆりの花


 6年間、いっぱい迷惑かけてごめんなさい。ずっと助けてくれてありがとう。


 そう書いてからずっと、ペンが動かない。書きたい言葉は山ほどあるのに、伝えたいことは溢れ出るのに、どうしてもペンが動かない。

考えるうちに眠たくなって。

明日が今日になって。


 あなたをスクリーン越しに見て。最後にあわてて、少しだけ書き足した。


 

 私の大切な人へ


 初めて会った時のことを覚えていますか?

あなたが初めて私にかけてくれた言葉を覚えていますか?

あなたのことだから、覚えてないとしか言わないでしょう。

でも、本当はちゃんと覚えてくれていると私は信じています。


 あなたは、私にたくさんのものをくれました。カタチに残るものは決して多くないけれど、それ以上のものをくれました。私があなたに返せたものはあまり多くないと思います。それでも、何か困ったときに、悲しいときに、背中をそっと押せる、そばにいて寄り添える存在でありたいです。


 覚えていますか?私が泣いた日のことを。あなたは、私が泣かせたみたいじゃんと言っていましたね。その通りです。あなたに言われて、ずっと我慢していたものが溢れ出てきました。私があなたの前で泣くのは、あなたがそれを許してくれる存在だからです。あなたが優しいからです。いつもそばにいてくれるからです。いっぱい話を聴いてくれてありがとう。


 覚えていますか?私とあなたの約束を。あなたは私にいつも、私より友達と一緒にいろと言いました。でも、私は従いませんでした。私はあなたと一緒にいたかったんです。同じ学年の子とならいつでも一緒にいれるけど、あなたと一緒にいれるのは少ししかないから。あなたは私をおいていってしまうから。だから、私はあなたの元へ行くんです。だから、あなたの言いつけでも私はそれを守りません。ごめんね。


 覚えていますか?あなたが私にバレンタインにくれたもの。中学生の時には、あなたは手作りのキーホルダーをくれました。あれは今でも、私の学校用カバンについています。落としたくないから内側だけど。そして、高校に入ってからは嬉しい報告をしてくれましたね。私がずっと聴きたかったことを教えてくれました。すごく嬉しかったです。


 覚えていますか?私があなたに傘を貸した時のこと。あなたは濡れたままで帰ろうとしましたね?変にシワがついてしまったスカートのことばかり気にして、自分のことは全く考えていませんでした。私は無理やり傘を押し付けて、あなたを帰らせました。私はあなたが風邪を引くんじゃないかとヒヤヒヤしました。もう絶対にやって欲しくないです。


 覚えていますか?部活動勧誘に目もくれず、2人で帰った日のことを。あのときの私は道がわかりませんでした。あなたはどこいくの、駅はこっちと言いながら連れてってくれました。あなたがいたから、私は道に迷いませんでした。あなたが私の道標になってくれました。


 覚えていますか?帰りが遅くなったあなたと一緒に帰った日のことを。私はどうしても一緒に帰りたくて、あなたが来るまで待っていました。あなたはとてもしょんぼりしていましたね。それでも、後輩の前だからって元気なふりをしてました。私はあなたに笑って欲しくて、あれこれ喋ってみたけれど、全然笑ってくれなくて、困っていました。それでも、あなたは道から飛び出た雑草に驚いて変な声をあげた私を見て、大笑いしてくれましたね。とっても嬉しかったです。


 覚えていますか?あなたが私の進路に反対したことを。なんでこの学校を選ぶのかよく考えろと言いましたね。結局、私が志望校を変えることはなかったけれど、誰よりも私のことを気にしてくれていましたね。そして、同じ学校に通えるとわかったとき授業中にも関わらず、すぐにおめでとうのメッセージを送ってくれましたね。それに気づいたのは1年たってからだけど、真面目なあなたが私のために授業中にスマホをいじってくれたこと、とっても嬉しかったです。


 覚えていますか?あなたが私の作文を誉めてくれた時のこと、好きだと言ってくれた時のこと。覚えていますか?あなたが私の小説を読みたいと言ってくれた時のこと。覚えていますか?私ならできるって言ってくれた時のこと。覚えていますか?私なら大丈夫だよと言ってくれた時のこと。


 私は全部覚えています。あなたが読みたいと言ったから、あなたが好きと言ったから、私は小説を書いています。


 あなたは結構、塩対応だったような気もするけれど、あなたが私のことを大切に思っていたことを知っています。あなたがどれだけ私のことを考えてくれていたのか、可愛がってくれていたのか知っています。あなたは私のヒーローです。私の人生に1番大きな影響を与えた人です。


 私の中には、あなたがいます。


 あなたの中に私はいますか?


 6年間、いっぱい迷惑かけてごめんなさい。ずっと助けてくれてありがとう。


 それから、直接祝いに行かなくてごめんね。

とってもとっても、会いたかったです。きっと、あなたも私に会うことを楽しみにしてくれていたはずです。

 あなたがそれを求めていないのを知りながら、最後だけ約束を守ります。

 こんな後輩で、本当にごめんなさい。

 寂しいです。あいたいです。

だから、これは今度会うための口実にします。 

 あなたと同じ場所にはいけないし、いつどこで会えるかもわからないけれど、また会いましょう。約束です。

 

 ずっと、大好きだよ。


                  2025.03.01 後輩より

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