5月20日(火)

 ――『犯罪を犯した犯人が、昨日の朝、女子中学生によって捕まえられました』

「ははっ」

 翌朝、「いい朝ですね」を見て、私は誇らしげに笑う。

「この私が、犯人を捕まえたんだよ! 警察官になろうかなぁー!」

「湊、通訳者になる! って言ってなかったっけ?」

「覚えてないよ。っていうか、あれ? もう家出るの?」

 母さんは荷物をまとめて、キャリーバッグを手に取る。

「まあ、ね。仕事も終わったし。湊も自分のタイミングで帰ってくるのよ。羽未うみも会いたがってると思うしね」

 思わず、口をつぐむ。下唇を噛む。

「……じゃあね」

「う、ん」

 結局何も答えられないまま、母さんは家を出た。

「あーあ……」

 羽未。もう二度と、会えない子。唯一の、私の妹。思い出したくなかったんだけどなぁ。

「調子が狂うな……」

 もういいや、学校に行こう!

「行ってきます!」

 考えることは、私の苦手分野だ。ここは歩いて、話して、一時的に忘れちゃおう!

「峰山」「湊!」

「おっはよう、二人とも!」

 この場所が、すごく居心地いい。

「今朝のニュース見た? 私の活躍見た!?」

「女子中学生って峰山のことだったのかよ」

「すげえな、湊!」

「でしょでしょー!」

 鼻が高いよ、私は。この手で犯人を捕まえたんだから!

「逆にどうやったら捕まえられるんだか」

「『いっけなーい、遅刻しちゃーう!』って叫んだらぶつかったんだよねー」

「運が悪いのかいいのか」

「勝手に袋の中身を見たら、近所のおばちゃんの高級品ばっかりで」

「勝手に袋の中身を見た時点で、なんかだめじゃね?」

「きょ、きょきょきょ、許可、もらっ、もらったし?」

「もらってないんだな」

 何も言い返せない……。

「でも、よくわかったな、それが盗んできたものだって」

「見たことがあるからね」

「でもそれ、山程あったんだろ!? なんでわかるんだよー」

「え、覚えた……?」

 逆にそれ以外あるのかな。

「峰山が国語と数学が苦手な理由がよくわかった。……社会がなんで苦手なのかは謎だけど」

「どゆこと?」

「よくそれで中学受かったな、湊!」

「ああ、うん。過去問丸暗記したからね」

「逆にすげえな!」

「え、みんなやってるんかと思ってた!」

「やるわけないだろ」

 なんかさ、ぶっちゃけ過去問解くより覚えるが早いんじゃね? ってことに気づいたんだよね。慌てて過去問を買ってきたんだよなー、入試の二日前に。

 なつかしー。

「何気に偏差値が高いこの中学で、こんな馬鹿が受かったのはそういう理由か」

「んー、辛辣ッ!」

 ゾゾゾ、ってするね。

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