第84話 半年後

 忙しい年末年始を超えて、新年を迎えてさらに時間は流れていく。

 天界と魔界が龍脈事件をきっかけとして、ほかにも火種がないか厳しい目を向けたことで、天使と悪魔による事件は激減した。おかげで近年で一番穏やかな時間が流れることになった。

 蓮司が霊能力者になって一年を超えて、駆け出しの肩書は外しても問題ないと判断される。

 現場に出て先輩たちの指示をあおいでばっかりだった蓮司も、この一年で通常の仕事に慣れてきて問題なく除霊できるようになってきている。

 一人で現場に向かうことも珍しくはない。


 所属するオカルト対策課支部も少しずつ変化していく。

 大地と敬太郎と弥一は、そこまで大きな変化はない。まだ現役としてやっていける。大地は右腕も完全にもとに戻っていて、元気に鍛錬を続けている。

 孝一は葵の世話を続けている。最近葵に彼氏の影が見え隠れてして狼狽えているところを、実里に突っ込まれるということが珍しくない。

 そんな孝一に葵は、もう私は大丈夫だから彼女を作ってもいいのだと言うこともあり、自分の幸せについて考えることもある。

 実里は彼氏ができて楽しそうだ。相手はよく通っているペットショップの新しい店員だ。趣味が合い、二人でいつか店を持つことができたらと考えていた。店を建てるだけなら実里の貯金でどうにでもなる。だがその彼氏は実里に頼りっぱなしでは男がすたると考えた。ある程度お金を貯めて、そして店員としての知識と経験を深めるまで待ってもらうことにした。

 藍と詩織もトラウマを解消すべく毎日頑張っている。面と向かっての人付き合いはまだ苦手なため、ネットを通じて趣味の映画鑑賞サークルに入り、ウェブカメラ越しに会話してコミュニケーションをとっている。

 二人はまだ恋人など考えられる状態ではないが、友人は少しずつ増えている。大地たちも好転している状況に安堵していた。

 あとは二人をさらった老人の行動に注意するだけだと、本部が追っている老人の情報を定期的に確認している。

 宗太は蓮司と一緒に鍛えられ、実績をどんどん積んでいる。三級霊能力者にもなっている。舞倉本家が自分たちに有利になる仕事を斡旋しようとして、佳奈美によって行動を制限されるということもあった。この件によって、まだ本格的に本家の実権は握っていないが、本家は佳奈美を当主の最有力候補として見ている。

 宗太と佳奈美の間では、宗太は本家にあまり関わらず霊能力者として働いて、佳奈美が宗太を支えるため本家を管理するという話をしている。

 佳奈美も宗太にストレスを与えなければ本家の人間をないがしろにするつもりはないので、二人のやりやすいように補佐すればこれまで通りの生活を続けていくことが可能だった。

 

 梅雨が明けて暑さ迫るという時期に、蓮司と宗太は二人で仕事に出ていた。

 

「最近は誰かと出ることが減ってきたから、宗太と出るのは久しぶりだ」

「そうだな。一緒だからって気を抜くなよ。事前に言ってあるように手伝わないからな」

「わかっているよ」


 今日は蓮司が三級への昇級に相応しいか試される日だ。

 宗太はその試験官だ。記録用にビデオカメラを持っている。

 減給も解けて、知識も備わり経験も積めた。そろそろ昇級してもいいだろうと大地と本部が判断したのだ。

 現場である指定された山に二人で移動する。途中までは二人ともスクーターで、現場まで徒歩十五分のところにある駐車場に置いてきた。


「歩きながら仕事の再確認だ」

「個人で所有する山に不審な影があるから調査してくれという話。除霊するかどうかは現場の判断。害のない妖怪や精霊は保護も視野にいれる」

「うん、しっかり覚えているな」

「さすがにそれくらいはね」

「依頼人との話し合いも蓮司がするんだからな」


 それに頷いて、山の近くに住んでいる依頼人の家に到着する。

 居間に通されて、宗太が記録したいとその理由を話す。家主が納得し許可を出したことで、宗太はビデオカメラの電源を入れた。


「それでは開始したいと思います。はじめまして、オカルト対策課支部から派遣されてきました。笠山蓮司と申します。あちらは記録係として同行している日倉宗太。今回の仕事は私がメインで動くことになります」

「ご丁寧にありがとうございます」

「では山についてのお話を始めたいと思います。人影が見えたということですが、被害は出ていますか?」

「オカルト的な被害はゼロです」

「オカルト以外では出ていると思っても?」

「はい、近隣の畑の野菜がいくらか荒らされています」


 獣害とは違うのかと蓮司が聞き、依頼人は違うと首を横に振る。

 獣による被害ならば野菜は齧られ、残りはその場に残る。しかし今回の被害は丸ごと持っていかれている。

 野菜泥棒の仕業かなと蓮司は思うが、それも違うようだった。

 監視カメラをしかけたところ、獣の姿も人の姿も映らず、山で見るという人影が写ったようだった。

 

「その人影は輪郭とかわかりますか。性別や年齢は判明してますか」

「そういうことはさっぱりです。なんというかモザイクがかかったように明確な姿がわからないんです」

「なるほど。被害は野菜のみですか?」

「わかっている範囲ではそうです。山で獣が死んでいるかもしれませんが、そこらへんはわかりません」


 頷いた蓮司は人影の行動範囲なども聞いて、聞き取りを終えた。

 そして除霊ではなく、保護することもありえるときちんと伝えてから家を出る。

 宗太はビデオカメラの電源を切って、蓮司の隣を歩く。


「ここまでは問題ないな。ちゃんと保護する可能性があることも伝えた。これであとで言った言っていないともめることがない」

「これまでもめたことはないんだけど、そういったことあんの?」

「たまにあると聞く。今回のように被害が小さいと納得してくれるんだけど、人に被害が出ているとどうしてもね」


 依頼人の家から山の入口に移動して、宗太がビデオカメラの電源を入れる。

 

「調査を開始してくれ」

「了解だ」


 蓮司はその場から山全体を眺める。

 ここからだと怪しい気配は感じられず、人影は見えない。

 依頼人の話ではきまった時間に現れるということはなく、不規則に目撃されているということだった。

 運が良ければ今遭遇ということもあったが、そんなことはなく山に足を踏み入れることにする。

 山を歩くことになるとわかっていたので、二人ともそれに適した靴だ。


「特になにか感じないかな」


 今はなにも感じないが、注意深く探るようにしっかりと周囲を見る。半年前の龍脈事件のせいで、物騒そうな気配には敏感になったが小さな気配は見逃しがちだ。

 それを大地たちに指摘されており、見逃しているかもと注意深く探っている。


「山に入るよ」


 宗太に声をかけると「オッケー」と返ってくる。

 警戒しながら山に入る。

 山はそこまで大きなものではない。山頂に行くだけなら一時間もかからない。

 まずはまっすぐ山頂を目指す。怪しい足跡がないかも注意していき、三十分ほどで霊力を感じたような気がした。


「勘違いかもしれないけど、霊力を感じた方向に行ってみる」


 こくんと頷いた宗太を見てから、蓮司は歩き出す。

 二分ほど移動して、かすかに霊力を感じ取る。


「間違いじゃなかったか。誰かいるな、話し合う気があるなら姿を見せてほしい」


 蓮司の声が周囲に響く。返事はなく、木の葉が擦れる音や鳥の鳴き声だけが聞こえた。

 再度呼びかけたが、同じ結果だ。


「こっちから行くぞ」


 霊力を感じ取れる方向へと進む、風景がぶれたかと思うと誰かが飛び出してきた。

 子供のような体格に、鱗で覆われた皮膚を持つ人間の男だ。顔つきは大人ものだ。

 蓮司と宗太は殴りかかられるが、さっと避ける。

 そのまま逃げ去ろうとした男の進路上に蓮司は、火の壁を生み出す。

 この半年の練習の成果がでていて、落ち葉や木が燃えるようなことはない。


「ううっ」


 男は足止めされて、別の方向に逃げようとしたが、そちらにも火の壁が生み出された。


「話し合いたい。それができると思う。どうか会話をしてくれないか」


 火の壁を維持して蓮司が声をかける。人に被害を出していないのなら、危険性はそこまで高くはないと蓮司は考えた。

 それに対して男は諦めたようにその場に座り込んだ。


「逃げる意志なしということでいいのかな。だったら火は消すけど」


 こくんと頷いた男を見て、蓮司は嘘をついて逃げようとはしていないと判断した。

 火を消すと、その判断はあっていたようで男は座ったままだ。


「自己紹介から始めようと思う。オカルト対策課所属の四級霊能力者笠山蓮司と言います。あなたはおそらく誰かに改造されたか先祖帰りだと思いますが」

「美波晴太。改造させられたということであっている。オカルト対策課ということは、あんたらはあれの追手じゃないんだよな?」

「あれというのが誰なのかわかりませんが、追手ではないですよ。俺たちは近隣の住民から最近山に人影が見えるので調査してくれと頼まれて山に入りました。そちらの事情を聞かせてもらえませんか」


 頷いた晴太は誘拐されて、改造されことを話す。先祖に妖怪の血が流れていて、それを引き出す実験のため狙われたということだった。

 

「見逃してくれないか。俺はこんな姿だともう普通の生活は送れない。こうやってひっそりと暮らすしかないんだ」

「境遇には同情しますが、放置はできません。畑を荒らされて困る人もいますから」

「そ、そんな」


 もう駄目だと落ち込んだ晴太に、蓮司は変わりの提案をする。


「おとなしく暮らしたいというのなら、情報提供をしてもらったあとに紹介できる場所があります。そこは奥まった場所にある土地で一般人とは離れて暮らせる場所です」

「どういったところなんだ」

「あなたのように事情があって静かに暮らしたい人たちが集まる村です。守るべきルールはありますが、それさえ守れば野宿しなくていいし、食べることに困ることもありませんよ」


 そこは志摩の故郷だ。人を集めて村を再興するために、事情のある人たちを集めることにしたのだ。繁栄させたいわけでもないので、事情のある人たちとひっそり暮らせればいいのだ。

 政府もその村のことは把握している。被害者同士でのフォローもできる場所ということで、物資提供をして関わりを持った。

 被害者を狙う人から守るためにも利用している。各地にばらけられるより一ヶ所にまとまってもらった方が守りやすいのだ。

 その護衛として、近頃は大人しくなった稔たちと交渉して雇っている。

 龍脈事件後も暴れていれば交渉などしなかっただろうが、静かなもので当分暴れるようなことはなさそうだと考えて交渉したのだった。今は大丈夫でも今後暴れる可能性はあるのでその監視も兼ねていた。それは稔たちも察している。

 村のルールはそう難しいものではない。無暗に暴れないこと。住民と協力すること。ほかの人の過去を好奇心で探らないこと。といったくらいなもので、理不尽なものはない。

 それを伝えると晴太は行きたいと言う。


「聞き取りのあと、あちらに連絡しますね」


 蓮司はスーツケースからクリップボードと紙を取り出して、晴太から事情を聞いてメモに残していく。

 人体改造ということで藍と詩織を狙っていた老人かと蓮司は思ったが、別人の犯行だとわかる。

 書いた紙をスーツケースに戻して、スマホを取り出し稔に連絡を入れる。


『兄さん、なにか用事?』

「うん、人体改造の被害者を見つけてね。そっちに住まないかって提案してみたら行きたいって答えた。それで連絡をとったんだ」

『わかった。辰馬たちや住民には話を通しておく。いつでも連れてきていい』

「ありがとう。今は仕事中だからこれで切るよ」

『無茶はしてないだろうね。また友人を泣かせるようなことはするなよ』


 友人とは瑠璃のことだ。

 龍脈から帰ったあと、蓮司は治霊院に呼び出され検査を受けることになった。

 本部から蓮司がやったことの報告が届いており、それを読んだ瑠璃が泣いたのだ。

 事情を知れば怒るだろうなと思っていが、まさか泣かれるとは予想しておらず、当時の蓮司はおおいに焦ったのだった。

 年の近い異性に泣かれる経験は初めてで、どうすればいいのかわからない蓮司は泣かれながら胸を何度も叩かれてされるがままだった。

 二度とここまでの無茶はしないと約束させられて、また泣かれないためにも約束を守っている。


「してないしてない。あの騒動が終わって、大きな事件もなかったろ」

『そっか、よかった」

「そっちはどうなんだ」

『以前関わった研究者の老人が村に襲撃してくることはあるが、問題なく撃退できているよ』


 計画を邪魔された報復のために、お金をかけて稔たちを見つけ出した老人はバージョンアップした改造人間を引きつれて襲いかかった。

 だが優斗の鍛練相手くらいにしかならず、財力を減らしながら定期的に襲撃を続けているという状況だ。

 オオヅノも住民を守るために協力してくれていて、老人が目的を達することは不可能だろう。

 そのオオヅノを見た住民が信仰することで、オオヅノはあの土地を守る土地神として復活の道を歩んでいた。


『じゃあ切るから』


 無茶していないとわかりほっとしたような雰囲気で稔は通話を切った。

 蓮司があのとき寿命を削ったことで、少しばかり稔は過保護になっていた。


「受け入れてくれるってさ。オカルト本部で検査を受けたあと、そこまで連れて行くことになる。手続きとかあるし半日ほどここでおとなしくしていてほしい。問題ないかな?」

「一人で待つのはちょっと。もしかすると待っている間に追手がくるかもしれない。君たちと一緒に行けないか」

「そうですね……」


 宗太に確認したいことがあったが、試験官に質問していいのかわからず大地に連絡を入れることにする。

 どうしたと聞いてくる大地に事情を話して、竜宮一家の誰かに車を寄越してもらうことはできるか聞く。


『大丈夫だ。すぐにそっちに向かってもらうから待っててくれ』

「わかりました」


 通話を切った蓮司は晴太に、二時間くらいここで待機と伝える。

 晴太は頷いて、そのまま大人しく待つ。

 そうして一時間半を過ぎた頃、蓮司のスマホに竜宮父から到着の連絡が入ってくる。

 移動しようと晴太に声をかけて、一行は山を下りる。

 山近くの私道に竜宮父の車はあって、それに晴太を乗せる。先に拠点へと帰ってもらい、蓮司と宗太は依頼人に解決したと報告する。


「結局なにがいたのでしょうか」

「マッドな研究者に肉体を改造された被害者ですね。追手から隠れていたようです。カメラに映らなかったのは、認識を誤魔化す霊能力を持っていたようです」

「そんなことがあるのですね。その人はもういないのですか?」

「はい。こちらで保護して穏やかに暮らせる場所へと送ることになります」


 そうですかと依頼人は納得したように頷く。

 畑を少し荒らされたくらいの被害だけだったので、追及することもなく事件解決を受け入れた。

 依頼人の家から出た二人は、スクーターで拠点まで戻る。

 宗太はカメラを持って大地のところに向かい、蓮司は報告書の作成を進めていく。


「仕事はどうだった」


 孝一が勉強の手を止めて聞く。

 特に問題なくやれたはずだと返し、今日の仕事内容を話す。

 保護という方向での解決に孝一も納得した様子だ。


「聞いたかぎりじゃ問題はないな。昇級できるだろ」

「いよいよ三級ですか。でも最初に掲げていた目標はすでに達成できているから、いまいち達成感がないというか」

「まあ昇級はめでたいし、予定の合うやつを集めて祝おう」

「ありがとうございます」


 宗太のときも同じように居酒屋を予約して祝ったのだ。

 

「さっさとやらないと、お前はあちこちから呼ばれて祝う暇がなさそうだよな」

「必要とされるのはありがたいですけど、俺じゃなくてもいいって仕事もありましたよね。禁足地の管理なんて、俺じゃ無理ですよ」

「やりての若手って話を聞いて繋がりを得ておこうと思って依頼を出したんだろうなぁ」


 三級になればあちこちに行けるという話はみつると保もどこからか情報を仕入れたようで、ミュージア・コムの事務所のおはらいをやってほしいと連絡もあった。

 ほかにも京都五山送り火の火として使いたいという話も入ってきている。

 そういった各地からの依頼が入ってきて、あちこちへの出張が予想されていた。

 孝一と話しながらも蓮司は報告書を仕上げていく。もうその作業も慣れたものでシャーペンはスムーズに動いている。

 書き上げた報告書を持って事務所に行くと、大地と宗太がパソコンで今日の記録を見ていた。


「こっちはもう少し時間がかかるから、保護している人の相手をしていてくれないか」

「わかりました」


 報告書を渡して、客室にいる晴太のところに向かう。

 落ち着かない様子だった晴太は知っている顔が入ってきたことに少しは安心できたようで、蓮司は話し相手になる。

 稔から聞いた村の様子などを話して、どういったところで暮らすのか想像できた晴太は将来への不安が晴れたようだ。

 誘拐される前の暮らしは取り戻せずとも、逃亡中のような不安と恐怖と飢餓は解消される。それだけでもかなり嬉しいようだ。

 話しているうちに宗太に呼ばれる。

 話し相手を交代して事務所に向かう。


「来たな。座ってくれ」


 近くの椅子を勧められて蓮司は座る。


「結論から言うと合格だ。記録と報告書を本部に送って本決まりになるが、大きな失敗もなく仕事を終えていた。本部も同じように判断を下すはずだ」

「よかったです」

「ここからは仕事の始めからの評価を話していくぞ」


 大地は依頼人との話し合い、山にいる何かに対して保護も視野に入れた方針、実際に晴太を探して刺激するような言動をしなかったこと。そこらへんについて細かく評価していく。

 もしも晴太が敵対していた場合の対応の仕方といったことにも話は広がって、一時間をかけた話し合いは終わる。

 

「本部から新しい手帳が送られてくるから、その日から三級だ。昇給もその日からで、県外への仕事もその日からになる。古い手帳はシュレッダーにかけて、焼却する。重要なことをメモしていたらそれは別のものに書き写しておくように」

「わかりました」

「お前だと二級への昇級もそう遠くないかもしれないな」

「そうですか?」

「大きな事件に関わっていて、知識以外の昇格条件は満たしている。知識はこのまま真面目にやっていれば身につくものだ。本部もお前を上げたがるだろう。あとは霊力質度が3まで行くかどうかで、一級も見えてくる」

「いきますかね」

「お前は通常の霊能力者とは成長の仕方がおかしい。だからもしかするとという考えがよぎる。本部もそれに期待しているのだろうな。まあ今は順当に知識と経験をみにつけていくことだけを考えていればいいさ」

「そうですね」


 話を終えた蓮司は、晴太の護衛のため今日は拠点に泊まり込む。

 そのことを祖母に連絡する。そのあとは晴太の食べたいものをネット注文し拠点まで運んでもらう。

 ひさびさの味に喜ぶ晴太と穏やかに夜を過ごして、翌日の午前中に本部からやってきた護送車に晴太を乗せて送り出す。

 今日は休みになった蓮司は自宅で昼過ぎまで寝てから、三級昇格を瑠璃に連絡する。


『おー、おめでとう』

「ありがと」

『今後あちこち行くことになるんだろうけど、無茶したら駄目よ?』

「わかってる。約束したからね」

『覚えているならいいの。ほんとにあの報告を読んだときは頭が真っ白になったんだから。二度とあんな報告書は読みたくないわ』

「俺も泣かれて頭が真っ白になったよ。今後は日本各地のお土産を楽しみにしてて」


 漫画やアニメのモデルになった場所の写真とかもお土産にするつもりだと話すと、瑠璃はとても喜ぶ。


『今から写真や美味しいお土産が楽しみだわ』


 仕事に戻るという瑠璃が通話を切り、蓮司は昼食をとるため家を出る。

 昼食後は本屋に行ったり、瑠璃に勧められた映画を見たりしてのんびり過ごそうと思いながら歩く。

 この一年を振り返り、前半は濃い時間だったとしみじみと思う。

 稔との再会、そして以前のように一緒に過ごすことは無理でもいつでも連絡を取り合えるようになったことは喜ばしい。

 目的を果たした今、あの濃い半年間のようなことは勘弁願う。

 今後は県外に呼ばれることもあり、なにが起こるのかとまだまだ続くであろう霊能力者生活に思いをはせる。

 いずれ日本各地どころか世界各地に足を運ぶことになる。そんな未来を今の蓮司は予想もしていなかった。


あとがき

これで終わりになります

ここまで読んでいただきありがとうございました

仇である悪魔を倒して、きりがいいのでここで終わらせることにしました

明日ウィキペディア風に蓮司のことを書いたものをあげて終わりですね

このあとの蓮司は20歳までに一級認定を受けて、以後世界のあちこちから火や瘴気に関した事件解決のため呼ばれるといった人生です

今後の予定ですが、7月から異世界転生の話を始めようと思います

人間に敵対する魔王がいるけど、それはほかの人に任せてやりたいことをするという主人公の話になります

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