第十一節『報告そして小隊名』
その日はそのまま解散し、僕と白亜は男子寮に戻った。
帰る途中に白亜から、「ミクリアどうやって口説いたんだよ」って何度も聞かれたがどうって聞かれてもな。
僕はその時の会話を思い出す。
…
[やっぱり頭のそれ、まだ治ってないんだな]
[なっ!? べっ、別にいいもん。キニイッテルシ]
[まあ、かわいくないと言えば嘘ともいえないこともない]
[うっ、かっ、かわ…。そ、それは置いておいて。冒険課程、うけるの?]
[そうだな。最も、まだ隊員も集まってないけどな]
[だから、ぼく]
[悪いな、こんな理由で]
[実は…]
[いや、嫌なら行ってもらってもいいんだけどさ…]
[ううん。ぼく、単位、足りない。だから、なんか、しないと]
[フッ、なんだ、ミクリアも足りてなんじゃん。俺もあんまり足りてないんだよね]
[なっ、まあそう]
[でもそんなに足りてないのか?]
[さ、最難関の色光学で論文出さないといけないくらい]
[……。お前、一学期なにしてたんだ]
[へへへ、実験]
[はあ、まあ単位ないのはわかったけど冒険課程出るほどなのか?]
[やりたいことも、ある]
[そっか。ありがとな]
…
これで終わりだ。本当に特に何もなかったのだ。
あの軽さで冒険課程に出るのもどうかと思う。
が、そこはミクリアだ。何かしらの考えがあるに違いない。
「まじでなんもなかったぞ」
「なんだよ、期待したのに」
「色恋展開は望めないだろ。ミクリア失恋して学校休んでたんだから」
「ああ、それは俺の作り話。どんな反応するのかねって思って」
「はあ? なんだそりゃ。じゃあなんであいつ学校休んでんだよ?」
「知らね。なんか色々とあんじゃねえの」
だめだ、やはりこいつはあてにならない。ミクリアとララがいなければ本当に白骨になってしまうなこれは。
そんなことを考えているといつの間にか寮室に戻っていた。
隊員の申請は明日アンセントワート先生に渡してもらうとして、今日はもう疲れた。マントをもとの場所に掛け制服のボタンをはずしベルトを緩める。二年生になって新調した真っ白の制服ももう使わなくなるのか。
改めて考えてみると、やはりグッとくるものもあるな。そう思いながら二段ベッドの下の段に横たわる。
もうすぐここも見納めか。そして僕はゆっくりと眠りについた。
※
翌朝、登校をいつも通りぐちを垂れながら終えアンセントワート先生のところに向かう。今日はミクリアとララも一緒だ。ミクリアは久しぶりの学校で少し緊張している様子である。それを励ますようにララが何か言っている。腕を振り回しているが何を話しているのだろうか。
そうして重厚な柱の間を抜け長い廊下に入る。木目と岩肌が調和した廊下を歩き終え職員室まで来た。足が筋肉痛の時のように動かしづらかった。
さあ、気合入れるぞ。力を入れ一歩前に出る。そしてドアをノック。
中からアンセントワート先生が出てくる。
いきなり真打登場とは。こっちも一気にいってやる。
「先生大変お待たせいたしました。こちらが小隊に加わるミクリア・クローバーとララ・アレナ・シーカです」
「申請書はどこだね」
ちっ、眉一つどころか心臓も動いてないんじゃないのか? そんなことを思いながら二人に目配せをする。
「確かに確認した。まさか本当に見つけてくるとは。なんとなく誰を連れてくるかは予想していたがね。まあいい。正式に小隊として認めるために学校長に話しておく。放課後の任命式に出席するように。正装でだ。いいかね?」
「わかりました。これで失礼します。」
「ふうう、やっぱあれの前にいるときついな」
「何言ってんだ。お前なんもしてないだろ。というか僕以外誰もしゃべってないだろ」
「だって怖かったし」
そう顔を赤くしながら言うのはララだ。
「うん。」
それにミクリアも同調する。全くこんなんで大丈夫なのだろうか。そんな思いを抱えながら最初の教室へと向かった。
※
「おーい」
昼休み。久しぶりに四人で食堂に行くと後ろから、聞きなれた声がした。
「君たち。小隊けっ—ゴホッ、小隊の結成おめでとう」
「あれ、モネ先生? どうしたんですかそんなに慌てて」
僕は息を切らしている先生を不思議に思って質問する。
「いやね、伝えなきゃならないことがあってね」
「というと?」
「小隊名! まだ決めてないでしょ? 放課後の任命式までに決めておいてね! それじゃあ!」
そう言ってまた走って行ってしまった。忙しいのかな。それよりも、
「小隊名、どうするよ」
そう、それが問題だ。残念ながら僕とララには絶望的にセンスがない。ミクリアも何か変な名前を本気で提案してきそうである。
ここは大人しくセンスとポテンシャルの塊こと白亜さんに聞いてみよう。
「白亜なんかいい案あるか?」
「んー」
「あっ! 四傑とかどうか—」
「「却下」」
僕らは速攻でララのひらめきを打ち捨てる。そんな中二病みたいな名前どうかしている。十六歳にもなって恥ずかしすぎる。
ミクリアも何か言いかけたがシュンとなってしまった。先人を見て学んだのだろう。
長考の末白亜は答えを出す。
「じゃあ——」
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