第24話

真琴が図説の写真をコピーするために立ち上がろうとすると、隣の古庄がそれを制した。



「こういう仕事は俺がするから。どこをコピー取ってくればいい?」



そう言ってくれたものの、顎で使うような気がして真琴は躊躇した。



「手伝うために俺はここにいるんだから、遠慮なく言ってくれなきゃ」



古庄からそう促されて、真琴はおずおずと図説の中の写真を指し示す。



「それじゃ、これをお願いします」



「わかった」



古庄は頷くと、足早にコピー機に向かい、すぐに任務を果たして戻ってきた。



「他にすることは?問題集のどこを使うのか決まっていたら、俺のパソコンで文字起こしするよ」



真琴は、科目も違う古庄に手伝ってもらえることなどない……と思っていたが、古庄は自ら仕事を見つけてくれる。


問題を作るに当たっての機転といい、古庄は自分など到底及ばない出来る人間なのだと、真琴は痛感する。



普段新聞ばかり読んでいて、あくせく仕事をしている風ではないのに、きちんとやるべきことをこなしている古庄の余裕を、真琴は羨ましく感じていた。

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