第5話 神頼みの溝落とし

 マロニーズとのバトルの日が二週間後に迫ってきた。。あれからしばらく立って今はもう9月に入っている。僕はその日に向けて三回目のチューニングをすることにした。

「何つけようかな。パワーチューンはもういいとして、、、あ、ウイングをつけよう。」

 ということで、チューニングショップに行って、どでかいGTウイングを買ってきた。でも、それだけでは剛性が足りないから、一緒にロールバーを買ってきた。

 翌日、取り付けを開始する。まず、後部座席を取っ払って、ロールバーを車体にねじ止めしていく。その作業はチューニングショップの人に手伝ってもらいながら、半日で終了した。午後からは、いよいよウイングの取り付けに入る。屋根に穴を開けて、ウイングをビス留めしてから、ネジでしっかりと締め直す。そうしたら完成した。カーボン製のウイングが蛍光灯の光を反射してかっこいい。しかも、後部座席を取り外したことにより、車重量は千二百六十キログラムから、千二百キログラムまで減らすことに成功した。

「これでボディ合成が上がって、高速域でのダウンフォースの形成に繋げることができるぞ。」

 正直走りにはあんまり影響はないかもしれないけど、少し軽くなったことによって、加速も早くなったはずだ。そういえば、まだ七万円ほど残っていたから、ステアリングも交換することにした。いい物がないか探していると、

「これだ!」

 MOMOのブラックレザーのステアリングがカッコ良さそうだった。僕のGRヤリスは白黒模様だから、ちょうど合いそうだ。

 次の週、ステアリングが到着したから、早速取り付けてみた。エアバッグがないから、安全性は低くなる。でも、かっこいいから良し。ステアリングはめっちゃ握りやすくて、グリップ力もあってよかった。

「とりあえず、今日と明日はしっかり練習しておこう。」

 この二日間はとりあえず練習しまくった。


 そして訪れたバトル当日。愛車に乗り込んで、会場に向かう。あれから二ヶ月間。相手の車は前より進化しているはずだし、しかも相手のホームのコースだ。でも僕も負けてはいられない。何せこの二ヶ月間、休日だけじゃなくて、平日もたまに走り込みをしているんだ。

 三十分ほど走って、春雨峠に着いた。秋雨峠は、大きく二つのセクションに分かれる。カーブのセクションと、直進セクションだ。しかし春雨峠は違う。大きく四つのセクションに分かれる。高速カーブ、直進、低速ヘアピン、そして最後の橋のセクションだ。僕には事前に考えてきた最高の計画がある。それはまあ、その時に話そう。

 車から降りると相手がお出迎えしてくれた。みたところこの間のセリカは新品の車高調を入れて、brembo製ブレーキをつけていた。でも、エアロパーツはボロボロのままだった。

「まあ今回もよろしくお願いします。」と、僕が挨拶すると、

「そうだな、よろしく」と返してきた。

 とりあえず、細かいことを決めていく。

「じゃあまずはー」僕がそう言いかけると、

「じゃあとりあえず下からね、そっちはお前が出るんだろ。」と、先に言いやがったので、

「あのさあ、それって僕という一個人に対する権利の侵害だよね。」と、某アニメのノミ以下キャラのようにつっかかってみた。そうしたら案の定、相手は反論してきた。

「は?ふざけんなよ、それはそうだけど文句あっか?」

「まあ、とりあえずバトルで蹴り付けましょうよ。」と、僕が諭すと、

「そうだな、お前のことヒイヒイ言わせてやるよ。」

 その後すぐに勝負は始まった。

「カウント行きます。三、二、一、ゴー」

 一気にサイドブレーキを解放する。でもここはあえて相手に先を行かせる。その理由はすぐにわかるさ。

「ハッ、あんなに意気込んでたのにスタートで遅れをとってんじゃないか。」

 最初の高速コーナーに入る。やはり地元なだけ会って置いていかれそうになるくらい速い。それでも負けじと食いついていく。

「くそっ意外にやるな。でも、俺のこのチューンされた車を舐めるなよ。」

 だんだん離されていく、高速コーナーセクションを抜ける頃には、三十メーター程の距離が空いてしまっていた。高速コーナーセクションから、低速ヘアピンセクションに入るまでの百メーターぐらいの小さい直進でその差を十メーターほどに縮める。

「くそっなんでこんなにこの変な車は加速と速度の伸びがいいんだよ。」って相手は思っているに違いない。そして、低速ヘアピンセクションに入る。相手の車はアウトインアウトをしっかり仕上げている。

「やっぱり完璧に仕上げてきたか。でも僕にはとっておきがある。」

 それを仕掛けるのは四つヘアピンがある内の最後のヘアピンだ。そこで勝負をしなければ負けてしまう。なぜなら高速直進セクションからは道幅が狭まり、追い越すこともできないからだ。

 そんなこんなで、最後のヘアピンが近づいてきた。事前に調べていた情報によると、この峠にはカーブの内側に水を流すための溝があるらしい。そこに突っ込む。某人気走り屋や漫画の有名な技を再現しようということだ。

 僕はフルスロットルでレッドゾーンギリギリまでぶん回す。頭をセリカと車の間に捩じ込んで突っ込む。僕はこのカーブに勝負をかける。

「オラァーいっけぇー」

 僕はほとんど神に祈るような感じで突っ込んでいった。

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