第6話 カップ焼きそばをわざと失敗してみた話

 昔、とあるゲームでこんなセリフがあったんじゃ。


 『俺はカップ焼きそばを作る事に失敗した事があるぞ』と。


 そんな内容だったはずじゃ。そしてワシは考えたんじゃ、カップ焼きそばの失敗とはどうやったらできるんじゃろうかと。


 湯切りの時に麺を台所のシンクに落とす? しかしそれは太古の昔ならともかく、そのゲームをしていた時代はもうすでに湯切り口ができており、わざとしないとそんな事は不可能じゃった。


 なので次に思いついたのが、粉末ソースじゃった。


 あれを麵に入れないで食べる、それは失敗と言うほどの事ではないじゃろう。あとから入れればいいしのう。


 ワシが思いついたのは、粉末ソースを湯切りの前に入れてしまう事じゃった。


 つまり粉末ソースを入れる順番を間違えた。これなら立派な失敗だと思わんか?


 急に思い出したワシは偶々今日は一人だったので、実行する事にしたんじゃ。


 こんな事しているのが家族にバレたら、怒られてしまうかもしれんからのう。


 とにかくワシは実行したんじゃ。麺にかやくを入れてお湯を入れ、さらに粉末ソースをぶちこんだんじゃ。


 そしてすぐに蓋をした。中を見てしまったら、われに返って自分がすごいバカに見えるかもしれないからのう。


 そして数分後、初めて中身を見て見たんじゃ。……粉末ソースのせいか、スープにいい匂いがして、結構おいしそうだったんじゃよ。


 その匂いで、一つの料理を思い出したんじゃ。昔TVか何かで聞いた『スープ入り焼きそば』。食べた事はないど、これじゃね? と思ったんじゃよ。


 しかし今回は失敗しなければならないんじゃ、『スープ入り焼きそば』になって成功するわけにはいかん。だからワシは、お湯を捨てた。


 匂いは薄くなり、麺もかすかに色はついているがほぼ白じゃった。


 そしてテーブルに置き、おもむろに口に入れた。


 ……薄いけど、これはこれでありじゃないじゃのう?


 ダイエットの時に食べたくなった時とかにいいんじゃないかのう?


 ワシにとって料理の失敗とは、口に入れるのが苦痛になるような料理の事なんじゃ、これは失敗とまでは言えなかったんじゃよ……。


 その証拠に、全部普通に食ったしのう。


 ワシはあのゲームの主人公に……、負けた。負けてしまったんじゃ……・


 そう痛感したんじゃ。


 ところで誰にも言えないのでここに書いてみたんじゃが、同じ事をやった人はいるのかのう?

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