第三話:危機脱出、だが?
「武御雷神の矛、エネルギー充填完了!!」
「目標、ルーン紋章!!」
「エネルギー充填120%! 目標座標をロック!!」
艦橋には極限の緊張感が走っていた。
メインモニターに映るのは、ビスマルクの艦体に刻まれた"紋章"……それがまるで"目"のように赤く脈打っている。
「発射!!」
ゴォォォォォン!!
青白い閃光が武御雷神の矛から放たれた。
武御雷神の矛の光の柱が海中を突き破り、一直線に紋章へと向かう。
ドォォォォォォン!!!!
命中。
「直撃!! 紋章にヒビが入りました!!」
ズシィィィィィィン……!!
重力波が一瞬、揺らいだ。
「重力波の出力、低下しています!!」
「もう一撃だ!! 次を撃て!!」
「艦長、武御雷神の矛の短時間連続発射は後、一回だけです!」
「構わん!! 武御雷神の矛、再充填中!! 5秒!!」
「間に合うか……!?」
その時……
紋章が再び赤く輝いた。
「くそっ!! 回復している!!」
「まだだ……!!」
「充填完了!!」
「発射!!」
ドゴォォォォォン!!!
二発目の武御雷神の矛が放たれる。
砲撃は正確に紋章の中心へと突き刺さった。
ズガァァァァァァン!!
赤い光が砕け散った。
「重力波、消失!!」
「艦体への圧力、急速に減少!!」
「脱出できます!!」
「よし! 一度、ビスマルクから離れる」
障害が無くなったお陰で核融合炉も正常に轟音を響かせ、伊400はビスマルクから距離を取る。
だが、その時……信じられないことが起きる。
「艦長! ビスマルク艦体に"開口部"を確認!!」
メインモニターに、紋章が破壊されたことで現れた"ハッチ"が映し出されていた。
「……あれは?」
橋本が驚きの声を上げる。
「まるで、こっちにこい! とでも言っているようだな……」
日下の視線が鋭くなり、数十秒間の思案が終わったとき、口を開く。
「特別探査チーム “高天原の天隠(あまがくれ)”を招集する! 柳島大佐をここへ!」
「艦長、自殺行為です! 一応、耐圧水密潜水服がありますが、敵の罠かもしれません!!」
「だが、真実を突き止めなければ帰れん!」
数分後、司令塔に6人の男が入ってくる。
「柳島大佐到着!!」
日下と柳島はお互いに敬礼しあう。
艦内に特殊部隊の隊員たちが集まっていた。
黒い特殊水圧耐圧スーツに、最新の兵器とスキャナーを装備した6名の精鋭。
柳島大佐他5名は元々、別の並行世界日本からやってきた元、習志野駐屯地に居を構える日本最強部隊“第一空挺部隊”の男たちである。
「探査チーム、準備完了!!」
日下は、隊長の柳島に目を向ける。
「柳島さん、状況は把握していますか?」
「ああ、敵がいるかどうかはわからんが、長居はしたくないね? 迅速に行く」
「艦内で異常があれば即時撤収してください、命を優先に」
「了解!」
その時、吉田技術長が司令塔にやってくる。
「まあ、こんなこともあろうかと思ってこれを持っていてくれ」
吉田が渡したものはスイッチボタンがついた謎の金属でできたマッチ箱の大きさの箱であった。
「これは……?」
「今まで巡った無数の並行世界から手に入れたオーパーツを集めて作った転送装置だ。人間程度なら一瞬で設定した座標に瞬間移動できるがたった一回きりだがね」
「……何も言えませんね、凄いの一言です」
日下は隊員一人一人に視線を送った。
「……頼んだぞ」
柳島は軽く敬礼し、部下を率いて出撃準備に入った。
「探査チーム、出発!!」
ゴォォォ……
開口部に向かって、隊員たちは伊400ハッチ口から深海の海底に出る。
深海の闇の中、6つのライトがビスマルクの"内部"へと消えていった。
「艦長、大丈夫でしょうか?」
橋本の問いに、日下首を縦に振って静かに答えた。
「必ず戻る! 彼らは"第一狂っている師団“の中でも最強"のチームだ」
未知の艦内に、探査潜入作戦が始まった。
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