「結婚」という人生の大イベントを前にして、何の変化もない古庄に対して、真琴はもう以前と同じように古庄に接することはできなくなってしまった。

何でも共有して一緒にいることが自然だったのに、出会った頃のように、いや、その頃以上に、古庄の側にいることが息苦しい。

古庄の存在を意識するだけで、想いが募ってしまう。

その想いは強くなれこそすれ、褪せていくことはない。

言葉を交わせば、この想いを古庄に知られてしまうのでないかと怖くてたまらない。

細胞一つ一つから古庄への想いが溢れ出してくる…そんな気がして、真琴はもう古庄へは近寄れなかった。

「賀川先生。ちょっと頼みたいことが！」

以前と変わらず古庄は真琴へと声をかけてくる。

「すみません。今はちょっと……」

しかし、真琴は逃げるようにそこを去るしかなかった。

それまでは古庄へとしていた些細な確認事項も、向かいに座る戸部にするようになった。

露骨で不自然な態度を取っていることは、真琴自身が一番よく分かっている。

こんな態度は、打ち解ける前の素っ気ないものよりももっとひどい。

もしかして、古庄は気を悪くしたり、傷ついたりしているかもしれない。

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