第48話

もちろん真琴だって、好きでたまらない古庄に対して、こんな風に接したくはなかった。

今までのように、仲のいい同僚として、楽しい時を過ごしたい。



けれども、これは真琴の自己防衛だ。



こうでもしなければ、心のバランスを崩して、仕事にも支障をきたしてしまいそうだった。




古庄の方もさすがに、そんな真琴の態度の変化に気づいたらしく、あまり話しかけて来なくなった。



授業の空き時間、周りに人がまばらな中で二人並んで座るのが、とても重苦しく感じた。


静かな空気に響く、古庄の新聞のページをめくる音さえも、真琴の心を切なく削った。






時折、古庄から寂しそうな目で見られているのを感じ取ってはいたが、真琴はこれでいいと思った。



こうしている内に、痛みしか感じないような古庄への切ない想いも少しは薄れ、制御できるようになる……。


何もなかったかのように普通に話せる日が、再び訪れると……。







そして、明日から夏休み。

これで今までのように、古庄と密接に関わることも少なくなる。


毎日の緊張状態から解放されることに、真琴は少しホッと安心した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る