第4話 下着屋のトラブル解決
「まず、アスレティカレースの試着室でのトラブルの件数と内容を教えて」
私は、事前に持ってきたタブレットを使って説明する。
「先月は三件ですね。繁忙期の月は七件とかいくこともありますけど、年間平均すると二十件くらいです。しかも東京支店が多いで、今のところ、増加傾向にあります」
「意外と多いな……」
「しかも、男性よりも女性の犯行が目立ちますね。友達同士を装って入り、試着中にこっそり撮るとか」
「女同士の方がバレにくいってことか」
「はい。油断してますしね」
「女性が多いっていうけど、男装して侵入する男とかは?」
「それもあります。でも、割合的にはやっぱり女性同士が多いです」
「未然に防ぐ事は?」
「男装犯は分かりやすいですね。説明し辛いですが、女の勘で未然に防げます」
怜先輩は、私の説明にウンウンと頷き、メモを取る。
「主な犯行動機として多いのが『お金稼ぎ』二番目に『リベンジポルノ』三番目に『カップル同士のプレイ』ですね」
「なんで、二番と三番が逆なんだ?」
「ストーカーやクラスのいじめで特定の女性に対する盗撮行為も含まれますので。特に女性同士だと陰湿ですし」
「はは、まさに女の敵は女だな。男には無い発想だ」
怜先輩は、から笑いしてから水を飲む。
「他はともかく、三番目がちょっと難しくて……」
「プレイ?」
「はい。……正直、お客様ですし。楽しんでくれるのは嬉しいんですけど、他のお客様に迷惑かけたり、盗撮と間違われたりすると困るんですよね」
「なるほど。売上は上がるけど、リスクも増えるってことか。で、プレイ目的の方も『常連』とかいるの?」
「はい。特定の時間帯に来るカップルとかは、正直スタッフも気づいてます」
「……もしかして、うちの妹夫婦も?」
「いえ、あのおふたりではないですね」
「なら良かった。正直、妹夫婦ならやりかねないと思ったよ」
「ですね。私あの時プレイか性暴力か分からなかったですし」
「はぁ……知りたくなかった。妹のマゾな性癖を。……偶然恋人の蹴りが入った時に目覚めたんだってさ。恋人に腹パンされたいと嬉しそう話す妹ほど気持ち悪いと思った事は無いよ」
「親中お察しします」
「でも、変態でも可愛い妹だから、見捨てるわけにもいかないんだけどさ」
怜先輩は二日酔いの様なゲッソリした顔でテーブルに突っ伏す。私はそんな先輩に対して水を入れて手渡すと、「ありがと」とお礼が返ってきた。
「そこで、このプレイの需要をお金にしないのがもったいないから、試着室の一部を盗撮プレイ専用にしてアプリ管理できる機能を開発するのはどう?」
「うーん。うちは女性客メインだから、変なウワサ立つとマズい。でも……差別化にもなるし、普通のお客様と盗撮プレイのお客様と区分けできてリスク分散できる。客単価上げられるかもしれない」
「カメラ機能なら既にスクショ出来ない機能もあるし専用フォルダも既存の技術で出来るから防犯対策は出来る」
「それ、お願いできますか?」
「えぇ。全力でこの仕事に取り組むよ。自分の食い扶持の為にも、変態妹夫婦の管理と監視の為にも。そして、可愛い元カノの為にもね」
「えっ?」
「……なんでもない」
私は心臓がドキンと跳ねた。でも、言葉にはしなかった。
「ふふ、大変ですがお願いしますね」
「うん……。よし、やろうか。ただ、正式導入前に試験運用は必要だな。あとは、客に『安全な遊び場』って伝わる打ち出し方も考えないと」
怜先輩がペンを回しながら言う。
「……一ノ瀬」
「はい?」
「テスト、やってみる?」
「え?」
「どういう使い勝手か、まずは私たちで試してみない?」
「……え?」
私は飲もうとしていたコップを落として水をこぼしてしまった。
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