24話目 決意を固めた話
休みの日。今日は文化祭の振り替え休日だ。私は部屋のベッドの上で返事をどうするか迷っていた。
「はぁ、どうしよう……」
二人から同時に告白された。どちらか一方を選ばなければならない。
保留なんて選択は二人に対して不誠実だ。絶対にそんな選択は取れない。
「けど、選ぶということはどちらかを傷つける……そういうことだよね」
カリンさんと玲奈。どちらかが悲しむ結果となる。
何時間も頭を悩ませる。けれど、答えは一向に出ず、気づけば夕方になっていた。
「気分転換にカフェ、行ってこよう」
今のままじゃ、何も変わらないと判断し、お出かけして気分転換することにした。
× × ×
重い足取りで夕方のカフェに私は入っていった。平日であるからか、店内は人がまばらで少なく、紅茶のいい香りが店内を漂っていた。
「いらっしゃいませ」
対応してくれたのは菊池さんだった。
「菊池さん、今日もバイトだったんだね」
「ん。そうだよ」
いつものようにクールに菊池さんは返した。
「カリンから話、聞いた」
「え?」
「告白のこと。ちょうど休憩だから、話したい」
そう言うなり、菊池さんは身を翻し、バックヤードに向かっていった。
× × ×
四人がけのテーブル席。菊池さんと対面する形で座ることになった。
「カリンから聞いた。玲奈と一緒に告白されたっんだって」
「うん。そうなの」
「答え決まってる?」
私は首を横に振って否定した。
「決められない。だって、どっちかを傷つけることになるんだもの。難しいよ」
「まあね」
菊池さんは紅茶を一口飲んでから言った。
「でも、決めないのも二人に悪い」
「それも分かってる……」
一日中悩んだことだ。それでも答えを決めきれず、それでカフェに気分転換しに来たのだ。
「本当に決まってないの」
「え?」
「決め方なんて、簡単じゃん」
軽く言ってのける菊池さん。菊池さん的にはこんな状況になっても迷うことなく選択できる手段を持っているらしい。
「教えて、菊池さん。どうしたら答えを出せるのかを」
菊池さんはもう一口紅茶を飲んでから声にした。
「一番傷つけたくない方を選ぶ。それだけ」
菊池さんはシンプルに答えを述べた。
「一番傷つけたくない方を選ぶ……」
私は無意識に菊池さんの言葉を繰り返した。
「そう。ボクだったらそうする」
アドバイスにしたがって自分の考えをまとめる。すると、彼女の顔が浮かび上がった。
「ありがとう、菊池さん」
「別に、ボクは思ったことを言っただけだよ」
ティーカップを置いて小声で呟いた。
「……ずるいことをしてるのはボクの方だし」
「え?」
「なんでもない。あなたが気にすることじゃないから。忘れて」
「そう言うのなら……」
気になりはするけども、詮索されたくないのなら聞くのも悪い。私は残った紅茶を一気に飲み干して席を立った。
「アドバイスしてくれて、ありがとう」
「どういたしまして」
休憩時間が終わるのだろう。菊池さんは手を振ってから席を立った。
私は軽い足取りで喫茶店を出ていった。
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