10話目 梅雨の時期の話
六月の季節といえば梅雨である。高校の外は雨が降っていた。
私は席に座って、カリンさんは私の席の前に立ってダラダラ過ごしていた。
菊池さんは当然のごとくバイトに行ってるため居ないけれど、今日は玲奈も居ない。玲奈は夏服が欲しいらしく、最近バイトをし始めたのだ。
「梅雨デスね……」
「そうだね」
私とカリンさんは窓の外を見ている。
「雨の日ってユーウツな気分になりませんか?」
カリンさんはそう尋ねてくる。
「ね。雨の日はちょっと……」
「デスよね。ジメッとしてて身体が重くなる気がします……」
いつも活力あふれるカリンさんがこんなに元気が無くなるなんて珍しいと思った。
気分転換になにか出来ることはないか考え、あることを思いついた。
「こんなときは、あそこ行ってみない?」
「あそことは……?」
カリンさんは首を傾げた。
× × ×
私が案内したのは図書室だった。
「図書室デスか。あまり来たこと無いデスね」
物珍しそうにカリンさんは図書室内を見回していた。
「サクラコはよく遊びに来るのデスか?」
「ううん、初めて。カリンさんと遊ぶようになってから外へ遊びに行くことが多かったから」
「それもそうデスね」
私の前にいるカリンさんは振り向いて言った。
「サクラコのオススメはなにかありますか?」
「私のおすすめは推理小説かな」
「サクラコ、推理できるのデスね」
「ううん、ぼーっとして何も考えないで読むの」
「そうなのデスか?」
カリンさんは首を傾げて聞いてくる。
「うん。推理して犯人を当てたいというよりはびっくりしたいって感じだから」
推理するのが醍醐味だとは思うけれど、私はそういった変わった嗜好の持ち主なのだ。
カリンさんは手をぽんと叩いて納得してくれたようだ。
「せっかくだし、別々のもの読むよりは一緒のもの読んでみたいデス」
「いいよ。なににしよっか」
私たちは一緒になって読めそうなものを探し、新刊コーナーでそれを見つけた。
「猫の写真集デスね。これなら一緒に読めそうデス」
「カリンさんは犬派じゃなかったっけ」
私は問いかけるとカリンさんは頷いた。
「犬派デスけど、今は一緒に読めれば何でも構いません!」
「そういうのなら」
私たちは図書室の席に座って帰りのチャイムが鳴るまで、猫の写真集を読み続けた。
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