第8話 スタートした砦での生活

温かい・・・・もう起きなきゃいけないのに、もう少しだけここにいたい。

温かくて、柔らかくて・・うん??

優しい匂い??なんか、汗臭い〜!

全然優しくない匂い・・・。

でも、まだ目覚めたくない・・

目覚めるのが億劫だ。

顔に触れていた柔らかいもの・・・に顔を押し付けてみた・・・。

柔らかくない!!硬すぎる!!  

夢現(ゆめうつつ)で腹を立てていると頭上から何か聞こえてきた。

「可愛いいなあ。ビー、見てみろ。サクラが俺にくっついてくるぞ!子猫みたいだろ!ああ、本当に可愛いよな。16歳はないだろう。10歳・・いや大きく見積もっても12歳くらいだろう!神石もたまには間違うってこともあるんじゃないか?!」

「レイ、不謹慎ですよ!」

私の背後でエイビーの声がする。  

エッ!!と思って起き上がると、レイが隣で後ろにエイビーが横になっていた。

おかしい・・・部屋にはベッドが三つあるのに、なんでレイが私と一緒のベッドにいるの?(エイビーはいいの・・・どちらかというと大歓迎!)

寝起きで目覚めきっていないせいで、混乱していてエイビー贔屓なことを考えてしまった。  

サッと立ち上がったレイが、とてもいい笑顔で私を抱き上げると、頬擦りしながら抱き締めてくる。そして、レイの髭がチクチクして地味に痛い。

「放して!レイはチクチクするからイヤ!なんで、レイが私と一緒に寝ているの?エイビーと一緒だったのに!!」

混乱して、レイに怒った口調で言ってしまう。

レイは素直に私を放し、自身のベッドに座り悲しそうに私をチラチラみてくる。

まるで、大型犬が叱られた時のようにシュンとしている。

なんだか、私がレイをいじめているような感じになっている・・・。

レイが私のベッドで一緒に寝ていたのが悪いのにー!

「サクラ、そのへんにしておきなさい。レイは私が怒っておくから!」

エイビーが私の頭を撫でて諭す。

そんなエイビーにレイは

「サクラは俺の可愛い小さな娘だぞ!一緒のベッドで何が悪い!それに、成人まであと2年しかないぞ!」

そんなことを言いながら、一緒のベッドで寝るべきだ!と主張する。

神石表示の身体数字は16・・・もうとっくに成人しています・・・

このことをレイに言っても聞いてくれないし・・・まあ、レイに限らず誰も聞いてくれないけど〜!!

まあ、大体いつもの光景だ。


「レイ、サクラと私は支度をしてから食堂に向かうから先に行って」

エイビーに言われて、レイはやっと私をお姫様膝抱っこから解放してくれた。解放しながら、「サクラ、先に行って準備しとくからな!」そう言いながら頭のつむじ辺りにチュッとキスをして出て行った。ヤレヤレである・・・っていうか、チュッて・・もう何もいうまい・・私は、大人なのだ!大丈夫!!頑張れ私のスルースキル!!

それよりも私は、今すごく興奮している。

だって・・エイビーが『食堂に行く』って言ったから・・・。

やっとだ〜!!

部屋の外に出られる〜。

嬉しすぎる〜!! 

私、朝宮咲良がエイビーとレイの保護下のもとサクラとしてこの砦での生活をスタートしてから1週間が過ぎようとしている・・・だが、今の今まで部屋の外に出たことがなかったのだ!!

エイビーとレイが過保護すぎて!!

私が自分自身で出来た・・いや・・させてもらえた事は、食事とトイレと入浴時に体を洗うことだけ!!・・入浴はエイビーと一緒もしくはアリサさんかマリーンさんが手伝ってくれていた。

私は1人で出来るって何度も伝えたよ。

エイビーにもレイにもアリサさんにもマリーンさんにも・・・でも、皆一様に「大丈夫。分かってます。大人ですからね」と言ってくれるのに、1人でさせてくれない〜〜〜〜〜!レイに至っては、私の後ろにいつもついてくる・・世にいわれている『金魚のフン』状態でした。

すごく大変でした・・・だってトイレも入浴もついてくるんだよ〜・・・最悪でした。そして、レイにはトイレ・入浴・着替えはダメなことをキチンと断り、了承をいただきました・・・・レイに断りと了承をいただいてくれたのはエイビーでしたが・・・・という感じで今日まできたのです。

でも、『食堂に行く』ってことは部屋の外に出ること!!イコール、レベルアップの自立した生活ってことだよね〜。エヘヘへ・・・。

そんなふうに考えていたのが顔に出てしまっていたのか、アリサさんとマリーンさんに「ご機嫌ですね〜。着替えちゃいましょうね」と着替えを手伝ってもらった・・・・。

・・・・ああもう。

私も随分慣らされたものだと思う・・・今日この頃。

まだ、たった1週間しか経ってないのに・・・・。

そんなこんなで、エイビーと一緒に朝の食堂に行ってきます。

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