34. 未発見
「この白脈の調査申請をしに来たんですけど.....」
テオが窓口で話をしていると、奥でパラヤが上司らしき人の方へ歩いていくのが見えた。
その後、しばらくしてから出てきたパラヤの後について採掘区に向かう。
バレてはいけないので無言で歩いているが、その無言の空間がなぜだかとてもおかしかった。
秘密の共有とはいいものだと思う。
「とりあえず、まずは俺の情報から話そう。」
ここらへんでいいか、と座るや否や、テオが話し始める。
「第四層がこの第八採掘区で発見されたのは、今から十年前だ。そして発見したのはマニス。ちょうど、シャルが消えた後に発表されている。そんな簡単に第四層は見つからないから、シャルが見つけたと言っていた第四層と同じものと見て間違いないだろう。」
僕もまったく同じ意見だ。
第四層はこの十年で二つしか見つかっていないことを考えると、テオの思考は至極自然だと思う。
「そこで問題になるのは、なぜマニスが発表しているかだ。シャルの調査団と共同研究していたなら、ハットの名前が載ってもいいはずだろ?もしかしたら、手柄を独り占めしたいと思ったのかもしれないが、一番可能性が高いのは......」
テオが僕とパラヤの顔を見まわす。
パラヤが首をかしげながら口を開く。
「マニスが奪った、ということ?」
「その通り。当時の研究者仲間のサントによると、マニスとは仲が良くなかったそうだし、そう考えるのが無難だろう。つまり、どうしても世紀の大発見をしたかったマニスは、シャルを殺して手柄を横取りしたってのが、俺の仮説だ。」
たしかに理屈は通っているが、なんとも衝撃的な話だ。
「マニスを殺しに行こう。」
少しの間を置いて、パラヤが低い声でつぶやく。
「俺もそうしたいが、残念ながらそうはいかん。なぜなら、マニスはもう死んでるからな。」
え、という顔でパラヤが僕を見る。
「数年前に病死してるんだそうです。」
「そういうことだ。生きてれば、かなり真実に近づけたんだがな。」
パラヤはやり場のない怒りをこらえるように、拳を強く握りこんでいた。
「それじゃ、今度は私の番だ。過去の書類を見てきたが、サントの言うことは間違っていないと思う。当時の調査団にいた作業員は全員ここを離れてしまっているから、当時の話を直接は聞けないけどね。」
「マニスの作業員が今もいたら、当時の話を聞けたのにな。そうはうまくいかないか。」
「採掘区を出た人間に対しては足取りを追えないから、諦めるしかないね。」
大きなため息を皆で吐きあった後、本題に入るか、とテオが話始めた。
「問題のシャルがどこに消えたか、だが、正直手掛かりがない。マニスが発見した白脈の中で遭難しそうなものは一つもないんだ。」
「白脈の中じゃない可能性もあるんじゃない?森の中とか。」
「いや、森は普段の生活でまったく行かないから不自然だろ。そんな行動してたらすぐに見つかってたはずだ。一人ずつってのも考えたが、リスクが二倍になるだけだからな。二人が一緒にいる白脈の中で、何かのトラブルに巻き込むのが一番自然だし、もし失敗しても疑われにくい。巨骸の中では何が起きてもおかしくないからな。」
その通りだと思う。
ただ、それがどこなのか。
「何か違和感があれば、シャルは気が付いたと思うよ。採掘していると、第六感みたいなものが鋭くなってね。何となくわかるんだよ、変なことがあると。」
「ということは、それが及ばないほどの何かしらの都合のいい場所があったと考えないといけないな。そんな場所があれば、普通に調査対象になりそうだが......」
その通りだ。
そんな都合のいい場所があれば、必ず報告されているはずなのだ。
マニスだけが知っている、そんな都合のいい場所があったとして、自分の手柄として報告せずにいられるものなのか。
そこまで考えて、僕はハッとした。
だからか。
兄さんを殺した場所だからか。
発表して調べられたらまずいと考えたとするなら、つじつまが合う。
「発表できなかったんだ。もし発表して調査が入ると、自分の悪行がばれてしまうから。」
「たしかに、そうかもな。ま、そもそもが仮説だけどな。」
僕の中で、パズルがきれいに組み上がっていく感覚があった。
それからしばらくして、テオの元にサントから手紙が届いた。
内容を要約すると、マニスの弟子たちに話を聞いていたところ、自分の死後に発表するように、と言われていた未発表の場所があるとのことだった。
同封されていた調査報告書によると、そこには大きな穴が空いているとのことだ。
僕の中で、最後の一ピースがカチッとはまるのを感じた。
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