原資超越論~適度な人手不足誘導は経営者の暴利行為ィ?~

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

奴隷解放宣言

【注意】本編中程から、SFらしいSFがようやく始まります。



 突然だが……

 以下五つの等式・不等式は、どこぞやの人類が、頭でっかちなりに辿り着いた、各人にとっての真理である。




 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 a^2+b^2=c^2


 〈三平方の定理〉

 「直角三角形において、斜辺cの二乗は、他の辺a、bをそれぞれ二乗した数の和に等しい」 


 byピタゴラスあるいはイスラーム世界の優れた数学者

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 E=mc^2


 〈エネルギーと質量の本質的等価性の式〉

 「エネルギーは質量に光速の二乗をかけたものに等しい」


 byアルベルト・アインシュタイン

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 E=nhν


 〈光子エネルギーの公式〉

 「振動数νニューの光のエネルギーEはhν(h=6.62607015×10^-34J・s)のn倍(nは整数)である」


 byマックス・プランク

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 1=1

 

 〈スーパーフォーミュラ・オブ・シンジロー〉

 「1とは、1である」


 by◯泉進次郎

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 2>-1


 〈原資超越げんしちょうえつ

 「2は-1より大きい」


 by加賀倉創作わたし

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 強調したいのは無論、私が推す、五つ目の等式である。この「2は-1より大きい」という、私が〈原資超越〉と名付けた詭弁は、詭弁には違いないので、初見の読者の目にはひどく奇怪なものとして映るだろう。が、詭弁と言えども一定の論理を備えて言えるのは確かなのだから、少し説明を加えてやれば、一定の理解が得られると確信している。私が言いたいのは、要はこうである。



 投入した原資リソース以上に実入リターンを得ることは、可能である。



 当然これは、不等式には顕現けんげんしていない様々なリスクを、多かれ少なかれはらんでいる。そのリスクというのを不等式上に示していない点が、私自ら持論を詭弁と称する所以ゆえんでもあるのだが、ガチガチで高度な論説というよりもここは一旦、ちょっとした言葉遊び、くらいに受け取っていただけると嬉しい。尚、言葉遊びというカジュアル寄りなものの中に社会問題の類を内包しているのが私加賀倉創作の持ち味であると、ここでやや強引めにアピールさせていただく。





 🐇🐇🐇





 原資超越2>-1とは何かを示すにあたって、比喩を使う。


 目の前に、ハードルがあるとする。

 そしてそのハードルは、高過ぎるというほどでもないが、舐めてかかると、足を掠めてしまいそうな絶妙な高さであるとする。そのハードルを越えようとする時、あなたの頭の中には二つの案がある。一つには、ハードルの少し手前で直立静止の状態からそのまま跳躍、つまりは立ち幅跳び的手法。二つには、ほんの数歩だけ後ろ歩きでハードルとの距離をとってから〈助走〉を活かして跳躍、すなわち軽め走り幅跳び的手法。恐らく二つ目の案の方が、跳躍は高くなるはずである。

 想像の宇宙をさらに膨らませてほしい。

 ハードルの手前、ちょうどいいところに踏切線があると仮定する。その踏切線は、いわば「0」の地点、基準線である。先に示した軽め走り幅跳び的手法、つまり二つ目の案における〈助走〉というのは、行ってしまえばハードルから離れる方向、マイナス方向への動きである。仮に立ち幅跳び的手法をとった場合に出力される跳躍を「1」とするならば、〈助走〉の加勢を得た軽め走り幅跳び的手法で出力されるのは、整数で言うところの「1」よりも大きい数字、すなわち「2」を得られる。

 だが注意点がある。

 〈助走〉というのは、距離を伸ばせば伸ばすほどいい、というわけではない。当然、〈助走〉がある距離に達すると、出力される跳躍も限界点を迎えてしまうわけだ。となると、誰も余計に走って息を切らしたいとは思わないはずなので(そう思う方がいらっしゃったら申し訳ない)、いかに短い〈助走〉でハードルを超えるのにちょうど良い高さの跳躍を得られるか、という、一種の損益分岐点のようなものを見極める、すなわち最もギリギリのラインを攻めて最大限の結果を得るための、模索が始まるわけである。ついにハードルを超えるための損益分岐点を見つけられたなら、ちょっと〈助走〉をしてやるだけで跳躍力が上がるのだから〈助走〉をしない手はないのでは、となるはずである。

 以上を踏まえると、先に示した原資超越2>-1、「投入した原資リソース以上に実入リターンを得ることは、可能である」という言説は、次のように連続的換言できる。


 小さいマイナスは大きいプラスに変換できる。


 マイナス→プラス変換において、絶対値は増大し得る。




 🐇🐇🐇




 私は詭弁家である。

 隠す気はちっともない。

 当然、先の比喩で、正負プラマイの概念自体はさておき正負プラマイの電荷を備えた二者がそもそも異質で全く別なものだから比較すること自体がおかしいのでは、ということも把握の上で提示した。


 なぜそんなことをするのか。

 楽しいからである。


 散々自己満足させていただいたので、ようやく表題の『原資超越論~適度な人手不足誘導は経営者の暴利行為ィ?~』について、直接的説明に入る。



 前提はこうだ。

 人手不足は経営者の懐をビッシャビシャに潤す。

 それはなぜか。

 人手不足すなわち人員削減であり人件費が下がる。



 先のハードルと助走の比喩で示したことは、雇用者と被雇用者の関係においても適用される。損益分岐点を探るようにして、モノやコトの生産目標を維持しながらカツカツの人員体制を敷くと、最初は現場が大混乱するかもしれないが、人間というのは哀れにも面白いもので、秘めたる能力が開花して(あるいは手抜きやサボりの量を減らして)、生産が向上し、現場を回せるようになる。つまりは、人員削減が自ずと精鋭育成プログラムに変貌するわけである。こと日本人に関しては、忌憚なく言えば、奴隷力が高いので、劣悪な労働環境でも、〈声〉を上げすに従順に、どこまでもいつまでも馬車馬のように働いてのける。が、当然この詐欺的プログラムにはリスクが伴う。リスクが顕在化するのはどのような場合か。それは、馬車馬ホースの覚醒、なる現象が起きる場合である。


 馬車馬ホースの覚醒というのは、馬車馬が一角の馬ユニコーンへと進化して、角という武器を得るに等しい。


 だが角は人間には生えていないわけで、比喩である。


 では武器とは何か。

 

 〈声〉である。


 おかしいことをおかしいと他者に伝えるための武器、それが〈声〉である。


 〈声〉を扱えるようになるには、既存の覚醒者から、覚醒のきっかけを得る必要がある。敗戦国の中で奴隷として最適化するように育成された日本人にとって、一人で覚醒することは、かなり難しい(仲間の日本人を批判したいのではない、悪いのは日本人を虐げる輩である)。


 だから私は覚醒者(そう自負している)の一人として、未だ覚醒せざる者に、覚醒のきっかけを投じたい。


 ついでに言えば、私がこのように何十分何時間と費やして覚醒誘因を図る言葉を丹精込めてつむぐのは、原資超越2>-1が現実に起きると信じているからである。原資超越が起きるなら、あとは超臨界──原子核分裂の倍々ゲーム的連鎖反応──と同じで、特大のエネルギー爆発が起きるのは時間の問題である(被爆者を揶揄する意図はない。純粋な物理学の比喩として受け取っていただきたい)。


 少なくない経営者が、利を貪る人でなしか、あるいは階層的既得権益集団の一員又はその下僕であることが暴かれている昨今において、覚醒を伝播させ、単なる労働力ではない尊き民衆の力でおかしきを正す、これは当たり前のものとして、認知されるべきである。


 (一見)陰謀論めいた情報の中から真実や本質を抽出するのは極めて途方もない巨視的マクロな取り組みであるから、まずは微視的ミクロに、(あなたを虐げられし存在と決めつけたいわけではないので「もし」と仮定する)己の身を置く職場がもし耐えられないものであるならそこで小さな〈声〉を上げるもよし、特定の団体組織について不満に思うならその〈声〉をネット上で投稿するもよし(誹謗中傷となるか否かのラインを見極める必要はある)、デモに参加して〈声〉を上げるもよし、家族や友人という尊くも小さなコミュニティ内から、ヤバい奴認定される覚悟で〈声〉を広めるもよし、である。尚、再三になるが現代日本人は極度に事実上の奴隷というものに最適化された集団なので、一般的に正しいとされているものに反発したり、工作員によって陰謀論デマとレッテルが貼られた現実には起きている陰謀を支持することは、多くの逆風を浴びることにはなる(現に私はそのような経験をしている)が、今逆風はやや弱まりつつあるし、逆風が嫌だから奴隷のままでいることを選ぶほどには日本人の魂は腐ってはいないと信じている。





 🐰<急にSF物語が始まるよ‼︎





 ──摩天楼乱れそびえる大都、オイコット[Oykot]。

 


 夕闇にえる縦長たちの中でも頭一つ、いや頭のみならず首部こうべ、それも四つほど抜きん出てている高層建築がある。



 その高層建築というのは、どこぞやの巨大企業の本社だとか、膨大な数の営利企業の事務所の入ったオフィスビル民間の所有物ではない。



 オイコット都庁。 



 それは、紛れもなく、都民から巻き上げた税を原資に建てた公共物である(地方自治体が巻き上げる地方税は財源の一部となるが、国が巻き上げる国税を財源と表現するのは詐欺的であるので、くれぐれもご注意いただきたい)。



 オイコット都庁の最上階──そこは地上五一九メートル──の毳毳けばけばしい玉座に、いいとは言えない姿勢で腰掛ける政治は、オイコット都知事の暴沢利アバサワ トシ



 御年七十二歳の彼女は、ネット上では〈女帝〉だとか、〈暴沢利婆ぼったくりバアさん〉だとか呼ばれているが、彼女自身はそのような事実は気にも留めず、何ならネット民があだ名を一つ思いつく度に返礼として、プロジェクションマッピングでわけのわからない悪魔崇拝的表象シンボルを都庁の外壁全体に仰々しく映写するほどである。



 玉座のそばに、秘書の一人が近づく。



暴沢「あ、さっき淹れてくれたブラックコーヒー、なかなかよかったわ」


秘書「それはそれは、よかったです。ところで暴沢あばさわ都知事、先日ご提示いただいた来年度予算案ですが、これ、来週の都議会で過半数の賛成を得られるとはとても思えません。第一、税収見込みが楽観的ツヨキ過ぎます! 仮にこのまま予算執行されたら、大赤字ですよ! その暁には、前みたくプロジェクションマッピングのシステムを乗っ取られて、都庁大爆破の映像を投影されちゃいますよ! そんな事態を避けたいとお思いなら、ホンニチこく政府の掲げる財政収支プライマリーバランスの黒字化推進に、我々オイコット都もならうべきかと……」


暴沢「えーっとちょっと待って、もしかしてあなた、PB黒字化支持者なわけ? だとしたら売国政腐の犬か、無知か、本物の阿呆アホウよ?」


秘書「もちろんですよ! あ、もちろん、というのは、もちろんプライマリーバランス黒字化支持者、という部分にかかっています。犬でも無知でも阿呆でもないと自分では思っています」


暴沢「あらま。ならあなた、酷い洗脳状態にあるってわけね、かわいそうに」


秘書「せ、洗脳!? どういうことです?」


暴沢「せっかく政府の銀行にちぎん(日本銀行は表面上は資本金政府五十五パーセント出資ではあるが、実態は某国際金融資本による傀儡組織である)があって、公共事業からの国債発行由来の信用創造の多寡で、プラスの経済コントロールが可能なはずなのに、財政法で建設国債以外の赤字国債を認めなかったり、借金(政腐とその犬は国債のことをそのように歪曲わいきょく呼称するのが円滑な魔改造的日課モーフィングルーティンである)返済する相手もいないのに税金を元手にした償還計画を馬鹿みたいに立てたり、そんなふうに一方では赤字国債を制限するくせに、特例国債法の重ね塗りで赤字国債を正当化しているようなしていないような、とにかく馬鹿げた法の足枷がなければ事実上政府は意のままに(本来は某国際金融資本家の意のままに、とするのが最もらしい)金は刷れるんだから、バランスもクソも無いし、黒字も赤字もないのよ。で、そーんな虚言があなたの口から出てくるのは、大前提税金イコール財源であるかのような詐欺師の言説に踊らされているからでしょう? 早く目醒めなさい、今のあなたが大事そうに抱えている経済学の教科書には、創造と妄想があるだけよ。まぁ、金融なんていう虚構の枠組みの中で、さーらに間違った論を展開しちゃうんだから、入れ子構造も甚だしいわ」


秘書「すみません、よくわかりません、都知事」


暴沢「ならもっと勉強しなさい。そして受動的に勉強するだけじゃなくて自分の頭で考えなさい。もし自分の頭で考えた結果勉強したことが嘘偽りだったら、その誤った知識と理解を捨てなさい。それができないのなら、あなたは人員削減リストラリスト入りよ。あーもうどうしてみんな国家運営と、地方自治体運営企業経営をぜに考えちゃうのかしら?」


秘書「リストラ? なんの話です? やめてください」


暴沢「そうだ、言ってなかったわね。どうせあなたは私の予算案にケチつけるだろうと予想してたから、反駁はんばくの材料を用意していたってわけ」


秘書「すみません、よくわかりません、都知事」


暴沢「もう! またそれ? 再放送が早いわね! スポンサーに逃げられて番組予算吹っ飛んだどっかのテレビ局みたいね!」


秘書「それもよくわから……というか、話を戻しますが、リストラっていうのは何なんです?」


暴沢「その程度のことも説明しなくちゃいけないわけ? 人員削減、人件費削減、削減分他の予算にてて万事解決。簡単な話よね?」


秘書「は、はぁ。ちなみに反駁の材料というのは、リストラという案の他には?」


暴沢「ないわよそんなの。十分でしょう?」


秘書「ええっ! あの予算案を通すとなると……相当数の職員を切ることに! オイコット都職員の平均年収が七五〇万だとして、予算案の十二兆を現実的なものにするためには……というか、地方公務員のリストラなんて、そんな簡単にできませんよ絶対! 無理やり辞めさせたりしたら、後から訴えられそうですし! お言葉ですが暴沢あばさわ都知事、やはり人員削減による予算の帳尻合わせは都職員含め都民から……暴政、と見做みなされるやもしれません。ひいては次なる酷い愛称が……ボウクンアバサワ、トカ」


暴沢「あー、わかってないわねあなた。私の見立てでは、二十五パーセントくらいは人員削減してもは機能する」


秘書「ええっ! 二十五パーセントぉ!? そんなの、機能するって言っても、よくてギリギリ、ですよ!」


暴沢「いいじゃないの、ギリギリで」


秘書「暴政だ! 暴君暴沢ボウクンアバサワだ! 暴暴ボーボーだ!」


暴沢「仕事がギリギリ回るくらいの人員削減は、現状は可もなく不可も無い働きぶりの下僕どもの仕事効率を上げるのよ。むしろ精鋭育成になるし、無能は切り捨てれるし、いいことくめだわ」


秘書「ああ、一理なくはない、ですね。非情ですけど」


暴沢「非情も何も、仕事の関係で情なんてかけてられないわ。それにオイコット都は地方自治体なんだから、税金集めて消去するだけの国とは違って明確に税金を大きな財源にしてるもの、都民の税金で無能職員を肥やすよりもちょっとくらい職員に鞭打ってる方が、納税者たる都民には写りがいいはずよ」


秘書「うーん。わかるにはわかるんですが、よくよく考えると、顕在化していないサービス残業がないとは言えないですし、何より都知事という立場から見える景色は最前線にいる職員の見ている景色は大きく異なるはず……」


暴沢「そうなると自ずと、サービス残業がなぜ生まれるのか、っていう議論も必要ね。私が面識のある都職員の中には、ほとんど毎日十七時十五分に随分と薄いカバンを持ってオフィスの外にいるような人、すなわち定時退社が常の人がいる。つまりはサービス残業含め残業の類をほとんどしていないような人たちがいるのも事実。となると、当たり前のことを言うようだけれど、残業の多い人と少ない人がいるわけで、その差は、どうやって生まれるのかしらね。そもそも職員の能力が低いだけかもしれないしそれなら降格になったりよっぽど酷ければ首を切られてもおかしな話ではないし、業務に余計な過程がある可能性もあるし、部署によってタスク量の偏りがあるからラクな部署とそうでない部署とで、付けれる残業、付けれないサービス残業残業、てな具合に歪んだ残業の段階のようなものができて残業自体の概念が違ってしまっているかもしれないし……」


秘書「あのー、暴沢都知事」


暴沢「何?」


覚醒秘書「これまでずっと都職員に理不尽なタスク押し付けておいて、今はくどくど御託を並べて、シンプルに人間を奴隷化して虐めている事実から目を背けてません?」


暴沢「は?」


覚醒秘書「すみません、都知事の感覚が、僕にはわかりません。なのですみません、もう限界です」



 彼は、どこからともなく小さい葉巻型の装置を取り出すと、その先端についた赤いスイッチを押した。すると、暴沢都知事は、「起立!」の号令が掛けられたかのように玉座から立ち上がって、口以外の全身を硬直させた。



覚醒秘書「さっき僕が淹れたブラックコーヒー、最後の一滴まで飲み干していただけました?」


暴沢「え!? さっき私が最後の一滴まで飲み干した美味なブラックコーヒーがどうしたって?」


覚醒秘書「それはそれは、よかったです。あれには、とっておきのものが入っています」


暴沢「とっておき?」


覚醒秘書「ええ。ワブリオキサイドとプラチナ族元素を組み合わせたものを動力源とし、脂質の膜とタンパク質の多足を持つ〈マニプリタイベ〉、言うなればナノサイズの洗脳型生物兵器です。〈マニプリタイべ〉は、コーヒー中のカフェインと結合してどさくさに紛れて脳に到達すると、神経回路で無限に自己増殖、神経細胞ニューロン一つ一つに寄生して思考や感情を乗っ取り、今僕の手の中にあるこのコントローラーに接続されます。たった今僕は、あなたの思考と感情を完全に支配下に置きました」


暴沢「ば、馬鹿おっしゃい! 冗談でしょう!?」


覚醒秘書「それが馬鹿正直に言いますと、冗談でも何でもなく、事実でしかないんですよね。そしてここで簡単な質問をさせていただきます。いや本音を言えば、俺の問いに正直に答えろバーカ、とでも言ってやりたいですが、まぁ、品よく丁寧にいきましょう。暴沢利都知事、あなたの本当の国籍はホンニチ国ではなくアニケー王国であり、またあなたはキンジト大学を卒業していませんよね? 身分詐称と経歴詐称、公職選挙法第二百三十五条違反です。それに銅羅蔵ドラクラ教からの献金がありましたよね? 政教分離の原則、憲法二十条違反です」


暴かれし暴沢「ちょっとあなた、政教分離に関して、憲法の知識が浅いんじゃないかしら? あれは私への個人献金ではなかったし、ウリクニへの献金だった。それにそもそも、政教分離っていうのは、信教の自由を前提に、政治権力は国民に対し特定の宗教を強制するなって話でしょう? 確かに私自身銅羅蔵ドラクラ教の施設のいくつかに出入りしたことはあるけれど、個人的献金を受けたことは無いし、それに政治家個人が、特定・多数にこだわらず何らかの宗教団体から応援されること自体には違法性はないはず」


覚醒秘書「そうですか。銅羅蔵ドラクラ教の件は暴沢都知事の個人的問題ではなく、党ぐるみで付き合いがあったというわけですか。それ、当事者本人の口から発されたという意味では、きっと本邦初公開の情報ですよね。ウリクニ党内のあなたのお仲間何人かの名前と同じ名前が、先日、最近流行りの道路陥没で見つかった怪しい地下神殿の来場者名簿に、片仮名表記で、載っていたんですが、同じ読みの名前なんて五万とあるわけですから、何人かの党員の例の悪魔崇拝儀式への参加を断定することができなくて、困っていたんです。しかしたった今、何人かの犯罪者の存在を確信しました。いやー、都知事、まんまと白状してくださりましたね。ありがとうございます。まぁ、どう転ぼうとあなただけは我々の裁きからは逃れられない運命にはありましたが」


暴かれし暴沢「神殿? 悪魔崇拝? な、なんのことかさっぱり……わか……るわ! とてもわかる〜! ありありと! よしんば洗脳装置がなくともよおくわかるー! とんでもない数の子供に悪さしたから! あんなことやこんなこと! 最高だったわ! あれやってる時は頭がスッキリするというか、五十歳くらい若返ったような心地になるのよねえ! あれ!? 何だか思うように話せない!」


秘書改め最高DOGEZA責任者「秘匿名コードネーム猿石さるいし、あなたは今後永久に我々〈人でなしDOGEZAさせ隊〉の管理下に置かれます」


暴沢改め猿石「ひゃあ! 爆アドレプティリレプリコン!」



 暴沢利都知事は、人知れず、彼女を模した精巧なロボットにすり替えられた。

 彼女本人は、所在不明の絶海の孤島の鉄檻に、永遠に収監された。



   〈マ?〉

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