アイデンティティ

結城 木綿希/アマースティア

性自認

この話はフィクションです。


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 ボクは男。それは間違いない。そのはずだ。そうでなければおかしい!だってそうして19年間生きてきたんだから。なのに何故今ボクはその事実を疑っているのだろう。


 性自認は遺伝子、ホルモン、行動パターン、社会的相互作用など複数の要因で……この話はいいんだ。この場合ボクにどれが当てはまるのかなんてわからんし!性同一性障害を持つ人々は自らの身体が自分の目と他人の目に入らないようにしたり、ホルモンや外科的な処置を求めることがたびたびあるらしい。これもボクには当てはまらないな。


 それでも今ボクは自らを疑い、自分が何者であるかを問うている。何がボクをそうさせたのか……きっかけとなったのは間違いなくあの日の実験だろう。


 過去を振り返り、物思いにふける今この瞬間も……ボクのアイデンティティは崩壊を続けていた。


 


 あの日の実験のテーマはたしか……「仮想の身体と性別の変化によって引き起こされる性自認の変化」みたいな感じだったはずだ。


 やったのはちょっと前にYouTubeでよく見た義手をハンマーでぶっ叩くアレと同じようなことだ。違うのはHDMを使って仮想の女性の身体と全身の感覚を同期させること。ボクはあの時、自分が女性になったかのように感じた。徐々に重なっていく仮想の身体と生身の身体の感覚。重なれば重なるほどボクの中の性自認が壊れ始めた。


 実験が始まる前の所詮VRと舐めていた自分を助走をつけてぶん殴るどこらかバットでフルスイングしてしまいたかった。それほどの恐怖体験だった。性転換願望なんてなかったはずなのに……自らの性に違和感などなかったはずなのに……ただ自然に異なる性を受け入れ始めている自分が怖かった。変わってしまった身体の性に引き摺られるように変化していく意識。これ以上はダメだ戻れなくなる。そう思った時、実験は終わった。


 人という生き物にとって性というのは存外脆い概念なのかもしれない。だが、社会にとって性という概念は重たいらしい。街を歩いていて痴漢に遭うかもしれないし、友達だと思っていた人がある日突然下心丸出しな誘いをしてくるかもしれない。


 自分がより生きやすくなるためにしたはずの性別転換が人間関係を壊してしまうものになるかもしれない。友人の変わりようを悲しみ、友人を失った事実に寂しさが込み上げ、その時のトラウマに怯え続けることになるかもしれない。それでも……


 数百万かぁ……高いなぁ。しかも怖いしなぁ。でもそうそう死なないらしいし。勇気さえ出せれば元は同じらしいから男のソレを元に女性のを作れるらしいんよなぁ。他にも方法あるらしいけどそれはいいや。どうしよう……タイ、行ってみようかな。


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参考文献

「Fluidity of gender identity induced by illusory body-sex change」(scientific reports 2020年9月1日公開)


「性別確認手術 あなたの性別を確認する手術」(BANGKOK HOSPITAL)


 ざっくりとしか書いてないしだいぶ雑にまとめてあるので参考資料の方も良ければ!TSモノの解像度が上がるよ!ただ……そこまでのリアリティが必要かは知らん!

 

 今回はTS後に元々同じ性だった人を好きになるアレって実際問題どうなんだろうなぁ〜って言う疑問から調べてみたのをまとめてみました!身体の性別の変化に性自認が引き摺られるらしいのでTSモノでの設定や、現実世界への影響を考えてネカマを禁止しているVRMMOって設定に深みが出て面白かったです!どうしても自分用だと文が雑になるので死蔵しないで投稿することにしました!


 実験の件も被験者に個人差はあるものの影響を与えましたが、それは不可逆的なものではないため本文は誇張ですので悪しからず。てか半分くらいあとがきで草。ではでは〜!

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アイデンティティ 結城 木綿希/アマースティア @yuuki58837395

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