【恐い話】

感想楽しみさん

第1話マネキンと美容院

地方の古びた美容院「美しの館」。この美容院は昼間こそにぎやかだが、

閉店後は恐ろしい噂がささやかれる場所だった。


数年前、この美容院で美容師が消えた事件が発生した後、深夜になると

血を流すマネキンが現れるという話が広まっていた。




その日、新人美容師のアヤカは一人で閉店作業を任されていた。

時計は夜の10時を回り、店内には誰もいないはずだった。


せいそうを終えたアヤカが道具を片付けようとしたとき、

不意に背後から「カタン」と何かが倒れる音がした。



振り返ると、店の奥に置かれているマネキンが倒れていた。


見慣れた練習用のマネキンだったが、どこか違和感がある。

近づいてみると、マネキンの首元から赤い液体がポタポタと

流れているのが見えた。


「……え? これって、血?」

て驚いて手を

伸ばそうとした瞬間、マネキンの目がカッと開いた。





パニックになったアヤカが鏡のほうを見ると、そこに映る自分の後ろに

倒れているはずのマネキンが立っていた。その顔は、まるで

生きている人間のようだ。だがその目には白目しかなく、

裂けた口から血がしたたり落ちていた。




マネキンがゆっくりと口を開き、不気味な声でささやく。


「……私を、きれいにして……」


突然、店内に

「チョキン、チョキン」とハサミの音が響き渡る。鏡の中には、

浮かぶハサミを操りながらマネキンが笑っている姿が映っていた。




アヤカは逃げ出そうとしたが、足元に広がる血の海に足を取られ、

動けなくなった。その血は、倒れていたマネキンから次々と湧き出している。

まるで何かを求めるかのように、血はアヤカの足にまとわりつき、

徐々に身体を引きずり込もうとする。


そのとき、耳元で低く響く声

が聞こえた。

「きれいにしてあげる……永遠に、ここで……」




美容院にやってきたスタッフが見たのは、椅子に座らされたマネキン

だった。だがのマネキンの顔は、どこかアヤカに似ている。

しかも首元には、血のような赤い線がくっきりと浮かんでいた。



さらに奇妙なことに、美容院の鏡にうっすらと血の手形が残されており、

その中心には言葉が刻まれていた。

「次は、あなた。」


噂が現実に…



その日から、閉店後の美容院では必ずハサミの音とともに、

血を流すマネキンの姿が目撃されるようになった。

そして、美容院にとまり込んだ者が翌朝戻らなくなるという噂が、

街中に広がっていった。




血を流すマネキンは、消えた美容師の念なのか、

それとも別の存在なのか。誰も真相を確かめることはできない。

ただひとつ言えるのは、夜の美容院には近づいてはいけないということだ…。



教訓

美容院のマネキンが血を流し始めたら、絶対に手を伸ばしてはいけない。

そのマネキンが求めているのは、新しい“魂”だから…。

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