2/28 「魚ホラー」解説!

 都市伝説解体センター買っちゃったよ! 明日から少しずつやるよ!


 ……そういう日常的な話も交えつつ、この日記は進行していくことになります。そうでないと書くことがなくなってしまうかもしれないので……。


 さて、今のところ「魚」にまつわる企画が3つありますので、ここで整理したいと思います。


「魚」……魚エッセイ。最初のスパムについて書かれたもの。

『魚』……魚ホラー。カチカチホラー。

『魚DMモキュ』……これから書こうとしているもの。モキュメンタリー。


 で、「魚」と『魚』が紛らわしすぎるので「魚エッセイ」「魚ホラー」で統一することにします。そして今回は「魚ホラー」の話をします。


【『魚』】

https://kakuyomu.jp/works/16818093094886380027


 まず、自主企画で「4000字以下」という条件が提示された時点で「掌編なんだから今すぐ出せ」という圧を感じました。そして「短距離で怖がらせる」には何が必要か考えました。


 まず「ガチホラー書きます」と言っていたので「ガチガチ……がちがち……カチカチ」と冷凍マグロが頭を過りました。そんで冷凍庫に閉じ込められて死んじゃった人が魚と間違って料理されて提供される、みたいなのを思いつきました。しかし、あまりにも現実的ではないので特にインパクトもなく「きゃー!」で終わってしまいます。ただ着想の「冷凍マグロ」は大事にしようと思いました。


 そこでカッチカチというワードを元に頭の中を検索したところ「まるはっちん」という洒落怖がヒットしました。なんて不謹慎なヒットの仕方なんでしょう!


 洒落怖の「まるはっちん」とは、詳細は検索してほしいのですが平たく言うと知的障害のある息子と母親と、そのクラスメイトの話です。つまり「魚ホラー」の要素はここから持ってきました。ちなみに「まるはっちん」は20年ほど前の話を書いたという体で20年くらい前に掲載されたものなので、ホラー部分をさっ引いても現代の感覚で読むとちょっとキツいものがあります。そういう意味でも、負のノスタルジーって奴です。


 で、親と子のホラーの鉄板と言えば「六部殺し」です。ざっくり言うと金銭を奪うために旅人を殺した家の主人の子供がある日突然「俺を殺したのはこんな晩だったなあ」と言うという筋で、この話が姿を変えて「コインロッカーの赤ちゃん」「今度は落とさないでね」「お前だ!」などの怪談に姿を変えていきました。「六部殺し」の強いところは、やはり強力なサゲです。「お前が殺したんだ!」という幕切れが後を引く、怪談の型となっています。


 さて、「冷凍マグロ」と「まるはっちん」、そして「六部殺し」をエッセンスに加えて話を作りましょう。「まるはっちん」をベースにすると、冷凍マグロになるのは知的障害を持つ息子になります。そこでクラスメイトが息子を虐めて冷凍室に閉じ込めるという筋が思い浮かびますが、ぶっちゃけ怖くないですね。


 これは持論になりますが、「いじめ」ってホラー文脈で単体で登場しても全然怖くないんです。何故ならそれは日常的であり、強い者が弱い者を虐めていても描写で説得力を持たせなければ「よくある話ね」で終わってしまうからです。そしていじめられっ子が復讐するなんて筋はありふれているので、やはり上手くやらなければ「よかったね」で終わってしまいます。つまり、クラスメイトがふざけて閉じ込めるという筋は平凡ということになります。


 ここで発想を逆転させて「いじめるのは息子側」「冷凍室に閉じこもったのは息子の過失」「主人公サイドは悪くないけど原因はある」くらいの案配で全体の筋を作りました。個人的に「誰かわかりやすい悪人がいる」という話より「誰も大して悪くないけどちょっとずつ原因があって、それで大きな過失を作ってしまう」みたいな話のほうが後まで残る気がするのでそういう話が好きです。


 そして仕上げに「六部殺し」です。息子が死んだのは、完全に主人公たちのせいではありませんでした。それでも原因があると言えばある。死んだ息子が「お前が殺したんだ!」って祟って出ると怖いですね!


 でも、ここで作者の悪い癖が出ます。「幽霊ってどうやって祟るんだろう?」と考えてしまうと幽霊のメカニズムとかまで考えてしまいます。これではあきまへん。殺人は生きている人間だけが行える特権です。生きている人間に殺してもらいまひょ。


 ここで「まるはっちん」の原作に戻ってみると、母親が大きな役割を持っていることが明らかになります。じゃあ最後に怖いお母ちゃんに登場してもらって、そんでただ登場するだけじゃ面白くないから子供の口を介して登場してもらって……など調整があり、最後の台詞が決まりました。あらすじはこんな感じです。


1 知的障害のある上級生から主人公たちはいじめられていた。

2 主人公たちは港に消えていく上級生を置いて帰る。

3 上級生が行方不明になり、冷凍マグロで発見される。

4 罪悪感を覚える主人公。

5 大人になり子供を持つ友人と再会。

6 友人の子供が行方不明になる。

7 子供に「りょうちゃんがくる」と言わせる。


 あえて「六部殺し」とはズラして、子供に犯人を語らせるオチを使うことでひえっとさせる寸法です。当初は登場人物をイニシャルにしようと思いましたが、やっぱり最後で名前を出したいので急遽それっぽい名前を用意しました。あとはごみょごみょ書くだけ……。


 実際に書く際に気をつけたことは「決して誰も悪人にしない」というところです。主人公たちは良太を見捨てましたが、彼らにも立派な言い分があります。そして「うちの子に限って」の良太母ですが、おそらく彼女はシングルマザーです。一人で良太の面倒を見てきたと思うと、そう信じないとやってられなかったのだと思います。ただ、誰もまともに良太と向き合わなかったことが悲劇の元であったのですが……。


 ちなみに細かいところですが、秋刀魚の干物が特産ということでこの町は太平洋沿岸部です。つまり東日本大震災で津波被害にあってるはずです。そういうわけで「復興センター」を入れました。今では能登半島地震などでも「食べて応援!」をやっているのでそんな感じです。


 そんなこんなをつらつら書いているうちに眠くなってきて、何とか誤字脱字レベルの自主推敲はできましたが、キャッチコピーが思い浮かびません。とりあえず一番注目して欲しい人物について書くか、ということで「クソ女」になりました。もちろんこんなことを考える主人公も大概クソです。でもまあ、子供なので……という感じです。子供の無邪気は怖いですね。


 そう言えば全く関係ないんですけど、「まるはっちん」の原文をチェックしようと思って検索したら「秋犬さんがアカウント登録した瞬間に宣伝スパムコメントがやってきた某小説サイト」の作品がヒットしまして、なんか洒落怖あたりをコピペしてるっぽかったです。それっていいの? こわいですぅ。


 さて、長くなりましたが「魚ホラー」の話は一度終わります。今続々とモキュメンタリーの参考図書を集めているので、いつか「魚DMモキュ」が出来るのを楽しみにしていてください。今日はおしまいです。

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