桜の匂い

第36話

そんなことがあってから、真琴は古庄に対して、もう身構えることはなくなった。


身構えることがなくなると、古庄の気さくな性格を前面に感じられるようになって、その端正な容貌もあまり気にならなくなってきた。



困ったときにはお互いフォローし合い、仕事の確認をし合うだけではなく、くだけた世間話にも花を咲かせた。


楽しく会話が弾むときには、真琴も明るく笑顔を見せるようになる。




「そういえば賀川先生って、俺の前任校にいた先生に似てるんだよなぁ」



お互い授業の入っていない金曜日の7時間目、席に着いてお茶を飲む真琴に、古庄が話しかけた。




「……それって、女の先生ですよね?」




真琴の合いの手を聞いて、古庄が吹き出す。



「もちろん女だよ。男なわけないだろ?」



「さぞかし仕事もできて、綺麗な先生だったんでしょうね」



自分に似ていると言われて敢えてそう言ったのは、真琴なりの冗談のつもりだった。



「そう!そうなんだよ。すごく綺麗で可愛くて、スタイルも完璧。仕事も俺なんかよりもずっと出来てたし。日本史の先生だったんだけど」

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