第34話

「それじゃあ、舐めて綺麗にしてくれるかしら?」


 だから、気持ち悪い仕草で濡れた花を開いて見せてきても、うっとりとした眼差しを送り返してやる。

 愛して、愛されて、いつか復讐してやるために。


「喜んで」


 僕は両親を殺されたことは本当に恨んでいない。

 あの小さな村にだって思い入れもないから、憎んでもいない。


 でも、優しい彼女まで燃やしたことは絶対に許さない。


 生涯もっとも大切に想い、そして今も愛している僕の片割れを。

 僕が魔女の炎から逃れられたのは、彼女が咄嗟に僕を井戸へ落としてくれたからなのだ。


 あの日、井戸から這い出た僕の前にあった真っ白な骸は。


 ────僕の双子の姉だ。

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アザミの花を望む。〜魔女の下僕は静かに復讐の火を灯す〜 海荻あなご @miigoo3582

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