第7話

色は血のような赤も好きだが、一番好きなのは黒だ。


 どんな色もすべて塗り替える漆黒がやはり良い。

 他の何色にも染まりがたく、他の色を飲み込んでしまう黒を見ていると安心する。


 それはやはり、魔女を象徴する色だからというのもあるかもしれない。 


 やがて右手の爪すべてに漆黒が乗せられると、私はすぐにその出来栄えを確認する。

 染料のよれもムラもなく、つるりと光沢のある仕上がり。私の細く長い爪は美しい漆黒で彩られていた。

 男の手でマニキュアの小筆は持ちにくいだろうに、この下僕は本当に上手く仕上げるものだ。


「やっぱり、アンタに塗ってもらうのが一番ね」

「光栄です」


 私が満足気に告げると、下僕は控えめに微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る