第22話
「なんで笑うの」
「だ、だって……雰囲気はかっこいいのに、言っていることは、かっこ悪いんだもの……ふふっ!」
おかげで涙も引っ込んでしまった。
私はシュティルに睨まれながら、くすくすと肩を震わせる。
「でも、これでわかったでしょ。俺はイヴに相応しいって。イヴがひっそりと暮らさなきゃいけないっていうなら、俺みたいな男こそお誂え向きだと思うけど?」
「……そう、みたいね」
これは素直に認めざるを得ない。年下相手にしてやられたような感じがして、ちょっぴり悔しい気もするが。
でも、自信満々に私の障害を「そんなこと」って言ってのけてくれるなら、これはちゃんと伝えてあげてもいいかもしれない。
「あなたが好きよ、シュティル」
告げると、シュティルがはっと息を飲んだ。
魚のように口をぱくぱくとさせている。嬉しいのだろうか、それが言葉にならないみたいだ。
してやったり、そんな風に思った私はちょっとした優越感に浸る。
でもそれも一瞬のこと。反撃はすぐに返ってきた。
「無理、ほんと無理」
「え……──っ」
「イヴ、本当に好き。好き好き、大好き。愛してる──っ」
するりと下着を取り払われ、かちゃかちゃと金属が擦れる音が聞こえてきたかと思えば、その直後に甘い衝撃が襲ってきた。
この間、ほんの数秒。
運動嫌いのくせになんて素早さだろう。
狭い箱の中でぴったりとくっついたまま、何度も何度も揺さぶられる。
視界の端でちかちかと星が飛ぶ。
好き、好き、大好き──と耳元で繰り返される。
もうそれしか言えないのか、と思うくらいに何度も何度も。
だけど、何回言われても飽きることはない。
愛を囁かれて嬉しくないわけがないのだ。私は歓喜に震えながらシュティルにぎゅっとしがみついた。
──パタン、と不意にすぐ近くでドアが開くような音がした。
シュティルの真後ろの見えない壁に貼り付いていたおまじないの羊皮紙が、ちりっと焼ける音を立てながら灰になる。
すると、身体の両脇に感じていた壁の存在が空気に溶け込むかのようにすっと喪失した。
解除条件を達したことで、おまじないが解けたのだ。
「はぁ……イヴ……」
シュティルが熱く私を見つめてくる。
その情熱に感化されて、私も同じくらい熱くシュティルを見返した。
もう何の隔たりもないというのなら、我慢することはない。
「一ヶ月も、イヴに会えなくてしんどかった……」
「……私も、寂しかった」
素直になって呟くと、アメジストの瞳に情熱を込めたままシュティルの顔が近づいてきた。
迫るキスの予感に私はそっと目を閉じる。
そして──
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