❦クエスチョン 〜神様の考えた優しいクイズ~
永若オソカ
「ズルい」ってなに?
書道といえば、学校でイヤな思い出があった。
ぼくが小学四年生のころの出来事だ。
昼休みに先生のお手伝いをすすんでやってしまったことが運の尽きだった。
任された作業は簡単だった。
習字の授業で提出したみんなの作品を、教室の後ろのカベに貼るだけ。
誰にでもできるけど、面倒くさい作業。それをぼくは黙々とこなしていた。
すべての作品を貼り終わると、先生がぼくにこう言ったのだ。
「四手坂くんは仕事がていねいでえらいね」
「お疲れ」や「ありがとう」ではなく、「えらいね」。あのときぼくは先生の言葉に違和感を抱いた。
ちゃんと指示に従えたぼくをほめてくれた。
うん。やっぱり気になる。
「他の人が同じことしても、ほめられないのに」
そのあと、ぼくがほめられていたところを見ていたクラスメイトから、問い詰められた。
その子も先生の言葉がけにギモンを感じていた。
いや、先生にほめられたぼくが気に食わなかったのだ。
「なんで四手坂くんだけほめられるの? ズルいよ」
ぼくは責められる理由におどろいた。
たしかに、ぼくだけほめられるなんて不平等だ。
でも、ほめられることはズルいのか?
「ズルいの?」
「そうだよ。ねえ、なんでほめられるの?」
「さあ。じつはぼくも、なんで先生にほめられたのか、わからないんだ」
正直にこたえると、クラスメイトは目をパチクリして固まった。
「だって、ぼくはていねいに紙をはろうと心がけていたんだ。当然ていねいな仕上がりになっているよね」
「そ、そうだったんだ」
「紙をはっただけで『えらいね』って言うなんて不思議だよね。先生は、ぼくが半紙を貼れないとでも思っているのかな?」
「ええ? そんなわけないじゃん……」
クラスメイトは困った顔でうつむいてしまった。
そういえば、その子は自分が一番でありたい性格だった。
ここで終わっておけばよかったのに、ぼくは余計なおせっかいを焼いてしまった。
「ちなみに、キミはガサツでクラスの友だちにすぐ『バカ』って言うから、ほめられないんだよ。だから……」
先生からほめられたいクラスメイトのために、ぼくはアドバイスをしたつもりだった。
しかし逆効果だった。
クラスメイトのほめられない理由を教えてあげたぼくは、怒りのツッパリをくらい、ボコボコにされたのだ。
その時は、ぼくが偉そうに指図したから、気に食わなかったのだと思っていた。
でもそれだけじゃなかった。ぼくは人の悪口を言ったんだ。
ぼくが口にした何気ない一言で、相手を怒らせてしまうことは何度もあった。
なぜあのとき相手が怒ったのか? 時間が経ってようやく気づく。
どうしてすぐに謝れなかったのか、あとになって罪悪感に押しつぶされそうになる。
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